気候危機より目先の利益

 昨日、与那国島・沖縄本島から無事に戻ってきましたが、東京の涼しさに驚きました。しかし当地で見ていたニュースによると。それまではたいへん暑かったようですね。沖縄以上の気温であることもしばしばでした。気象情報によると、今日以降、また暑くなるようです。やれやれ。
 
 お隣のたまちゃんも、この地を焦がし血が沸騰するような猛暑・酷暑・溽暑・炎暑には去年以上にまいっているようです。(7月2日撮影)
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 さて、それにしても呆れてしまう、そして危惧するのは、テレビのニュースで各地における猛暑の様子とその対策にしかふれていないことです。この猛暑の本質的な要因について分析や考察をしようともしない。ワールド・ニュースを見ても、この異常気象が世界的な問題であることがわかるのに、やれエアコンをつけろ、やれ外へ出るな、やれ水を飲め、と対処的な話題しか取り上げません。
 この猛暑の要因が温室効果ガスの排出による地球温暖化であることはほぼ分かっているのに、なぜメディアはそこを避けるのか。何度でも何度でも書きますが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の提言によると、温暖化を1・5℃未満に食いとめるためには2030年までに世界の炭素排出量を半分に削減せねばならず、また2050年までには炭素排出量ゼロを達成する必要があります。それなのに日本政府の動きはまるで蛞蝓のように遅く、石破茂政権は無策でやる気もなさそうです。あと5年ですよ、わかっているのかなあ…

 少し古いのですが、『しんぶん赤旗』(24.10.25)の記事を紹介します。

気候危機 最大の被害国・日本 低すぎる政府目標 鈍感なメディア この6年最後の正念場

 CO2排出削減の2030年目標まであと6年もありません。「地球沸騰化」の夏に危機感は高まる一方。英国ストラスクライド大学の安田陽さん(電力工学)に、日本の問題点を聞きました。(手島陽子)

-英国が石炭火力をゼロにしましたね。
 そうです。9月末に石炭火力発電を全部停止しました。英国は石炭火力が主流でしたが、30年かけて再生可能エネルギーの比率を上げました。
 一方、日本は、この30年間に石炭導入率が上昇している時期さえあり、再エネ導入率はまだ25%程度です。英国にいて感じるのは、日本の気候危機への認識の甘さと、報道のゆがみです。日本は、再エネ導入の目標が著しく低いのです。
 政策立案の目標設定には「フォワードキャスティング」と「バックキャスティング」という二つの考え方があります。国連や多くの国の脱炭素の目標はバックキャスティングで、あえて高い目標を掲げます。あるべき未来像から逆算して目標を立てるわけです。

-大谷選手の少年時代の目標みたいですね。
 いい例えです(笑い)。逆に現状の技術や制度延長で達成できる目標にすることを、フォワードキャスティングといいます。メディアは目標の低さは伝えず"目標達成している"と報道しますが、日本はそこそこの目標しか掲げずやったフリをしている、超かっこ悪い国になっています。
 「日本の再エネは30年には達成できないですよね」と聞いてくる方も多いです。根拠を聞いても「みんなが言っている」という返答です。世界を見ると、再エネは爆発的に増えています。古い技術から新しい技術への切り替えは、単なる直線的な増加ではありません。

-この夏の猛暑で、気候危機が不可逆的なところに迫っているかと…。
 気候危機のティッピングポイント(不可逆的な転換点)への危機感はありますね。一方、日本のメディアは鈍感で、そういう危機感すら見せません。英国では気候危機に関する報道もよく目にしますが、日本のメディアは「猛暑」だけで終わり、あえて気候危機に触れないように見えます。
 環境NGOジャーマンウオッチの報告『世界気候リスク指数2020』は、日本は気候変動の最大の被害国としています。18年の豪雨と土砂災害、熱中症、台風など、気候変動関連の死者は計1282人、損失額は約5兆円でした。ところが、日本国民にはそうした情報がほとんど知らされていません。
 政策の立て方でも問題は顕著です。EBPM(根拠に基づく政策決定)の重要性が国際的には強調され、データや科学的根拠を重視します。日本では、誰かが誰かに忖度して、科学的な政策決定をする力が弱まっています。
 30年まであと6年もないですから、技術的に早く増設できるものこそ風力発電と太陽光発電なのです。世界が大きく進んでいる状況で、日本は目標を引き下げる雰囲気すらあります。
 昨年のCOP28では再エネ3倍化が宣言されました。技術大国を標榜する日本なら4倍、5倍は本来可能です。ところが3倍という目標にさえ、否定的です。これでは脱炭素に消極的なサウジアラビア、ロシア、北朝鮮などのグループに日本も入ると、国際的には見なされてしまいます。
 世界の再エネ比率の見通しは、10年で大きく変わりました。IEAの電源構成の見通しは、10年前は再エネが3割程度でしたが、今では50年に9割になるとしています。技術革新が進み、コストが下がって市場のルールを変えたため、再エネが急速に進んだからです。
 日本の再エネへの認識は20年以上前のものです。石炭火力発電の新増設など、世界と真逆のことをやっているのです。
 この6年間は最後の正念場。技術力がありますから、それを生かすも殺すも政策設計次第です。

-衆院選の選択は?
 気候変動と再エネを重要な論点として取り上げてほしい。科学的な根拠、国際的な論調に準拠した政策を掲げる政党、候補者に目を向けるべきです。それらを無視した候補者が落選するのが、本来の民主主義の国の選挙だと思います。

 これが日本の現状です。気候危機に対して無策・無能・無気力な自民党・公明党政権と多くのメディア。このお粗末な現状の原因は何か。思うに、気候危機対策は儲からないから手を抜こうとひらきなおる大企業・財界と、それらに茶坊主のように擦り寄る自公政権とメディアの癒着でしょう。その薄汚い癒着を支えているのが、政治献金であり、天下りであり、莫大な広告費だと考えます。
 そして忘れていけないのが、気候危機やこうした構造的な癒着に無関心な方々が多数おられることです。来たる参院選における各党の公約を概観しても、気候危機対策を最重要政策として掲げる政党はありません。

 「今だけ金だけ自分だけ」「洪水よ、わが亡き後に」「♪そのうちなんとかなるだろう♪」とぶつぶつ言いながら、エアコンの利いた部屋でアイスクリームを食べて、そのうち暑さがおさまるのを待つ。果たしてそれでいいのでしょうか。

 今年の夏は、そして来年の夏も、再来年の夏も、永劫に猛暑・酷暑・溽暑・炎暑がより苛酷となって続いていく。そして日本を含め世界に取返しのつかない甚大なダメージを与えていく。それでいいのでしょうか。

 参院選の投票率と結果に注目したいと思います。

by sabasaba13 | 2025-07-12 07:30 | 鶏肋 | Comments(0)
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