「さらば外務省!」

 「さらば外務省! 私は小泉首相と売国官僚を許さない」(天木直人 講談社+α文庫)読了。小泉軍曹に対イラク攻撃中止と中東和平交渉の早期再開を意見具申して、実質的な解雇処分を受けた元レバノン大使、天木直人氏による内部告発の書。外務省の劣化・腐敗・無能ぶりを、これでもかこれでもかこれでもかこれでもかこれでもかと暴いてくれます。痛快! ある程度は予想していましたが、ここまで非道いとは思いもよりませんでした。直截でやや感情に傾く文章表現が時として気になりますが、関係者しか知りえない内幕を白日に晒してくれたのですから小さな瑕疵でしょう。その勇気と、真っ当な外交のあり方を願う思いに、賛辞を送りたいと思います。
 ひたすら米国外交に盲従し、自分たちの利益を守るために国民を犠牲にし、情報収集など必要な仕事を行わず、出世のことしか頭にない、卑劣な人格と低劣な能力・知識。外務官僚をここまで罵倒していいのかと慮る方もいらっしゃるかもしれませんが、何をおっしゃるうさぎさん、一読されれば首肯すること請け合いです。今のところ、名誉毀損などの訴訟も起きておらず、本書の発刊差し止めもされていないようなので、内容に間違いはないのだと思います。いくつか例をあげましょう。
 「米国は日本と共通の価値観を有する信頼できる唯一の国である。そのような国に対して(日本が軍事攻撃をされた場合)助けてくれないなどと疑念を抱くこと自体、誤りであり米国に失礼である。」(栗山尚一元条約課長)

 日本の国会議員は、国会が夏休みに入ると、こぞって外遊に出かける。用もないのに外国を訪問する日本の政治家を喜ばせるべく、外務官僚は外国政府に対しもっともらしい名目をつけて公式訪問を受け入れるよう要求する。

 報道陣を前に米軍基地の重要性を得々と述べた田中均元北米一課長は、「沖縄の基地を訪れたことがあるか」と記者から尋ねられ、返事に窮した。

 「中東和平問題はイランに関係ないから干渉するな。」(野上義二元事務次官)

 「国民に知恵がついてきているので外交がやりにくくなってきている。」(竹内行夫元北米局長)

 「第二次世界大戦後の歴史において、国連が世界の平和の維持のために当初想定されていた役割を果たして来たとは言いがたい。…本来国連が果たすべき役割を実効性をもって担ってきたのは米国である。ひたすら平和を唱え、いかなる武力行使にも反対する立場からは、残念ながら平和は生まれない。日本政府が(イラクへの武力行使という)米国の方針を支持したこともあって、これを対米追随外交と非難する論があるが、これは情緒的で無責任な感情論と言わざるを得ない。…日本が米国にノーと言うことは日常茶飯事の如く屡々ある。あえて公にしないだけである…」(斉藤邦彦元事務次官)
 なお氏が辞めさせられるきっかけとなった「意見具申」とは、出先の大使が、本国政府に向けて日本のあるべき外交政策について意見を申し進めることです。しかし最近では、これを行う大使がほとんどいなくなったそうです。その理由について氏は、本国政府の決定に異を唱えれば疎んじられ出世の妨げになるという、功利的な配慮が働くからであると分析されています。
 そして論は外務省のことだけにとどまらず、日本の政治全般に対する批判におよびます。国民一人ひとりが下記の諸点に問題意識を持ち、自分なりの意見を持つようにならなくてはならないと提言されています。
1.日米安保条約の歴史と変遷を学び、自らの意見を持つ
2.第二次世界大戦以後の日本の現代史を知る
3.憲法改正問題を避けずに直視する
4.アジア諸国への謝罪と天皇の戦争責任について考える
5.日本経済の混迷の真の責任の原因を知り責任者を追及する
6.政治家、官僚にこれ以上特権を持たせない決意を固める
7.石にかじりついても政権交代を実現する
8.情報公開法をさらに改善し積極的に活用する
9.地方分権化を徹底して推進する
 6については天下りの旨みを根絶すること、7については共産党・社会民主党が反自民党的なるものの統一に立ち上がり、他の市民派グループを統合して真のリベラル第三勢力を結集することを提案されています。同感。民主党が第二自民党であることはほぼ明らかだし、実現すべき選択肢だと思います。

 誰かが「日本に政府はない、あるのは官僚組織だけだ」と言っていましたが、その実態をもっと知りたいですね。各省庁からこうした内部告発をしてくれる方が現れるのを期待します。とりあえず今一番知りたいのは文部科学省の内幕です。もし拙ブログ読者の中に文部科学省にお勤めの方がいたら、ぜひ警告のホイッスルを吹いてください。
by sabasaba13 | 2007-03-17 08:36 | | Comments(0)
<< 鎌倉錦秋編(6):宝戒寺・獅子... 「『敗者』の精神史」 >>