本日は天気予報どおり小雪の舞う曇天です。スキーはやめてクールに行きましょう。ダボス・ドルフ→ランドクアルト→クール→フィリズール→ダボス・ドルフという二等乗車券を購入して出発です。一両だけ窓が側面上部まで設けられている展望車があったので、さっそくそれに乗り込みました。すぐ隣りは自転車を載せるためのスペース、ほんとに羨ましいサービスです。さて出発、雪景色もまたいいものです、雪に埋もれた山々や木々、息をひそめているような家々や村や町の姿は美しかったですね。(住んでいる人はそれどころではないでしょうが)
約一時間半でクールに到着。紀元前15年にはローマ人が支配したという記録がある、アルプスを南北に結ぶ交通の要衝としてかつて栄えた街です。そうそうスイス第四の公用語ロマンシュ語はこのあたりでしか話されていないそうです。まずは駅から歩いて十分ほどの所にある州立ビュンドナー美術館へ。こじんまりとした美術館ですが、私の大好きなホドラー、セガンティーニ、カリジェ、キルヒナーの作品が数は少ないのですが展示されています。オットー・ディックスの静謐だがどこか不吉な風景画にも惹かれました。そしてジョバンニ、オーギュスト、アルベルトという名の三人のジャコメッティの作品。彫刻家のアルベルト・ジャコメッティは知っていましたが(スイス人であることは知りませんでした、不覚)、後の二人についてよくわかりませんでした。今調べてみて、ジョバンニが彼の父であることが判明。味わい深い静謐な風景画を描く方でした。しかしオーギュスト・ジャコメッティについては未だわかりません。どのような画家なのか、ご教示くだされば幸甚です。
なお地下は現代美術の展示室となっています。私が知っていたのはギーガー(エイリアンをデザインした画家)だけでした。しかしヨーロッパの美術館には、こうした現代美術を展示するコーナーが必ず併設されているようです。これは識見ですね、同時代のアーティストを紹介し、新しい美の形を見出そうとする義務が美術館にはあると思います。評価の定まった過去の作品を展示するのは楽だし、客も集まって業績評価も上がるのは理解できますが。そういう意味では、市場原理に投げ込まれ、業績評価と集客数しか頭になくなっているであろう日本の美術館・博物館は今、危機的状況にあるのでは。そして責任の一端は、芸術・文化と市場原理は相容れないものだという事態を見過ごしてきたわれわれにもあります。
本日の一枚。スピーカーからは蝉の声が鳴り響いていました。