「ホテル・ルワンダ」

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 映画「ホテル・ルワンダ」を見てきました。

 必見

 久方ぶりに、しばらく席から立ち上がれないほどの感銘を受けました。今思い出しても胸がざわめきます。1994年、アフリカのルワンダで民族対立からフツ族によるツチ族の大虐殺が起こり、100日で100万人もの人びとが斬殺されます。欧米各国や国連はこの出来事を黙殺し、絶望的な状況の中、高級ホテルの支配人であるポール・ルセサバギナ(フツ族)が1200人の避難民をホテルに匿いその命を救うという、実話に基づいたストーリーです。
 まず、この絶望的な状況をきわめてリアルに描いてある点が見事です。暴力、憎悪、恐怖、狂気。ラジオでツチ族への敵意を煽り、標的を指名し、虐殺を指示する場面など息を呑みました。そうした中、家族と避難民を救うために、話術を駆使し、賄賂を贈り、懇願し、ホテル・オーナーの助力を求め、そしてあらゆるコネクションを使い世界へ救助のメッセージを送る、徒手空拳のポール。それを演じるドン・チードルの迫真の演技には脱帽。毅然とした姿勢を崩すまいとしながらも、時には怯え嗚咽する普通の人間を見事に演じきっています。「あなただってやればできるのだ」という厳しいメッセージを受け取りました。また敢えて残虐な場面を撮らないことによって、できるだけ多くの人々や子供たちにこの映画を見てほしいという監督の思いも伝わります。
 第一次大戦の戦利品(!)としてベルギーの植民地にされて以後、ツチ族を優遇し分断支配(divide and rule)が行われたそうです。「絵はがきにされた少年」にもあるように、ツチ族とフツ族の容貌や文化・言語の差異はほとんどないのですが、IDカードの発行や学校における差別教育の徹底により両者の融和は崩壊させられていきます。やはり教育は重要ですね、民族紛争を解決する鍵の一つは確実にここにあると思います。
 そして巷や人びとの手に溢れる大量の武器! 中国製のナタ(一個10セント)や、ロシア製のAK47カラシニコフ(突撃銃)、ベルギー製のブローニング(拳銃)などが映画の中で度々登場します。兵器産業の跋扈とそれを支援する欧米各国の政策が、状況を悪化させていることは間違いないでしょう。武器輸出解禁によって、日本もこうした動きに加わろうとしているのは憂慮、批判すべきだと思います。
 そしてこの大虐殺を黙殺した国際社会。映画の中に、下記のような科白がありました。前者は国連軍の司令官、後者は取材に来ていたジャーナリストの科白です。
 君(ポール)が信じている西側の超大国は、“君らはゴミ”で、救う価値がないと思っている。君は頭が良く、スタッフの信頼も厚いが、このホテルのオーナーにはなれない。黒人だからだ。君らは“ニガー”以下の、アフリカ人だ。だから軍は撤退する。虐殺を止めもしない。

 世界の人々はあの(虐殺の)映像を見て―“怖いね”と言うだけでディナーを続ける。
 民族対立を煽って植民地支配をし、武器を供給して利益を得、差別意識から大虐殺を黙殺する。「それが人間のすることか」と言いたくなりますが、シェークスピアだったら「それが人間ってもんじゃないのかね」と言うでしょう。しかしポールは希望を捨てず、あらゆる伝手を使い世界中に助けを求めるよう、みんなに指示します。うろおぼえですが、その際に彼はこう言います。
 私たちの手を握り離さないでください、と伝えるんだ。手を離されたら私たちは殺されてしまう。それを彼らが恥じるように伝えるんだ。
 「あなたは何をしたのか、しなかったのか、何ができるのか? いやあなたのような普通の人間にも何かできるはずだ」という呼びかけが谺します。せめて選挙の時に、第三世界への教育費援助や、世界的な武器輸出規制に無関心あるいは消極的、ましてや武器輸出三原則を解禁しようとしている立候補者や政党には、断じて投票しないことは私にも出来ます。
 映画的な面白さにあふれ、しかも世界の現況を伝える重要な作品だと思います。一人でも多くの人々、特に若者や子供たちに見てほしいな。

●「ホテル・ルワンダ」公式サイト http://www.hotelrwanda.jp/
by sabasaba13 | 2006-02-20 06:06 | 映画 | Comments(2)
Commented by K国 at 2006-02-20 17:50 x
人間、狂ってしまうとどこの国でもありえることですね
日本でも戦争中に中国や韓国や東南アジアで似たようなことしてました
関東大震災でも流言により多数の韓国人が殺されました
基本は教育ですね明治初期までは相手を尊ぶ教育がなされてましたが
日清、日露戦争で勝った事による驕りが出て周りを見下した
他民族への人権の軽視、その教育を太平洋戦争が終わるまで続けた
私達も学校教育では受けて無くても、親そのまた親からの口伝えで聞いて育ってきた、自分に知識がつくまでは信じ込んで育ってきてる
そういう先入観が何かの切っ掛けでに爆発して停めようがなくなる
恨みの連鎖、目には目をの応酬怖いですね
それでも靖国に行こうとする国のトップ、火に油、傷口に塩の結果しかないと思うのだが一部有権者の為なのか
アフリカで起こった事件じゃなくて今どこにでも起き得ると自覚しなければ
Commented by sabasaba13 at 2006-02-21 21:06
 こんばんは。先日書評に登場してもらった森巣博氏が、ある小説(名前は失念されたそうですが)のこんな一場面を話しておられます。強制収容所でユダヤ人を虐殺した看守を、娘が「なぜあんなことができたの?」と詰問します。父の答えは「まず“われわれ”と“あいつら”に分ける。後は簡単だ…」 こうしたレッテルを貼った瞬間に、個々人の人間としての姿を見失ってしまうのでしょうね。
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