格差と貧困

 昨日上梓した拙ブログの記事「多党化時代の政党選択」で、政党を選ぶ際のポイントは「国民を食わせること、絶対に戦争をしないこと」と述べました。それでは現在、食えない国民はどれくらいいるのか、その実相はいかなるものか。
 二つの記事を紹介します。ぜひご一読ください。

『週刊金曜日』(№1552 26.1.16)
風速計 「女性増えて若返る」 困窮者支援の光景 雨宮処凛

 年末年始、あなたはどのように過ごしただろうか。私は例年通り、東京都内や関東近郊の炊き出しなどを巡った。
 12月30日に訪れた横浜・寿町の炊き出しには長い行列ができていて、582食の雑炊が1時間弱でなくなった。翌日夜に行った池袋のTENOHASIの炊き出しには、350人ほどが寒空の下、列に並んでいた。大晦日の夜に配られたのは幕の内弁当とパン、みかん。元日の1月1日には、反貧困ネットワーク主催の「元日大人食堂」で相談員をした。250人ほどが訪れ、カレー、タイ料理、中華、和食から選べる弁当などを受け取った。中には年末から野宿生活となったという人もいて、夜は寒さに耐えるために歩き続けるので足が限界、と疲れ果てた様子で語った。携帯電話も止まったその人は、私よりずっと年下だった。
 また、こちらは行けていないが1月3日の「もやい」「新宿ごはんプラス」による食品配布には、実に845人もの人が訪れた。
 2026年、私は貧困問題に関わり始めて20年となる。06年と比較して変わったことはいろいろあるが、最も大きいのは「現場の光景」だ。
 たとえば08年末から09年の年明けにかけて6日間にわたり開催された「年越し派遣村」。派遣切りなどに遭い、職も住まいも所持金も失ってあの場を訪れたのは505人で、女性はわずか5人だった。また、平均年齢は定かではないものの、見た感じでは50~60代の中高年男性がもっとも多く、30代は数えるくらいしかいなかった。
 それが今、炊き出しや相談会の現場には女性の姿が当たり前にある。若い母親もいれば、都内の炊き出しを巡って家族の食料を調達しているという女性もある。
 同時に、性別問わず当事者の平均年齢はぐっと若返った。10代こそ珍しいが20代30代で住まいをなくし、ネットカフェ生活という例は当たり前。支援団体に来る相談の半数が10~30代という月もあれば、女性の相談が半数を占める月もある。
 「女性が増えて若返る」。少子高齢化のこの国ではもっとも歓迎される現象だ。が、困窮者支援の現場で起きていると話は別だ。この事実は、社会から若者や女性を守る余力すら失われたことを示しているからだ。
 そんな26年の年明け、「億万長者」がこの10年で倍増したというニュースを耳にした。いったいこの国で何が起きているのか、頭を抱えている。(p.3)

『しんぶん赤旗』(26.1.18)
生活相談食料配布 都庁前に901人 "首相は現状を見てくれ"生活保護利用者

 東京都庁前(新宿区)で毎週、生活相談と食料配布を行う「新宿ごはんプラス」で17日、過去最多規模の901人が利用しました。利用者からは「もう限界」との悲鳴とともに高市早苗政権への批判が相次ぎました。主催者は「政治が早急に手を打つべき」だと訴えます。
 「新宿ごはんプラス」はコロナ以降、600~700人規模の利用がありました。直近数カ月で急増し、10日には過去最多の937人を記録。17日にも開始1時間以上前からの長蛇の列ができました。
 生活保護を利用する男性(50代)=東京都=は「高市首相は生活困窮者の生活が分かっていない」と憤ります。「首相は、この現状を見てくれ。大企業ばかり見るな。自分勝手に選手などとんでもない。すぐに給付でも何でも手を打つべきだ」と訴えました。
 家庭内で虐待を受け、家を出たという女性(25)=東京都=は「福祉の予算が全然足りない。暴力の被害者が生きていけない」と高市政権を批判します。「ご飯プラス」は「私のセーフティネット」だと言います。地人の助けを借りて障害者手帳を取得し、障害福祉サービスを利用しています。「福祉を充実させなければ、暴力の連鎖も止まりません」
 初めて利用した男性(58)=横浜市=は3カ月前に膝を痛めて解体工をやめ、「貯金を取り崩しているが、もう限界」だと言います。貯金は残り30万円。求職中ですが、「職が決まる見通しが立たない。月6万円の家賃も払えるのか。「政治には少しでも不安をぬぐってほしい」と語りました。
 「新宿ごはんプラス」の大西連共同代表は、900人規模の利用が1年近く続き、「異常事態」だと指摘。「この背景には、さらに多くの生活困窮者がいます。各地域で支援を届ける責任を政治家は果たしてほしい」


 また気骨あるジャーナリズム、TBS「報道特集」(26.1.31)は「非正規雇用労働者の抜け出せない貧困の実態」という特集を組み、「食えない国民」の実態を取り上げました。

 働いても抜け出せない貧困。食料配布に並ぶ非正規雇用の人たち。広がる格差。「アンダークラス」とも呼ばれる890万の人たちに今、何が起きているのか、実態を追った。

 東池袋や都庁前での炊き出しの様子や、非正規雇用で働く方々の窮状、および専門家による分析をていねいに報道してくれました。いくつか紹介しましょう。非正規雇用で働く55歳の男性はこう語っていました。

 結婚も経済的に貧しくてできない状態。独身で私のことを世話してくれる家族はいない。収入がないまま餓死してしまうのか、いつの間にか亡くなっていたとか、そういう状態になってしまう…

 そして早稲田大学の橋本健二教授(社会学)はこう分析されました。

 非正規雇用者として非常に不安定で低賃金で働く人々が増加して、その厚みを増してきたのではないか。非正規雇用者の数は890万人、労働者全体の13.9%を占める。労働者階級は本来、家族を形成して子供を産み育てるだけの賃金をもらわなければならない。ところが現代の非正規労働者はそのような賃金をもらっていない。だから非正規雇用者は経済的に苦しいので結婚できず、また子供を産み育てることもできないので、その大部分が未婚者である。
 今までの労働者階級とは根本的に違うという意味で「アンダークラス」と私は名づけた。その平均年収216万円、正規労働者の平均年収486万円に比べて半額以下である。
 格差の拡大した社会では人々の連帯感が失われ、あるいは人々の間の敵対心が強まる。人々の間の助け合いがなくなり、困ったことがあっても誰も助けてくれず、さらに困難な状況に追い込まれる。いわば、社会全体が病気になっていく。

 アンダークラスは支持政党のない人が圧倒的に多く、選挙で投票している・いつも投票している比率が一番低い。政治に関わるだけの余裕がないということもあると思う。
 それに対して「所得の再分配に反対/貧富の差は仕方がない」と考える人々は比率としては13.2%と非常に少ないが、選挙に行っている・いつも投票している比率が非常に高い。しかも自民党支持率が非常に高い。そうした人々は所得が他の人々に比べて百数十万円高くて、大学を卒業した高学歴の比率が非常に高い。格差が拡大してもいいのだという立場の人々である。こうした「自己責任論」の立場に立つ人々の声を過剰に政治に反映させてきたと思う。

 次に慶應義塾大学の駒村康平教授(社会保障)はこう分析されました。

 (このまま格差と貧困を放置すると)不満と不安が広がっていく。結果的に、その場しのぎの人気取りの政策を言うような、いわゆるポピュリストが政治の力を握るようなことになってくる。そして非常に刹那的な政策が行われ、またそれが不満と不安を生み出し、またポピュリストが躍進するという非常な悪循環に入ると思う。

 いかがでしょう。貧困に苦しむ「食えない国民」と、豊かな人々の格差が、いま、日本社会を蝕んでいる実態が見えてきます。そしてこれは自然現象でも外国人のせいでもありません。『週刊金曜日』(№1364 22.2.11)から宇都宮健児氏の分析を引用します。

【風速計 中身が乏しい「新しい資本主義」 宇都宮健児】

 わが国における貧困や格差を拡大させてきた大きな原因は、第一に、1990年代後半から労働法制の規制緩和が行なわれ、派遣労働者をはじめとする非正規労働者が全労働者の4割近くにまで増加し、年収200億円以下の低賃金労働者が14年連続で1000万人を超え、労働者の実質賃金が1997年をピークに下がり続けていること、第二に、社会保障費の自然増削減政策がとられ、度重なる生活保護基準の引き下げをはじめとして医療・年金・介護などの負担増・給付削減を行なってきたこと、第三に、消費税を導入し税率を引き上げる一方で、法人税率の引き下げ、所得税の最高税率の引き下げ、株の配当や譲渡所得などに対し税率の低い金融所得課税を維持するなどの不公正な税制が行なわれてきたこと、などにある。(p.3)

 はい、この凄まじい「格差と貧困」は、自民党および公明党の政策によって引き起こされたものです。

 投票の参考にしていただければ幸甚です。自由民主党とその補完勢力である/になりそうな政党に投票するのか、その政策に反対・対抗する勢力に投票するのか。

 ただ、その政策の是非を問う選挙にならず、850億円をかけた人気投票になりそうな嫌な予感もありますが… いや、有権者の叡智を信じましょう。

by sabasaba13 | 2026-02-04 07:00 | 鶏肋 | Comments(0)
<< 最高裁裁判官の国民審査 多党化時代の政党選択 >>