テニアン・サイパン編(14):サイパン(06.8)

 さてここから自転車に乗り、一気に海岸へと下ります。Tinoさんを先頭に、ほとんど車が通らない道路をまるでプライベート・サーキットのように独占して青い海めがけての豪快なダウンヒル、これは快感。自動車が伴走してくれているので、万が一の場合にも安心ですね。そして途中からジャングル・コースに入ります。どうやらスタッフが密林の中を切り開いて作ったらしい、未舗装の狭いサイクリングロードです。昼なお薄暗く生い茂る木々と草々、噎せ返るような湿度、砲弾や銃弾、火炎放射器の炎を浴びながらこの密林の中を日本兵や民間人が逃げ惑ったのかと想像すると心胆が凍り付いてしまいます。なおサイパンのジャングルには毒をもつ生き物はいないと聞いていたので、そこは安心でした。ハンドルをとられながらも20分ほどで走破、眼前に海が開けるとそこはプンタン・サバネタ、通称バンザイ・クリフです。
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 ここも多くの兵と民間人が身を投じた場所で、多くの慰霊碑が建ち並んでいました。後ろを振り返るとスーサイド・クリフ、そして展望所から眼下を見るとほぼ垂直に切り立った崖と牙をむくように鋭く尖った岩々、そしてその牙をより鋭く磨こうとするかのように打ち寄せる波。言葉を失います。展望所の前に大きな忠魂碑があったのには魂消ましたね。この無惨な死を、天皇や国家への忠誠ととらえて顕彰しようとする人たちがいるわけだ。そういう人間にしてみれば、死者は物言わず安らかに眠っていてくれたほうが助かるのでしょう。
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 そして海沿いの平坦な道路を十分ほど走ると、バナデロ、通称ラスト・コマンド・ポストに到着します。日本軍が最後の司令部とした所で、巨大な岩盤の中をくりぬいてあります。内部は見学可能で、艦砲射撃による大きな弾痕などを見ることができます。周囲には日本軍の戦車や大砲が展示してありました。隣には「おきなわの塔」と「韓国人追念平和塔」があります。合掌。ガイドブックによると、日本人は一等市民、沖縄人・朝鮮人は二等市民、島民は三等市民とされていたとのことです。これが「大東亜共栄圏」の実態ですね。なお後者に行く途中の岩肌に防空壕の入り口があることを、Tinoさんが教えてくれました。
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 さてここから出発点の「マリアナス トレッキング」の事務所に戻ります。途中、左手に掩体壕(飛行機を隠すための壕)を二つ発見しました。天皇制と国家権力を守るためにこの島全体を「絶対国防圏」として要塞化したのだなと、あらためて痛感しました。もちろん島民の意思を問うことなしに…
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 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2006-10-27 06:10 | 海外 | Comments(0)
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