ガイドブックによると隣にある崇道神社も紅葉の穴場だそうですが、陽が翳っているため参道が薄暗くあまり楽しめませんでした。さて、いよいよ山ノ神と合流です。待ち合わせ場所は三十三間堂の隣、京都国立博物館の前にあるハイアット・リージェンシーのロビーです。約束した時間が迫っているので、川端通りを脱兎の如く南下、歩道と車道を縦横無尽縫うように走り、定刻より十分遅れで到着。実はここはずっと定宿にしていた京都パークホテルだったところで、近年に外資系企業に買収され生まれ変わったのです。どう変わったのかを確認したかったのですが、かなりモダンでクールな感じに改装されていました。彼女は評価していましたが、私は以前の暖かくて野暮ったい雰囲気が好きでした。いずれにせよ宿泊料金が高額なので、もう泊まることはないかもしれません。
丸太町にある山ノ神ご用達の漬物店で買い物をしたいというので、京阪電鉄三条駅で再び待ち合わせ。ここから加藤順漬物店まで歩き、山のように漬物を買い込んで知人への配送を依頼。なおこちらのトイレに「手に持ちてねらい定めし玉の露外に散らすな音無の滝」という歌が貼ってありました。西行の作だったかななどと考えていると、ねらいを外しそうになりました。危ない危ない。なお玉の露を絶対に散らさせない素晴らしい仕掛けを、数年前にオランダ・ハーグのマウリッツハイス美術館で見つけました。詳細は
こちらをどうぞ。安倍伍長か小泉元軍曹が石原強制収容所所長の顔を刷り込めばより完璧です。
夕食はこれまた我々ご用達の洋食屋「金平」に行くことにしました。鴨川を渡り、ホテルフジタの裏手の道を歩き、店の火影が近づいてくるにつれ胸の鼓動が高まってきます。タンシチュー、オムライス、カニコロッケ、カキフライ、ハンバーグ、何を食しようかな。と… み、み、み、み、み、み、み、み、み、み、店の名前が変わっている! つぶれた… 頭頂部に鉄槌をくらったような衝撃、(ほんとに)一瞬立ち眩みがしました。けっこう繁盛していたので客足が遠のいたのが原因ではなく、高齢であったご主人に何かあったのだろうと想像します。嗚呼なぜ二年前に来た時に「わいが後をついだる!」の一言が言えなかったのだろふ… これで京都に来る楽しみの一つが確実に消えました。うなだれながら私は重い足でペダルをこぎ、彼女は重い体重をタクシーに埋め、ホテルで落ち合うことにしました。彼女の荷物を部屋に置いて、フロントで紹介してもらった和食「有田」で傷心を癒すことにしましょう。地下鉄五条駅から徒歩数分、店内は気さくですが趣味のよい感じで、料理もなかなかいけました。さば寿司、鯨フライ、かぶら煮、代金は高めですがいずれも満足できるお味。これで京都に来る楽しみの一つが確実に増えました。
本日の一枚は、金平のタンシチューの遺影です。合掌。