北海道編(8):函館(04.9)

 そして徒歩で元町地区へ。まずはハリストス正教会に行き、内部で(おそらく)日本唯一の女性イコン画家山下りん(1857~1939)の描いた聖像画数点を拝見。柔らかく暖かな表現が印象的でした。この一帯は、カトリック元町教会、聖ヨハネ教会、東本願寺函館別院と、宗教施設が集中しています。八幡坂から見下ろす海と港も素晴らしい眺め。ここから歩いて数分で、ロープウェー駅です。ロープウェーに乗って函館山頂上へ。塩害による被害や倒木が、台風18号の凄まじさを物語っています。頂上からの眺めは、期待を裏切られませんでした。お見事。両側に海が迫る市内の眺望は一見の価値がありますね。ここだけの話、山ノ神はつい最近までここの写真を見て渡島半島の一番くびれた部分だと信じ、「北海道ってけっこう小さいのね」と思っていたそうです。振り返ると、津軽海峡や下北半島も眺められる360度のパノラマ。
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 ここには、伊能忠敬北海道最初の測量地の記念プレートや、ブラキストン-ライン(本州と北海道では、鳥類・哺乳類の種が著しく異なる)を提唱したトーマス・ブラキストンの記念碑もありました。またこのあたりは戦前要塞が築かれ立入禁止区域で、その遺物がたくさんあるそうなのですが、時間がないので探索はカット。日本三大夜景(長崎稲佐山・神戸六甲山)の一つといわれる夜景はぜひ見にきましょう。
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 ロープウェーで麓に下りて、すぐそばにある元町配水場を見ようとしたら、台風被害のため見学できず残念。函館護国神社で、旧奉安殿と箱館戦争時の新政府軍死者の墓を見た後、函館公園へ。
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 啄木の「函館の青柳町こそかなしけれ 友の恋歌 矢ぐるまの花」という歌碑がありました。この公園には、旧博物館(日本最古の博物館建築?)や、古い市立図書館など、洋風レトロな公共建築物件が目白押しです。後者は、前述した相馬哲平の寄付によりつくられたとのこと。忘れがたい人物ですね、うん。なおこの図書館には啄木文庫があります。妻の節子が「啄木は焼けと申しましたが、私の愛着がそうさせませんでした」と言って守り抜いた日記・遺稿が、妹婿の宮崎郁雨に形見として伝えられ、ここに託されたのですね。
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 さらに歩いて海を望む啄木一族の墓へ。「死ぬ時は函館で」という啄木の思いを汲んで、節子は遺骨を函館に埋葬することを願っていたそうです。しかし彼女も啄木のあとを追うように翌年死亡。その翌月に周囲の尽力により墓がたてられました。合掌。「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」が墓碑に刻まれた歌です。なお彼のために奔走した宮崎郁雨の墓が、啄木を見守るようにすぐそばにありました。さきほどの文学館で、啄木が借金を借りた相手とその額を死ぬ直前に記したノートを見せてもらいましたが、郁雨と金田一京助が最も多額でした。本当に彼のことを理解し愛し助けていたのですね。
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 少し先に行くと立待岬。眼前に津軽海峡、下北半島・津軽半島も遠望できる絶景の地です。そして帰りに山中の道を通って碧血碑へ。途中で函館山要塞物件を見つけました。
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 函館戦争で戦死した旧幕府軍の死体は新政府の命令により、野晒しにされ放置されました。それを無視して柳川熊吉という人物が遺骸を埋葬したのがここです。なお彼はそのために新政府に逮捕されてしまいますが。その後、1875(明治8年)に大鳥圭介・榎本武揚らによって816名を祀るこの碑が建立されました。合掌。「勝てば官軍」という言葉どおり、勝者と敗者の扱いの差に愕然とします。新政府軍戦死者は市内の一等地に丁重に祀られ、旧幕府軍戦死者は山の中。地価にしてどれくらい違うのだろう。でもよく見てください。こんな不便な地にわざわざやってきて花や供物をそえる人がいるのです。護国神社の墓にはその形跡がなかったのに。このあたりは啄木がよく散歩したそうで、「一握の砂」に「函館の臥牛の山の半腹の 碑の漢詩(からうた)も なかば忘れぬ」という歌があります。この碑を見て彼が何を思ったのか… 今回の散歩で小生が思わず合掌したのは、敗者・弱者・犠牲者に対してですね。石原慎太郎ではなく、石川啄木の側に立ちたい。
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 青柳町の啄木住居跡、節子が通った質屋、高田屋嘉兵衛の銅像を見て、再び函館山へ。うんっ、確かに素晴らしい夜景でしたね。日本三大夜景、ようがす、賛成しましょう。でも物凄い混雑で閉口したけど。ロープウェーで山麓駅に降りると、そこには散歩の変人の大敵、天敵、不倶戴天の敵、修学旅行の学生たちが長蛇の列をつくっていました。危ういところだった。
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 夕食はやはりイカを食わねば。目の前でおかみがさばいてくれた新鮮なイカの刺身を堪能しました。
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 本日の二枚は、八幡坂と函館山夜景です。
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by sabasaba13 | 2005-02-24 06:31 | 北海道 | Comments(0)
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