エリック・ハイドシェック頌

 先日、山ノ神とエリック・ハイドシェック(ピアノ)のコンサートを聴いてきました。場所は浜離宮朝日ホール、となると当然夕食は以前にも紹介した築地市場内の寿司屋「磯野屋」です。安くて美味しい寿司に舌鼓をうち、いざホールへ。
 ハイドシェックというピアニストの存在は、宇野功芳氏の音楽評論によって知りました。超絶技巧を磨き上げるだけの画一化がすすむ音楽界にあって、個性的な演奏をする稀有な方であると知り、さっそく宇和島におけるライブ盤(1989)を購入。その鬼神の如き演奏に圧倒されました。今回のプログラムでは、その際に弾いたモーツァルトのソナタ第12番(K.332)と、ベートーベンのソナタ第17番「テンペスト」が聴けるというので即チケットを購入。前半はこの二曲にモーツァルトのロンド(K.511)、後半はフォーレのノクターン第9番、ショパンの舟歌、ドビュッシーの「ビーノの門」「グラナダの夕べ」「さえぎられたセレナード」というプログラムです。そして鍵盤のあたりに膝がくるような、彼の巨躯がステージにあらわれました。椅子に座ると、まるで「スヌーピー」に登場するシュレーダーのように、フルコンサート・ピアノがおもちゃのように見えます。指の幅が鍵盤より広いのではないか、などという余計な心配は無用、すぐに色彩豊かな音がホールに満ち溢れます。千変万化の音質、多彩なダイナミクス、強靭にしてしなやかなタッチ、そして個性的な解釈、すぐに彼の世界の虜になってしまいました。齢七十を越えるためか、時々ミスもありましたが、No problem。そんなことで傷つくようなやわな演奏ではありませぬ。「テンペスト」の第三楽章では音のうねりに心の琴線が揺さぶられ、思わずうるっとしてしまいました。後半は、ドビュッシーの曲で音の万華鏡を堪能。演奏終了後も万雷の拍手に応えて、バッハ、ヘンデル、ベートーベンなどなどのアンコールを連発してくれました。山ノ神はうっとりとした表情で「一晩中聴いていたい…」と呟きますが、同感です。
 心の底から音楽とピアノを愛するハイドシェックと共に過ごせた至福のひととき、今も余韻にひたっているところです。
by sabasaba13 | 2007-03-04 07:53 | 音楽 | Comments(2)
Commented by trefoglinefan at 2007-09-02 13:56 x
sabasaba13さん、はじめまして。コンサートは特に後半が良かったと思います。完熟演奏とはこのことですね。来年は6月6日にサントリー・ホールで予定されているようですので、楽しみです。
Commented by sabasaba13 at 2007-09-02 17:11
 こんばんは、はじめまして。ほんとうに素晴らしい演奏でした。カート・ヴォネガットは墓碑銘に「彼にとって、神が存在することの証明は音楽ひとつで十分であった」と刻んでほしいと書いていましたが、その言葉を再確認させてくれるような演奏でした。
 秋にはルイサダのコンサートに行く予定です。築地の寿司とともに楽しみにしています。
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