「徹底解剖100円ショップ」

 「徹底解剖100円ショップ 日常化するグローバリゼーション」(アジア太平洋資料センター編 コモンズ)読了。ありふれた食材を通して、日本と世界とのつながりを考察するという手法は、「バナナと日本人」(鶴見良行 岩波新書)や「エビと日本人」(村井吉敬 岩波新書)ですでに行われています。そしてグローバリゼーションがさらに進行している現状において、100円ショップに目をつけたのは炯眼です。まず以前から日本企業のアジア進出に警戒感を抱き、地道な調査を続けてきたアジア太平洋資料センターに敬意を表したいと思います。
 私は生理的に受けつけないのでほとんど100円ショップには足を運びませんが、猖獗をきわめているのは無論知っています。しかも安かろう悪かろうではなく、品質もそこそこ良いらしい。ではなぜそうした商品を100円で売れるのか? 不覚・迂闊・胡乱にも全然考えようとしませんでした。これをグローバリゼーションと結びつけて考えられるのは、知性と好奇心と問題意識の為せる技ですね、まいった。さて著者はグローバル資本主義をこう定義しています。「人件費が安く、輸出しやすい場所であれば、製造業はどこへでも進出する。安くてある程度の質の製品であれば、流通業はどこからでも買う。」 答えは明らかですね、100円ショップは後者のケースに該当します。では、どこから? どうやって? そして何よりも誰が作っているのか? ダイソーやキャンドゥからは情報は得られないので、日本やアジア各地の人の協力を得ながらこつこつと調査を進めていきます。その過程も調査結果も面白く興味深いのですが、詳細はぜひ本書をお読みください。簡単にいえば、日本やアジアの中小工場やメーカーに、一時的に大量に低価格でしかも現金支払いで注文するというのが、安さの秘密です。これが実際に働いている人をどういう状況に追い込むかは、一目瞭然です。長時間で過酷な低賃金労働、次の注文は保障されないので雇用の不安定… この前開かれた全人代でも問題となりましたが、特に貧困に喘ぐ中国農村への注文も多いようです。
 こうした問題に加え、100円ショップに対抗するため小売店も安売り競争に巻き込まれるためデフレがさらに進行する、大量消費・大量廃棄につながり資源の枯渇や環境破壊の一因となる、小売店がつぶれ地域の空洞化につながる、などといった問題点も著者は指摘しています。それではどうすればいいのか。行政が協力して地場産業を振興するという一つの解決策を提案されていますが、フェア・トレードを含めた他のさまざまな解決策を考えないといけませんね。
by sabasaba13 | 2006-07-12 06:07 | | Comments(2)
Commented by PleiadesPapa at 2006-07-12 10:37 x
こんにちは。小生も、100円ショップなるものは大嫌いで自分で使うことはありません。周囲へ喚いている反対スローガンは「労働への冒涜、資源の浪費、見えない貧困層へからの収奪」。加えて「安けりゃ喜ぶ消費者は、自分の賃金引き下げに直結する覚悟がないなら、単にさもしいだけじゃ!」と。
それにしても新自由主義とは人間性をカネで歪曲させるとつくづく思います。その原理にすがって「構造改革」(日本のアメリカン仕様)がとりわけコイズミの下で進行してしまいました。ぺんぺん草の荒野に木を取り戻す(自分を取り戻す)行動を市民側が組織しないとこの国はアリゾナ砂漠になってしまいそうです。
こんな本が出ていたとは!早速読みましょう。
Commented by sabasaba13 at 2006-07-12 19:20
 こんばんは。下品な表現で恐縮ですが、もうわれわれには抜かれる尻の毛が一本も残ってないのかもしれません。育毛剤のような、人間らしい真っ当な売り買いを取り戻したいものです。でもどうやって? 先日の書評で紹介しました「共生の大地」などを参考にしながら、みんなの叡智を結集していきたいですね。
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