北陸・山陰編(28):三仏寺投入堂(06.9)

 そしてまだまだ難所は続きます。救いは、山道に沿ってモノレールが設置されていること。怪我をしたらこれに乗って降りられるのでしょう、きっと。行場とはいえ、さすがに御仏の厚恩は広大です。バランスをとりながら「馬ノ背・牛ノ背」を踏破すると、いくつかの建物が岩窟の中に建ち並んでいます。
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 納経堂・観音堂・元結掛堂・不動堂ですね。そして山道を右にまわりこむと、そこが投入堂。
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 足場の築きようもない垂直な崖の岩窟に、すっぽりとはまるように鎮座しています。どうやってつくったのだろふ?????? 残念ながら近寄ることはできず、少し離れた場所から眺めるだけなのですが、十分に感動しました。ふと脇を見ると、最近まで修復作業をしていたようで作業小屋が設置されており、モノレールがそこにつながっています。資材運搬用だったんだ…
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 しばらく見惚れて写真におさめ、さあ下山です。下りはより厳しいと覚悟していたのですが、しかるべき所に手や足をかけられる鎖や木の枝・根や石があるので思ったよりは容易に降りることができました。本堂から投入堂への往復所要時間は一時間半ほどでした。輪袈裟を返却し下山届を書きながら、係りの若い男性に「怪我人がでたらどうするのですか?」と訊ねると、「しょっちゅうぼくが背負って下りてきます」とのお答え。彼の足だと往復30分ほどだそうです。凄い… またひどい事故の場合にはレスキュー隊も出動できる態勢が整っているとのことですから、安心…かな? 本堂には絵馬がかかっており、「小学校合格」(!)「しんちゃんが私のことを好きになりますように」といった願い事が書かれていました。Sさん、Rさん、だいじょうぶ、投入堂にお百度詣でをすれば、少なくとも頑健な足腰になりますよ。宝物館を見物すると、解説に「大自然のなかに身を置き、自然と目の当たりに対峙することで、人間性を鍛えていくという修行性は、物質文明のほころびに悲鳴を挙げつつある現代において、貴重な示唆を与える」とありました。普段だったら「ケッ」と言ってはすに構えるシニカルな私ですが、あの苦行の直後ではしみじみと心に染み込んでくる言葉です。受付案内所にある観光ポスターには「日本一危ない国宝鑑賞」とありましたが、満腔の意をもって賛同します。異議なあし! 議事進行! 座布団二枚! もし匹敵するとすれば、宮内庁に無断侵入して「唐獅子図屏風」(狩野永徳筆)を見ることかな。
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 それにしても感心したのは、けっこう中高年入山者が多かったのですが、途中で挫折して引き返す方がほとんどいなかったということです。その肉体的・精神的頑健さには頭が下がります。なお購入したお土産は、「三徳山人」Tシャツと、「足腰御守」(ご利益ありそうでしょ)。また参拝券が「角大師」の御札になっているので、少し得した気分です。おまけのワンポイント情報。ハイヒールや革靴で行っても、登山参拝受付所で草鞋を貸してくれるのでだいじょうぶですよ。
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 駅に向かうバスで揺られながら、心地よい疲労感とともに「至福」という気持ちに包まれました。自然と対峙しながら五体・五感すべてを駆使して目標を達成したという満足感ですね。これが修験道の、ひいては宗教全般の魅力かもしれません。そしてこうした体験が、けっこう人生を支えてくれる小さいけれど大事なつっかえ棒になってくれるのだと思います。私の場合、投入堂に到達できたこと、自転車で瀬戸内海を縦断したこと、ケルン大聖堂の天辺まで登ったことですね。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2007-01-02 07:50 | 山陰 | Comments(0)
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