拙ブログに、以前、下記の記事を上梓しました。『THE BIG ISSUE』(VOL.492 24.12.1)に掲載された浜矩子氏のエッセイを紹介する一文です。
浜矩子のストリートエコノミクス 迫り来る何かにどう対処するか
「アタシの親指たちがチクチクするよ。だから、邪悪な何かが近づいて来る」("By the pricking of my thumbs something wicked this way comes")。ご存知、シェイクスピア大先生の『マクベス』の中に登場する第二の魔女の台詞だ(翻訳筆者)。 このゾクっとするフレーズを、2人の作家が自分の小説のタイトルに援用している。ファンタジーSFの巨匠レイ・ブラッドベリと推理小説の女帝アガサ・クリスティーだ。ブラッドベリ先生は、上記の台詞の後半部分の「邪悪な何かが…」を使っている。クリスティー先生は前半の「親指チクチク」パートを採用している。前者は怪しげなでとてもダークなサーカスの話。後者は、おしどり探偵のトミーとタペンス夫婦が挑む怪奇なミステリーだ。 いずれも60年代の作品だが、第二の魔女のつぶやきは今日の我々の時代にとても良く当てはまるように思う。四方八方から邪悪な何かが近づいて来ている。その名はドナルド・トランプだったりする。邪悪な何かは、邪悪な何かなのかがわからないから怖い。その邪悪さの本質がどこにあるのか。それを見極められなくては、どう立ち向かうべきなのかが見えてこない。 米大統領選でトランプ氏に想定外の大敗を喫したカマラ・ハリス氏は、そこが甘かったのだと思う。トランプ的邪悪さを過小評価した。トランプ氏は偽預言者だ。偽預言者には、得意技が2つある。悪いのが誰で、敵はどこにいるのかを教えてくれる。これらの「教え」は生きるのがつらい人々を高揚させる。 善良な米国市民が、トランプ式愚かな暴言に惑わされることなどない。そう思い込んだところが、ハリス氏の抜かりだったのではないか。トランプ氏の邪悪さを軽く見た。そこに大きな盲点があったのではないか。邪悪なるものとは真剣に対峙する。ブラッドベリ作品もクリスティー作品も、そのことの重要さを実によく教えてくれる。ハリスさんに、これらの両作品を読んでおいてほしかった。(p.8)