ダボス編(10):madrisa(05.12)

 さてここから6人乗りゴンドラで未踏のゲレンデmadrisaに上ります。ゲレンデ・マップを確認すると、一抹の不安が心をよぎりました。到着して、その不安が現実のものとなります。チェア・リフトがぬぅあい! すべてT字型のバーで引っ張りあげられるものです。これまでヨーロッパ・スキーを礼賛してきましたが、たった一つ苦言を呈したいことがあります。Tバーが多すぎる! バランス感覚の悪さ、脚力の弱さ、バーから転げ落ちた時に後ろの人を巻き込むことへの不安などから、私はTバーが苦手です。過去にも何回か痛い目に会っており、できうれば避けたいと思っています。しかしここmadrisaの頂上に行くには、かなり長いTバーを二本乗り継がねばなりません。マップを見ると途中で角度がクイッと変わる身の毛もよだつようなTバーだし、ガスもかかってきたし、これは腰が引けます。重心が低くTバーなど屁とも思わない山ノ神は、そうした小生の苦境を察して、「レストハウスで待っていてくれれば、私一人で行ってこようぞ」と優しい言葉をかけてくれました。ま、とりあえず昼食のBratwurst(でっかいソーセージ うまいんだ、これが)と小山のようなフレンチフライポテトをたいらげ、店の方がサンタクロース姿で子供たちにお菓子を配っているのを眺めながら、しばし熟考。急斜面でTバーから転げ落ち、後ろの人を巻き込んで、幼児が圧死、という悪夢のような光景が浮かんできます、いや冗談ではなく。呻吟の末山ノ神のオファーを受け入れることにしました。Tバーリフト乗り場まで一緒に行き、くれぐれもコースを間違えて山の向こう側に降りないように、知らない人についていかないうように、アメリカ産牛肉を食べないようにと懇願しました。携帯電話を持っていればなあと思うケースは一年にニ、三回しかありませんが、確実にこの時が該当します。Tバーをキャッチできずアタフタしている山ノ神を見て不安と自責の念は強まりますが、常人を凌駕する判断力と知性、低い重心をもつ彼女なら大丈夫だと信じましょう。
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 長い長い長い長い1時間が過ぎ、居ても立ってもいられなくなり、外で様子を見ながら待っていました。パトロールが赤い毛布をまいた物体を橇に乗せて降りてきたときには、ドキッとしましたね。やがて彼女は無事に戻ってきました。ああよかった。話を聞くと、途中からガスの上に出て、頂上は素晴らしい快晴・眺望だったとのことです。またTバーは距離が長く、途中でカーブがあり、コブやカマボコ状の凹凸のあるやっかいなもので、私が行かなくてよかったということでした。一緒に行くべきだったのか、止めさせるべきだったのか、最良の判断が何かについては今でもわかりません。ただ実際に困難な事態となった時には全力で互いをサポートし、それ以外の時には各自が好き勝手に行動するというこれまでの行動様式で大きく間違ってはいないとは思っています。
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 山ノ神が撮影した渾身の一枚です。
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by sabasaba13 | 2006-03-19 09:17 | 海外 | Comments(0)
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