ナイト・ライツ

 深々と冷え込む冬の夜半、よく聴くのがこのアルバムです。ジャンルはジャズ、ジェリー・マリガン六重奏団による「ナイト・ライツ」。彼はテナー・サックスよりも低い音域を受け持つバリトン・サックスの奏者なのですが、何ともはや扱いづらそうなこの楽器を暖かい歌心と素晴らしい技術で吹きこなします。彼はピアノが加わるのを好まず、バックはギター・ベース・ドラムス、そしてアート・ファーマー(トランペット)とボブ・ブルックマイヤー(バルブ・トロンボーン)との三管編成。中でも私のお気に入りは、Prelude in E mainor、ショパンの前奏曲第四番をジャズとして演奏した一曲。低音域を中心とした落ち着いた雰囲気の中、大声でわめきたてず、一音一音を慈しむかのような即興演奏がくりひろげられていきます。出色はやはり悲しく切なくそれでいて優しいマリガンのソロ。ややかすれ気味で甘くほろ苦い彼のバリトン・サックスの音色もいいですね。心拍数は減り、脳波が落ち着き、血圧が下がるのが自覚できるほど。頭や心の中のゴルディアスの結び目をアレキサンダー大王のように無理に断ち切らなくてもいいんだよ、放っておけば…と囁いてくれます。
 実は、かなり昔にFM東京で「アスペクト・イン・ジャズ」という番組が放送されていたのですが、そのオープニング・テーマでもありました。それ以来の長いつきあいですが、聴き飽きることはありません。何の不安もない(その存在に気づいていない)小さな小さな世界に充足していたあの頃を懐かしく思い出します。戻りたいとは思いませんが…
 ショパンの「24の前奏曲」もいいですね。コルトー、アルヘリッチ、ポゴレヴィチ演奏のディスクをもっていますが、よく聴くのはコルトー。音質は悪いのですが、起伏の激しいダイナミックな演奏です。
by sabasaba13 | 2006-02-09 06:44 | 音楽 | Comments(0)
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