目〇、鼻〇に阿る

 高市首相は、なぜトランプ大統領によるベネズエラ攻撃を批判しないのでしょうか? 『東京新聞』から記事を二つ引用します。

26.1.6
〈社説〉ベネズエラ攻撃 日本政府は「黙認」するな
 高市早苗首相は5日、三重県伊勢市での年頭記者会見で、トランプ米政権によるベネズエラ攻撃を巡る評価を避けた。黙認したと受け取られてもやむを得ない。日本政府はロシアによるウクライナ侵攻を国際法違反と非難してきた。二重基準と批判されて当然だ。
 高市氏は米国によるベネズエラ攻撃とマドゥロ大統領拘束について問われ、自由、民主主義、法の支配などの基本的価値や原則を尊重する立場を強調しつつ、「ベネズエラにおける民主主義の回復と情勢の安定化に向けた外交努力を進める」と述べるにとどめた。
 日本が安全保障条約を結ぶ米国の抑止力に頼る現状では、米国を批判し、関係を悪化させることは得策でないとの判断だろう。
 だとしても、国際法違反の疑いがある米国の軍事行動を是認し、懸念や憂慮さえ表明しないなら、対米追随のそしりは免れない。
 ロシアが2022年2月にウクライナに侵攻した際、当時の岸田文雄首相は「力による一方的な現状変更の試みであり、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害する明白な国際法違反だ」と非難。中国による台湾侵攻の可能性を念頭に「アジアでも力による現状変更は許されない」と訴えた。
 米国のベネズエラ攻撃は、力による現状変更、主権侵害という点でウクライナ侵攻と同質だ。
 軍事力で国際秩序を揺さぶる主体が米国に変わった途端、日本政府が沈黙するのは、ご都合主義でしかない。同様の事態が今後起きたときに、非難できるのか。
 高市氏は記者会見で、今春に訪米し、トランプ氏と会談する意向を明らかにした。トランプ氏が4月に訪中し、中国の習近平国家主席と会談する前に、日米の結束を確認する狙いからだろうが、日米が軍事的な一体化を誇示し、中国と対峙するばかりでは、逆に東アジアの緊張を高めかねない。
 戦後日本は国際紛争解決の手段としての戦争、武力による威嚇、武力行使を放棄し、法の支配や国際協調の重要性を訴えてきた。こうした「平和国家」の歩みはアジアを中心に国際社会の信頼を得てきたが、米国の力による現状変更を容認すれば、そうした貴重な外交資産を失う恐れもある。
 米国を法の支配に引き戻すためにも、日本政府はトランプ政権によるベネズエラ攻撃とマドゥロ氏拘束を非難すべきである。

26.1.12
<本音のコラム> 究極のダブスタ 大矢英代(カリフォルニア州立大助教授)
 他国に侵攻し、その国の指導者を一方的に拉致し、自国の法廷で裁く。そんな暴挙がまかり通るなら、「法の支配」も「国際秩序」も地の底まで落ちたということだ。日本のメディアを見ても、米国の顔色をうかがってか、「国際法違反の疑い」などとお茶を濁す表現ばかりが並ぶ。日本政府は抗議声明すら出さない弱腰ぶり。仮に、中国政府が台湾の総統を拉致し、中国の国内法で裁いたらどうなるか。プーチン大統領がゼレンスキー大統領を拉致したらどうか。国際社会は黙ってはいないだろう。ダブルスタンダードが放置されれば、トランプ政権の横暴は歯止めを失うだろうし、世界は無法地帯になりかねない。
 「国際法違反」を批判されると、「ベネズエラ市民が喜んでいる」などと持ち出す人がいる。メディアでも、民主化を望む人々の声が繰り返し伝えられている。だが、民主化を支援することと、主権を踏みにじり大統領を拉致することは、まったくの別問題である。そもそもこの拉致の背景にあるのはベネズエラの石油を狙う米国の策略であり、「民主化」などというのは建前にすぎない。
 こんな暴挙が許されるのなら、どこかの国がホワイトハウスに乗り込み、トランプ大統領を拉致しても、「民主化」の名目さえ掲げれば正当化されるのか。無茶苦茶だ。

 まったくもって同感です。武力による威嚇と武力行使を平然と行ない、法の支配や国際協調を無視するアメリカのトランプ政権。これを批判もせずに暗黙のうちに認めてしまえば、時代は帝国主義へと逆戻りし、世界は無法地帯と化してしまいます。
 それなのにわけのわからない言辞を弄して、トランプ政権の蛮行を黙認する高市首相。心をこめて、賢人三人の言葉を贈ります。

 沈黙は発言だ。(ジャン=ポール・サルトル)

 地獄のなかの、最も熱く焼けただれた場所は、道徳的な危機にあたって、中立を保った人間のために用意されてある。(ダンテ・アリギエーリ)

 不正義に沈黙することは加担だ。(アハマド・アブ=アムシャ)

 追記その一。『朝日新聞』(26.1.9)によると、トランプ氏は「国際法は必要ない」と述べたそうです。以下、引用します。

 トランプ米大統領は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、石油産業を含めて「米国が運営する」と主張してきたベネズエラについて「我々が、非常にもうかるやり方で再建する」と語った。「私には国際法は必要ない」「私を止められるのは私自身の道徳だけだ。私の心だ」とも述べた。

 「自由、民主主義、法の支配などの基本的価値や原則を尊重する立場」を強調された高市首相、トランプ大統領に国際法は必要ないそうです。どう思われますか?

 追記その二。「ABEMA NEWS」(26.1.9)によると、茂木敏充外務大臣は9日の記者会見で、「米国のベネズエラ侵攻と、ロシアのウクライナ侵攻で日本政府が示した態度が矛盾しているのでは?」と問われて、こう反論したそうです。

 (略) そして「今回の事案の国際法上の評価については、国連、各国政府、専門家と国際社会で様々な議論が行われているのは事実でありますが、我が国として今回の事案について、正確かつ詳細な事実関係を十分客観的に把握することは困難であることから、法的評価を行うことは差し控えたいと考えております」としたうえで、「ご指摘のロシアにつきましては、ロシアによりますウクライナ侵略、これはロシアが一方的にウクライナに侵攻してウクライナの主権および領土の一体性を侵害し、現在もこの状況が継続している。こういう事実があるということについてはご承知の通りでありまして、これは明白な国際法違反だと、このように考えております」と説明した。

 あー苦し紛れの言い逃れにしか聞こえません。「ご主人様であるアメリカは何をしても許されます」と本音を言えばいいのに。

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by sabasaba13 | 2026-01-13 07:10 | 鶏肋 | Comments(0)
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