不毛な自民党総裁選

 自民党総裁選がいよいよ始まり、五人の候補者が出そろいました。ま、しばらくの間(であってほしいのですが)、政権を委ねる御仁ですので、その政策や抱負についてざっくりと眺めてみました。…絶句。…ひどい、ひどすぎる。自由民主党の劣化がここまで進んでいるのですね、呆れました。
 実は自民党の古賀誠元幹事長も絶望したようで、下記のような苦言を呈されています。『東京新聞』(25.9.22)から引用します。

古賀誠元幹事長が自民総裁選に苦言 「戦争は理屈超える 勉強して」

 古賀誠元自民党幹事長(85)は20日、日教組が東京都内で開いた会合に出席し、戦後80年をテーマに講演した。戦争を経験していない国会議員がほとんどだとして「頭のいい若い人たちは物事を理屈で判断するが、極めて危険だ。戦争は理屈を超えたものだ。歴史認識と経過を勉強し、取り組んでほしい」と平和の尊さを訴えた。
 日教組は連合傘下の労働組合で立憲民主党を支持しており、自民の幹事長経験者が講演するのは極めて異例。日教組出身で民主党幹事長を務めた輿石東元参院副議長(89)と親交があり、実現した。
 古賀氏は「戦争に勝ち負けはない。憎しみと、悲しい、苦しい人たちを残すだけだ」と指摘。「政治がしっかりして、国民の信頼を確かなものにすることが大事だ。与党も野党も関係ない」と強調した。
 講演後、記者団に自民総裁選について問われ「一番大事なものを誰も言ってない。平和はどうするのか」と苦言を呈した。

 特に最後の一言にはおおいに共感し、古賀氏とともに叫びたいと思います。

 平和はどうするのか

 政治家にとって最も大事な使命は、戦争を防ぐこと、平和を守ることであるべきです。しかし、どうやってそれを実現するかについて、管見の限り、誰一人触れていません。莫大な軍事費(5年間で43兆円)を使って強力な軍隊を作り、その軍事力によって平和を守るのか。在日アメリカ軍の傘下に入って平和を守ってもらうのか。米軍との核共有、あるいは日本独自の核武装によって平和を守るのか。それとも、外交=話し合いと、国連やASEANとの協力によって、平和を守るのか。

 他にも喫緊かつ重要な問題は多々あるのに、総裁選候補者のみなさんは口をつぐんでおられます。気候危機及び自然災害対策はどうするのか? 少子化・高齢化社会にどう対応するのか? 核兵器廃絶はどうするのか? 核(原子力)発電の可否は? アメリカ隷属から脱却する気はあるのか? 裏金や政治献金をどうするのか、危険な化学物質PFAS対策は? ガザやウクライナをはじめとする国際的な武力紛争や人道危機にどう立ち向かうのか? さまざまな差別や排外主義といった国内的な人道危機にどう立ち向かうのか?

 こうした重要な問題や課題について、小泉進次郎氏・小林鷹之氏・高市早苗氏・林芳正氏・茂木敏充氏は、どう分析して考究し、どのような対策や政策を考えておられるのか。私が見るところ…何も考えていない/どうでもよい/洪水よ来たれ我が亡き後に、という態度のようです。言い換えれば…現状維持。とにかくひたすら現状維持。大企業を優遇して献金を貰い、アメリカの*を舐めて権力を維持するという自由民主党の基本姿勢を変える気は毛頭ないようです。
 物価高を多少抑えて、私たちの可処分所得を多少増やして、外国人への攻撃を行ない、有権者の支持を獲得してあとはとにかく現状維持。

 正直に言って、この五人のうち、絶対にこの御仁にだけは首相になってほしくないという方はおります。ただ五十歩百歩、自民党に所属している限りそれほど大きな違いありません。
 一刻も早く、この政党を第一党の座からひきずりおろし、権力から遠ざけないと、日本は(世界も)とんでもない状況になりかねないと心底から危惧しています。でも田中熙巳氏が言われたように、政府は悪くありません。悪いのは…

 追記です。『しんぶん赤旗』(25.9.24)のコラム「きょうの潮流」を紹介します。そうですよね、メディアの責任も重大です。

 秘書が運転する高級車でスーパーに乗りつけ、子ども食堂では自分の誕生日を祝ってもらう。和歌を歌い上げたと思ったら外国人への嫌悪をあおる。政権の中核で政策決定に携わりながら、今さらそれを否定する▼見え透いたパフォーマンスに、訴えるのは内輪の話ばかり。みずからの選挙総括にさえ背を向け、物価高への無策や政治とカネをめぐる問題にも無反省。これでは解党的出直しも口先だけか▼自民党の総裁選が始まりました。キャッチコピーは「#変われ自民党」だと。国民が変われと思っていることを受けとめたいといいます。しかし5候補とも、多くの国民からノーを突きつけられた政治を転換する姿勢はみえません▼2009年の総選挙で歴史的惨敗を喫し、結党以来初めて下野した自民党は各地で車座集会を開き、国民と向き合うことを強調しました。その後に生まれたのが、国政を私物化し経済を低迷させ、戦争国家への道を推し進めた安倍政権でした▼変われない自民党。それは歴史が証明しています。なぜなら、歩んできた道が示しているように、よって立つところが国民やそのくらしではなく、大企業やアメリカに寄りかかってきたから▼一政党の内部問題を国民的ニュースのように扱う、メディアの変わらない報道も問われています。いま伝えるべきは、何の役にも立たない総裁選の言動を垂れ流すことではないはず。新しい政治が求められている時。そこに切り込んでこそ、メディア本来の役割ではないでしょうか。

 もう一つ追記です。『東京新聞』(25.9.25)のコラム「筆洗」も自民党総裁選に辛口のコメントを寄せています。

 ホラー小説の名手、スティーブン・キングさんは作家を目指す人に不思議なアドバイスをしている。ひどい小説をお読みなさいという▼薄っぺらな登場人物、お粗末なプロット。凡庸な小説は「してはいけないこと」を教えてくれるので、それを自分の作品から排除すればいいという。「優れた作品より出来の悪い作品からの方が教わるものは多い」(『書くことについて』)▼キングさんが推薦する退屈な「物語」が目の前にあると書けば、皮肉がすぎるか。自民党総裁選である。ここ数日、候補者の話を聞いてみたが、どうも心躍らない▼国民批判の大波を受け、沈みかけた自民党という古い船。頼りにならない船長は退き、危機の中、自分にかじ取りを任せてという5人が現れた。なるほど、物語の第1幕は緊張感があった。5人の登場人物にもそれなりに個性がある▼だが、第2幕がいただけない。この5人の主張が似たり寄ったりでおとなしすぎる。経済成長による所得増、政権枠組みの強化、国民の声に耳を傾ける…。濃淡や温度差はあっても煎じ詰めれば言っていることが変わらない。大胆な将来構想や魅力的な「夢」を語らない▼党をまとめなければならない中、あまりとっぴなことも言えない事情は分かるとして、新味のある主張と迫力ある論戦がなければ世間は振り向くまい。退屈な総裁選ではその船は救えない。

by sabasaba13 | 2025-09-25 07:04 | 鶏肋 | Comments(0)
<< 写真展「在日クルド人と共に暮らす」 静岡編(14):磐田(19.9) >>