日本を変えるチャンス

 どうも最近のニュースが「政局」がらみのものばかりで辟易します。衆議院の解散総選挙をするのかしないのか、政党による合従連衡はどうなるか、政権の基盤は盤石となるのかならぬのか…etc. もちろん些末な問題とは言いませんが、あまりにも近視眼的ではないでしょうか。
 私は「政局」以上に「政治」について考えたいし、政党や政治家の意見を聞きたい。私たち日本で暮らす民衆は、日本をどんな国にしたいのか。そして政治家や官僚はその理想をどうやって実現するのか、あるいはジャングルと化しつつある国際社会の中で、どうやって私たちの暮らしや命を守るのか。これが政治でしょう。

 幸いなことに、元経産官僚で政治経済評論家の古賀茂明氏が、「AERA DIGITAL」(26.1.13)のコラムで、国際環境の現状分析と今後の見通しと日本の取るべき選択肢について、理路整然と述べてくれました。かなりの長文ですが、きわめて重要な内容なのであえて全文を引用します。

米国のベネズエラ攻撃は「日本を変える」チャンスとなる 高市首相を交代させて「米国の属国」から脱却する端緒とすべし 古賀茂明

 トランプ米大統領が、南米ベネズエラを攻撃し、マドゥロ大統領夫妻を拘束した。
 麻薬密輸共謀などの容疑で、米国の司法手続きの一環として実行されたことになっている。あくまでも米国の司法当局が主体となった犯罪人訴追のための行動で、軍は、それをサポートしたに過ぎないという理屈なのだが、これが国家としての軍事行動であることは否定しようがない。主権国家に対する武力攻撃であり、自衛戦争とも言えない。したがって、国際法違反であることは明白である。
 しかし、マドゥロ大統領は、独裁者でベネズエラ国民の人権を侵害し、さらに国内経済を疲弊させ、800万人と言われる難民が国外に逃がれるという事態を招いている。西側の多くの国を含めた国際社会の批判には、それなりの根拠もあるため、国際法上正しいかどうかの議論を無視して、非人道的独裁者が排除されたという今回の結果だけをとらえて、良かったという評価をする人も多いのが実情だ。
 現に、米国の世論調査では(と言っても、攻撃直後に行われた1000人という小規模な調査だが)、今回の米国の行動に肯定的な人と否定的な人はほぼ同じ割合だったと米国のテレビニュースで報じていた。
 さらに、国外にいるベネズエラ難民が、世界中で歓声を上げる姿が報道されると、その主張に正当性があるようにも感じられる。
 米国批判を強く展開すれば、仮にそれが正論だとしても、米国から手痛いしっぺ返しを受ける可能性がある。自国の利益にあまり関係がないのに、あえて火中の栗を拾う必要はないと考えるのは、多くの国に共通する事情だ。
 日本やNATO諸国など、自国の安全保障の確保のために米国に頼らざるを得ない国々は、まさにこの範疇に入る。高市早苗首相が、米国の行動自体の是非に関するコメントを避けたのはその象徴である。
 その結果、中国、ロシア、北朝鮮、イランなど、もともと米国と鋭く対立している国や、次は自国が襲われる可能性を感じているコロンビアやキューバ、さらには、同じ南米諸国の一員であり、米国に敵視されているブラジルなどを除き、激しい米国批判は行っていない。ロシアのプーチン大統領でさえ、自ら直接言及することは控えているように見える。
 日本国内では、高市首相にもっとはっきりと米国を批判しろという声もあるが、そもそも、そんなことを自民党の首相に期待する方が無理だ。日本は事実上米国の属国になっていて、それは世界中が理解している。何も言わなくても、誰もなんとも思わない。

 批判しないと、中国が台湾に武力行使する口実を与え、日本の安全保障に大きな打撃を与えると言う人もいる。しかし、そもそも、日本に台湾問題で火の粉が飛んでくるのは、日本が米国の属国として、台湾有事に関わろうとするからである。それを防ぎたいなら、台湾有事でも、米軍に日本にある基地を使わせないこと及び自衛隊は出動せず日本は中立を守ることを宣言すれば、中国に攻撃されることはない。
 もちろん、それも米国の属国である限りはできないだろう。
 さらに、高市首相が現在置かれている状況も、トランプ批判を封印せざるを得ない要因となっている。
 4月にトランプ大統領の中国訪問が予定されているが、そこで、中国から大きな経済的な見返りを得る代わりに米国が台湾から手を引くというディールが成立する可能性がある。中国と激しく対立する一方、突出して台湾寄りの姿勢を示している高市首相としては、それだけはどうしても避けたい。そこで、トランプ訪中前に自ら訪米して、トランプ大統領に直接日本の立場を説明し、「日本を見捨てないで!」と懇願する計画だ。
 そんな時に、トランプ大統領を怒らせれば、そもそも会談自体を拒絶されるという最悪の事態も予想される。したがって、ベネズエラ問題でトランプ氏のご機嫌を損なうことは絶対にできない。批判など絶対にできないのだ。
 しかし、1月23日に召集予定の通常国会では、野党からトランプ批判の声が上がり、高市氏の姿勢を問いただす場面があるだろう。それでも、高市氏は、官僚に用意させた答弁をひたすら忠実に読み上げ、のらりくらりと逃げ回るしか手はない。国会で仮に通常国会冒頭解散になっても選挙戦で同様の批判を受けるのは確実だ。高市氏にとっては、致命的とは言えないまでもかなり痛手を被ることは確実だ。
 このように、高市首相にとって、米国のベネズエラ侵略は頭の痛い難題なのだが、日本国民にとっては、逆に大きなチャンスがめぐってきたと私は見ている。
 なぜなら、米国は本当に危険な国で、信頼など全くできないと多くの人が感じたに違いないからだ。ベネズエラだけではない。トランプ大統領は、次はコロンビアだと威嚇し、グリーンランドの領有のために武力行使も排除しないと示唆している。メキシコ、パナマ、さらにはカナダさえもトランプ大統領の支配下に置きたいと考えているようだ。西半球を取り仕切る帝王気取りなのだが、直近では、イランへの軍事介入まで仄めかすなど、その横暴ぶりは目にあまり、誰から見ても許すことはできない。

 すでに昨春、トランプ関税で、米国は日本の味方ではないということに気づいた人も多かっただろうが、今回の狂気とも言える蛮行を見れば、もはや米国はロシアに近いかそれ以上の無法者であることがはっきりした。
 そんな国を最重要同盟国として頼る日本の外交・安全保障政策がいかに不合理で危険なものか。今回の一件は、それをいちいち説明するまでもなく、国民に直感的に理解させる事件だったと言って良いだろう。
 もちろん、だからと言って、いきなり米国を批判して怒らせる必要はない。相手は暴力団の組長と同じだ。組長を「バーカ」と面罵するようなことをしてはいけない。どんな報復を受けるかわからないからだ。
 卑屈だという批判は覚悟して表向きはご機嫌をとりながら、しかし、どうやって、その支配下から逃れるのか、時間をかせぎながら、知恵を出して作戦を練る。さらに仲間を募って、力を蓄える。そういうことから始めなければならない。
 それと同時に、中国との関係を改善し、お互いに戦争だけは避けようとしているという相互信頼を築くことが必須だ。あらゆる分野で交流を深め、国民相互の信頼関係を構築することから始めなければならない。気の遠くなるような話だと思うかもしれないが、日中のリーダーがその気になって3年間死に物狂いで頑張れば状況を劇的に改善できる。
 その実例が、日韓関係だ。安倍晋三政権の間最悪だった両国関係は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の登場で激変し、李在明(イ・ジェミョン)大統領と石破茂前首相の下で、さらに改善した。日中関係もこれに倣えば良い。
 そうなれば、米国があまりに苛烈な要求を突きつけてきた時に、日本は、中国の方に近づくぞという脅し、と言っても決して口にしてはいけないが、そうした動きをするのではないかという懸念を米国に持たせることができる。
 そのお手本を、まさに今、韓国の李大統領が見せている。米国に対しては、日本よりもはるかに率直にものを言い、関税交渉で日本よりも良い条件で合意したと報じられている。原子力潜水艦について、韓国が建造することを認めさせたのも韓国側の勝利と言われる。

 李大統領は、このように米国との関係をうまく管理する一方で、中国とも、冷え切った関係を一気に蜜月とさえ言えるところまで持っていこうとしている。世界のAIブームの中で米台と並ぶ強みを持つ中国と韓国がハイテク分野で協力すれば、世界最強のタッグになるという見方もできる。
 では、日本がそういう道を選ぶことはできるのか。
 答えは二つある。
 一つは、NOという答えだ。
 ここで、NOと言うのは、「高市首相である限りそれはできない」という意味のNOである。高市首相は、歴史修正主義者であり、どんな演技をしても、中国の信頼を得ることはできない。昨年11月7日の台湾有事と存立危機事態をめぐる答弁で、台湾に自衛隊による武力介入をする可能性を認めたことで、中国側の高市氏への評価は地に落ちた。
 その後も、側近の萩生田光一自民党幹事長代行など多くの自民党議員が台湾を訪問し、まるで自民党が台湾独立を支援しているかのようなパフォーマンスを行っている。高市首相は、これを抑える努力をしていない。中国側のインバウンド・留学の自粛や日本産水産物輸入規制などにも全く反応せず、中国に厳格な対応をすることで、世論を煽り、自らの支持率向上に利用しようとさえしている。
 そんな人間を中国に信頼してくれと言ってもおよそ無理な話だ。高市首相である限り、中国は日本との関係を改善することはないだろう。
ここまで書いたところで、中国が軍民デュアルユース製品の対日輸出規制を強化するというニュースが入ってきた。レアアースが含まれる可能性も高い。日本政府は、日本に限定してこのような規制を課すことは国際慣行に反すると抗議しているが、これは全くの茶番だ。
 台湾に武力介入する可能性を示している国は、世界中で日本だけだ。したがって、日本の自衛隊が使う可能性のあるデュアルユース製品の輸出に限って規制を課すことは、非常に自然な話で、逆に他の国にまでそれを広げる方が暴論になる。中国側もよく考え抜いた末での措置だと言って良いだろう。

 私は、昨年の高市発言以来、中国政府関係者から話を聞いてきたが、いずれも、レアアースの輸出規制はやりたくないと話していた。影響が甚大で、日本との関係を修復不能なまでに悪化させる恐れがあるからだという。
 しかし、結果的に、中国はこの可能性がある切り札を出してきた。それは、中国が高市首相とのディールを諦めたということではないのか。日本側が本気で謝罪して撤回しなければ、どこまでもいく。そんな決意が見えてくる。
 こうなってしまった以上、もはや、高市首相が日中関係を改善するというストーリーはなくなったと言って良いだろう。
 そこで、もう一つの答えは、YESだ。
 NOではない条件として、高市首相に代わって、村山談話などに表された正しい歴史認識を語り、中国は一つという原則を守り、台湾有事には中立を守ると言える日本の首相が現れるということが必要になる。そうなれば、韓国のように中国との友好関係を飛躍的に増進させることは可能という答えになるのだ。
 もちろん、国民に対して、李大統領が韓国民に対してしたように、嫌中をやめて日中友好の道を選ぼうと呼びかけることは必須である。
それができれば、日本は、韓国とも肩を組んで米国と対峙することができるだろう。
その先には、集団的自衛権行使を再び禁止し、日米安保条約と日米地位協定を根本から見直すことによる対米従属関係の解消の道筋も見えてくる。軍国主義から国民生活優先への大転換である。
 米国のベネズエラ攻撃を機に、日本の進路を大きく変える。
 夢のような話だと思うかもしれないが、決してそんなことはない。国民の選択次第だ。
 仮に1月23日招集の通常国会冒頭の解散がなくても、2026年度予算成立後、通常国会閉会前後、そして、秋の自民党役員人事と内閣改造などを機に、高市首相が衆議院の解散総選挙を断行する可能性は高いと見られる。その時こそ、国民はここで述べたとおり、日本が強権暴力主義の米国への従属から逃れ、再び平和と繁栄の道に戻るために正しい選択をしなければならない。

 私もおおむね賛同します。多少違うのは、アメリカ・中国とは距離を置き、韓国およびASEAN(東南アジア諸国連合)と協力しながら、軍事力や核兵器ではなく、外交と話し合いによって東アジアに平和を築くという点でしょうか。
 その大前提となるのが、やはり歴史認識の問題です。日本が行なった侵略戦争と植民地支配についてきちんと謝罪をし反省をし賠償をする。これができれば、東アジアは平和への大きな一歩を踏み出せると信じます。
 ただ高市首相のもとではこのアプローチは難しいでしょう。『「最後の自民党総裁」 石破政権とは何だったか』 (高橋純子 『世界』 25.11)から引用します。

 高市は新進党時代の1995年3月16日、衆院外務委員会で、「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」に反対する立場からこう言い切った。「少なくとも私自身は、当事者とは言えない世代ですから、反省なんかしておりませんし、反省を求められるいわれもないと思っております」。(p.23)

 アジアに平和を築くためには高市首相に一刻も早く辞めていただくべきです。戦争をしたいのなら話は別ですが。

by sabasaba13 | 2026-01-15 07:05 | 鶏肋 | Comments(0)
<< 京都錦秋編(1):京都へ(20... 戦争絶滅受合法案 2 >>