試写会で「南極物語」を見てきました。この手の動物もの映画にはまったく興味をもてないのですが、動物フリークの山ノ神に引かれての善光寺参りです。試写会で映画を見るのは、高校生の時以来です。有楽町マリオンにあるホールに開場十分前に着くと、すでに長蛇の列。係員の慇懃無礼な指示によって、きっちり四列に並ばされ、そのまま羊の群れのように中に誘導されます。最終的には、重労働できる者は左へ、それに向かない者は右へと選別されるのではないかと思うぐらい不気味な雰囲気ですが、ロハで映画を見られるのだと自らを戒め忍の一字。入場時には手荷物検査があり、おいおい「南極物語」試写会場に爆弾を仕掛けるテロリストがいるのかいと憤激しましたが、これは海賊版作成のためのビデオ・カメラの有無を確認するためでした。成程。
二十数年前に日本でつくられた「南極物語」をディズニーが焼き直した作品で、ま、要するに冬の南極に置き去りにされた犬たちが逞しく生き延び、隊員と感動的な再会をするというお話。愛らしい犬の姿と神々しい大自然の映像に、適度なスリルと隊員の恋と友情というスパイスを加えた、適度に面白い映画でした。予想以上でも以下でもなし、1000円以上は身銭を切りたくないですけれど。話の進行がほぼわかっているだけに、いろいろな深読みができました。実際の話では、犬たちはペンギンを食べていたようですね。しかしこの映画では、カモメらしき鳥と、死んだシャチを食べていました。どう考えてもペンギンを捕食するほうが容易ですよね。おそらく、ペンギンや鯨は保護すべきだというアメリカや日本の鑑賞者の感情を考慮したのでしょう。シャチやカモメやイラク人の生命は軽視していいのかと言いたくなりますね。そしてディズニーというグローバル資本がつくっている以上、それと持ちつ持たれつの合州国政府との関係も気になりますね。フロリダ州から巨額の税控除を受けているディズニー社が州知事ジェブ・ブッシュ(大統領の弟)との関係を配慮し、マイケル・ムーア監督作「華氏911」の配給禁止という圧力を子会社ミラマックス社にかけた事件もありましたし。たとえば隊員がイタリアの観測基地の雪上車を借りるシーンは、イラク戦争におけるイタリアとの緊密な関係を反映しているのかもしれません。一番気になったのは、なぜ南極を取り上げたのかということ。地球温暖化により南極の氷が融けてしまうのではないかという危惧を無視して、京都議定書をボイコットしたアメリカ政府。南極にはこんなに沢山の氷があるから大丈夫だという、ディズニーの援護射撃なのかな。
それはさておき、大事な事を教えてくれ、そして夢を与えてくれた映画でもあります。クレバスのある雪原で犬ぞりを走らせる時は、扇型に犬をつなぐこと。いつか役立つことは… なきにしもあらず。そして砕氷船の船長になるという、見果てぬ夢を抱きました。厚い氷をバリバリと砕きながら進む映像には、身震いしましたね。でも実現しそうもないので、せめていつか北海道の流氷見物に行こうと拳を握り締めました。
●「南極物語」公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/nankyoku/