ブランギエ+東フィル 2

 「展覧会の絵」を聴いた三日後、ふたたびリオネル・ブランギエ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴きに初台のオペラシティに、山ノ神とともに行ってきました。第一夜は「スンガリー」でウクライナ・ロシア料理をいただきましたが、第二夜は新宿三丁目駅近くの「船橋屋」で天ぷらを食しました。性懲りもなくしじみの赤だし味噌汁をまた二回もおかわり。だって美味しいのだもの。
 「新宿三丁目駅」から都営地下鉄新宿線に乗って京王新線「初台駅」で下車。オペラシティのサンクンガーデンには、大きなクリスマスツリーのイルミネーションが点灯していました。
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 コンサートホールのロビーに入ると、こちらには假屋崎省吾制作のクリスマスツリー。たくさんの人が、富の私有や貧富の差を否定するというリベラルな思想を唱えた宗教者を偲ぶ縁にしてくれればいいのですが。
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ブランギエ+東フィル 2_c0051620_12551965.jpg さて本日の演奏会は、ピアノにベフゾド・アブドゥライモフを迎えての演奏会です。演奏される曲目は…

 ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
 A.ショール:ピアノ協奏曲第1番
 ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
 ラヴェル:ダフニスとクロエ第2組曲

 プログラムの解説を再掲します。

 新星ブランギエ、巨匠プレトニョフ、俊英アブドゥライモフが揃う二夜の演奏会のテーマは、フランスとロシアの邂逅だ。
 ラヴェル編曲によるムソルグスキーの《展覧会の絵》は、その象徴たる作品といえる。ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」とラヴェルの《ダフニスとクロエ》第2組曲は、フランス近代を代表する管弦楽作品。そこにラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》が加わる。
 2つのプログラムで作品が演奏される作曲家アレクセイ・ショールは、ウクライナ生まれでアメリカに移住した。数学者、ヘッジファンドの辣腕社員を経て、40代で突然音楽の世界へ飛び込んだという異色の経歴の持ち主だ。プレトニョフをはじめ、有名演奏家との親交も深く、彼らとのコラボレーションでも多くの曲を書いた。シンプルながら、ロマンティシズムあふれる作風が特徴だ。
 ショールとプレトニョフの合作である、ピアノと管弦楽のための組曲第2番では、プレトニョフの極上のピアニズムが存分に味わえよう。そして、ショールのピアノ協奏曲第1番では、アブドゥライモフが起伏に富んだドラマティックなピアノを聴かせてくれるはずだ。
 東フィルとは初共演となるブランギエは、洗練された色彩感覚の(ママ)持つ指揮者。28歳のときチューリッヒ・ハレ管の首席指揮者に就き、ラヴェルの管弦楽全集をドイツ・グラモフォンからリリースして大きな話題を呼んだ。華麗な色彩に満ちたロシアとフランス、そしてショールの音楽を堪能したい。

 まずドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。マラルメの詩にもとづいて書かれた幻想的かつ官能的な名曲。私の大好きな曲です。木管楽器に少々不安定なところがありましたが、現実と夢の狭間をたゆたうような心地よさを堪能できました。
 二曲目はA.ショールの「ピアノ協奏曲第1番」、ピアノはウズベキスタン出身のベフゾド・アブドゥライモフです。前回の「ピアノと管弦楽のための組曲第2番」と同様に平易で親しみやすい曲で、クオリティの高いNHK大河ドラマのテーマ曲といった感じ。安心して音楽に身を任すことができました。ピアノも力強い演奏でしたが、第一楽章が終わった時に拍手が起きたのには驚きました。それほどの出来とは思えなかったのですが。

 ここで20分の休憩。ほんとうにどうでもいいことですが、オペラシティ二階の奥には喫煙室があります。紫煙をくゆらしてフェルマータ。
 後半はラフマニノフ作曲、ピアノと管弦楽による「パガニーニの主題による狂詩曲」から始まります。これは文句なしの名演でした。どうやって編曲したのか想像もつかないほど個性も表情も豊かな各曲を、指揮者とピアニストとオーケストラが一丸となって熱演しました。一分の隙もない鉄壁のアンサンブル、名刀村正のような切れ味、強烈なダイナミズムの変化と差、感情にあふれた表現、そしてピアノの超絶技巧。おじさん(おじいさん)は参りました。中でも有名な第18曲の底無しのロマンティシズムには、身も心もとろとろにとろけんばかり。至福のひと時でした。ひそかに第18曲のアンコールを期待したのですが、それは叶いませんでした。それはそうでしょう、あれだけの演奏をしたのですから矢吹丈のように燃え尽きたことと思います。
 最後に演奏されたラヴェルの「ダフニスとクロエ第2組曲」も名演でした。ロシア・バレエ団を主宰するセルゲイ・ディアギレフの依頼によりラヴェルが作ったバレエ音楽を、彼自身が組曲としてまとめたものです。3世紀ごろのギリシャの作家ロンゴスが書いた田園ロマンスが原作で、山羊飼いの少年ダフニスと羊飼いの少女クロエの物語です。
 寄せては返す波のような官能的な音の塊に身も心もゆだねて忘我の境地。スケールの大きなブランギエの指揮、それに応えた東フィルの演奏も見事でした。

 ブランギエ、アブドゥライモフ、そして東フィル。この三者の邂逅にまた出会いたいものです。

by sabasaba13 | 2025-03-22 07:37 | 音楽 | Comments(0)
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