冬休みには、ひさしぶりにスキーをしにいこうと、山ノ神と話がまとまりました。正直に言って日本でスキーをするのは辛い。混んでいるし、コースが短いし、眺めが良くないし、ファッションが派手だし、食事をしている人の背後に立って幽鬼の如く待つのも嫌だし、関西人がリフト待ちの列に割り込んでくるのも不愉快だし… まあ1/3くらいは偏見で、最近は状況が変わっているのかもしれませんが、やはり海外に行くことに決定。一円あたりの滑降時間を比較すれば、そう変わりはないと確信しています。コスト・パフォーマンスから言えば、海外スキーの方がお得ではないかな。
では何処へ? 合衆国政府が現在の政策を変えないかぎり、アメリカに行く気は毛頭ありません。カナダは結構なのですが、天候の悪い日のつぶしがきかない。やはりヨーロッパですね。再訪の地なのですが、小生はグリンデルワルトを希望しました。ユングフラウやアイガーなど景観が素晴らしいし、コースも長いし、田舎の雰囲気をのこす街並みも素敵だし、天気が悪ければベルン・ルツェルン・バーゼルに行くなどつぶしもききます。これに対して山ノ神は同じく再訪の地ダボスを主張。理由は、滑ったことがないゲレンデがある。こうなると説得力の問題ではなく、威圧感と日頃の力関係が物を言います。もちろんダボスで決まり。本は、「
20世紀絵画」(宮下誠)と「
世界文明一万年の歴史」(マイケル・クック)と「
マルチチュード(上)」(ネグリ&ハート)を持参しましょう。
某日、成田空港から出発、ここは何回来ても苛立つ空港です。空港に入る前のパスポート・チェックを受けながら、「こんな遠いところに、利権目当てに農民を追い出して恨みを買うような空港をつくるんじゃねえよ」と(内心で)毒づきながら、チェックイン・カウンターへ。嗚呼、配給を待つような長い長い行列ができています。「人手とカウンターの数を増やせよ」と(小さな声で)毒づきながら、羊のように大人しく並びました。卓袱台を蹴り倒さなかったのには理由がありまして、今回はチューリヒ直行便をおさえることができたので二人とも余裕のよっちゃんだったのです。「まあよかろう」と一時間弱鷹揚に順番を待ち、やっとのことでチェックインができました。が、係の方がのたもうには「実はエコノミークラスが満席で…」 えっ!? 「大変申し訳ありませんが…」 おいおい(冷汗) 「ビジネスクラスのお席でよろしいでしょうか」 (間) 耳を疑いましたね、悪いわけないでしょうが。神様、仏様、稲尾様、どうもありがとっ! 流川楓と桜木花道のようにロータッチをし、伴宙太と星飛雄馬のように抱き合う二人。待てよ、これで全ての運を蕩尽してしまうのではと、私は即座にたじろぎましたが、山ノ神はフォックストロットのステップで空港中を踊りまわっています。ボディチェックでも長蛇の列ができていますが、山ノ神は丸い顔をさらに真ん丸くしてゴールデンチケットを握り締めながら文句も言わず並んでいます(もちろん私も)。