だまたべ:雪虎

c0051620_69334.jpg ご無沙汰しておりました、ひさしぶりの「だまたべ(騙されたと思って、食べてみて)」コーナー、“シッコ”ではなく“せっこ”です。先日、仕事の帰りに池袋の某デパート食品売り場に寄ったら、八王子一丁庵の美味しそうな生揚げに身も心も吸い寄せられました。山ノ神に連絡をとると、冷蔵庫に大根があるとのこと。となったらこりゃあ雪虎しかありません。美食に一生を捧げた北大路魯山人(いろいろな人生があるものですね)が夏の絶好の食べ物として推奨している料理です。彼の著『魯山人味道』所収「夏日小味」の中にこういう一文があります
 雪虎―これはなんのことはない、揚げ豆腐を焼き、大根おろしで食べるのである。その焼かれた揚げ豆腐に白い大根おろしのかけられた風情を「雪虎」と言ったまでのことである。… これはまったく夏向きのもので、朝、昼、晩の、いずれに用いてもよい。まず揚げ豆腐の五分ぐらいの暑さのもの(東京では生揚げと称しているもの)を、餅網にかけて、べっこう様の焦げのつく程度に焼き、適宜に切り、新鮮な大根おろしをたくさん添え、いきなり醤油をかけて食う。分量と器を、その場その場で加減し、注意さえすれば、単に自家用の美食に止まらず来客に用いても、立派な役目を果たすのである。そして美味くできれば、その味、簡適にして醇乎、まことに一端の食通をもよろこばすことができる。なまなかてんぷらなぞ遠く及ばない。そして、これを美味く拵えるコツは、よい揚げ豆腐を手に入れることは言わずもがな、新鮮な大根を求めることである。
 というわけでほとんど手間がかかりませぬ上に、良い素材さえ手に入ったら至福のひと時は約束されたようなもの。香ばしい焦げを楽しみ、サクッとした食感の虜となり、そして響き渡る凝縮された豆腐の旨味と辛美味しい大根とそれらを包み込む醤油の三重奏。この快楽に浸るのに何の遠慮も要りません。さあ至高の世界へ!
by sabasaba13 | 2007-09-12 06:10 | 料理 | Comments(0)
<< 「9.11 マスターキーから何... 「シッコ」 >>