2014年の雨傘運動を記録したドキュメンタリー映画『乱世備忘』を観て以来、香港の民主化運動には興味を引かれています。その後、2019年にはそれを上回る激しい闘いが起きたことを知り、その経過を注視していたのですが、政府・警察によって弾圧されたことが報じられました。香港は今、どうなっているのでしょう。そしてこれからどうなってしまうのでしょう。 その2019年の闘いを記録した映画『香港、裏切られた約束』が公開されていることを知りました。これは是が非でも観てみたい。山ノ神とともに「アップリンク吉祥寺」に観にいくことにしました。せっかくなので吉祥寺で昼食を食べようと、インターネットで調べていたら「アトレ吉祥寺」で天ぷらの「金子半之助」が開店したことがわかりました。山ノ神と合議の結果、こちらに決定。ところが好事魔多し、行ってみると弁当のみの販売でした。無念、山ノ神の助言で東急百貨店に行ってみると、「まつや」という蕎麦屋がありました。もしや、池波正太郎が足繁くかよったという老舗、神田「まつや」の支店? ビンゴ! 何という僥倖か、己のセレンディピティを言祝ぎたくなりました。美味しいお蕎麦をいただき、パルコ内にあるアップリンク吉祥寺へ。この香港情勢に関心のある方が多いのでしょう、ほぼ満席でした。 公式サイトから転記します。 イントロダクション 鑑賞後に購入したプログラムに掲載されていた香港政治研究者のC.C.Suen氏の「返還後の香港で、何か起きていたのか」が、香港の現代史について簡にして要を得た解説ですのでぜひ紹介します。 1984年、英国は植民地香港を1997年に中国に返還することに合意した。同時に中国政府は、返還から50年間は香港の資本主義経済体制を維持し、香港人に高度の自治を与える「一国二制度」を、香港で実施するとした。 民主主義に覚醒しそれを実現しようとする香港の市民たちと、それを抑圧・弾圧する香港政府とその背後にいる中国共産党の対立・闘争ですね。 本作は、2019年に起きた、逃亡犯条例の改正撤回とキャリー・ラム(林鄭月娥)行政長官の辞任を求める学生や市民の平和的なデモ・集会と、それを激しく鎮圧する香港警察の闘いを記録したドキュメンタリー映画です。何といっても、その闘いの臨場感に圧倒されました。このデモの一員として参加したトウィンクル・ンアン監督は、その実相を至近からカメラにおさめていきます。学生や市民たちの動き、生の声、叫び、怒りがびしびしと伝わってきました。それに加えてさまざまなプラカードやビラをも記録することによって、彼ら/彼女らが何を求めて闘ったのかも。それは自由、民主主義、人間としての尊厳。そしてその思いと闘いを支えたものは、「香港人」としてのアイデンティティであることも知りました。民族や出身地に関係なく、香港というコミュニティに暮らす一員として獲得したアイデンティティ。より良い香港を作るために「香港人」として連帯して闘う様子がいろいろな場面であらわれていました。元スコットランド自治政府首相のニコラ・スタージョンが言った「どこの出身だろうと、どんな宗教を信じていようと、勇気を出して力を合わせればより良い国を作ることができる。それが私の信じるナショナリズムです」という言葉、いわゆる市民的ナショナリズくを思い浮かべました。 そして激しい闘いのなかでも、そうした「香港人」としてのアイデンティティが躍動して互いを支え合う場面も印象的でした。怪我をしたデモ参加者を治療する、抱きかかえて避難する、放水や催涙弾から互いを守り合う。あるいは逮捕されそうな仲間を救出するために現場に駆けつける。デモに参加していない市民たちも、参加者を激励し勇気づけ衣服や水・食料を提供します。 それに対して、デモを壊滅させ、参加者を逮捕しようとする香港警察の暴力も、リアルに記録しています。殴打、放水、催涙弾、ゴム弾、その圧倒的な暴力行使には息を呑みみました。「やめて! 同じ香港人でしょ」と警官隊・機動隊に向けて絶叫する女性の姿が心に残りますが、その叫びもかき消されれいきます。 そしてこの闘いは多くの逮捕者、行方不明者、亡命者とともに敗れます。映画はここで終わりますが、香港人たちが自由、民主主義、人間としての尊厳を求めて勇敢に闘った姿は忘れません。香港政府とその背後にいる中国共産党による弾圧によって、現在の香港における民主化が逼塞していることは、断片的な報道からわかっています。ただ、映画『乱世備忘』に出てきた、金鐘(アドミラルティ)のバリケードに記されていた「It's just the beginning/まだこれからだ」というメッセージは生きていると信じます。そして香港人の闘いは、この映画によって半永久的に記録・記憶として残ることでしょう。 香港の民主化のために私にできることはほとんどありません。せめて香港人たちの動きと思いを注視することにします。そして彼ら/彼女らが追い求めた自由、民主主義、人間としての尊厳を、この日本において真に実現できるよう努力したいと思います。香港と違い、私たちには、それらを抑圧する政権を選挙によって変えることができる力と権利があるのですから。 追記です。雨傘運動が始まってからほぼ10年になるのですね。『東京新聞』(24.9.23)の社説に取り上げられていました。 <社説> 香港「雨傘運動」10年 諦めるわけにはいかない
by sabasaba13
| 2024-09-24 07:22
| 映画
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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