「世間遺産放浪記」

 「世間遺産放浪記」(藤田洋三 石風社)読了。著者の言を引用します。
 「世界遺産」や「近代化遺産」が脚光を浴びる中、社会からはなかなか見向きもされない、これら「世間遺産」たちとの出会いは、筆者自身に強い印象を与えるものばかりでした。長く人の生業やくらしとともにあった、「用の結果の美」としての建築や道具、または庶民の饒舌、世間アートとでも呼びたくなるような不思議な造形の数々… 世間に忘れられた様々な事物の記憶を、感謝とともに心に刻みつつ、昨日を追憶し、明日を考える糧にしたいと思っています。不可思議な、人と地霊の働きを、つくづく思います。
 その言や良し、満腔の意をこめて共感します。私も旅の先々でそうした物件に目を配るようにしていますが、とても著者の足元には及びません。本書はこうした物件の写真集。「建築は働く」「手の土木」「小屋は小宇宙」「近代建築の記憶」「野に立つ迷宮」「壁は擬態する」「積む形、干す文化」「屋根もまた顔」「忘れられた世間人」「フォークな神々」、各章のタイトルを列挙しただけでも、氏の眼力の確かさがうかがわれます。また各物件に添えられたコメントもウィットに富んだすぐれものです。例えば鮎簗についてのコメント。
 屈強な意思を持つこの簗は、獲物の数で評価され、嵐や大雨が来てもちょっとやそっとじゃくずれない。自然の力に備える結果としての無骨のやさしさ。野にある命を寿ぐ、「お命いただきます」という感謝の土木
 ねっ、いいでしょ。本当は素晴らしい写真を何枚か紹介したいのですが、そうもいかないのでたまたま私がでくわして撮影した写真でかえさせていただきます。

 本日の五枚は、段畑(愛媛県宇和島市)、甕の細道(愛知県常滑市)、ホフマン式煉瓦窯(栃木県下都賀郡野本町)、ナマコ壁塗り(静岡県松崎町)、アールデコ風精肉店(岐阜県高山市)です。
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by sabasaba13 | 2008-03-08 07:47 | | Comments(3)
Commented at 2009-10-06 20:59 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 散歩の達人さま at 2009-10-06 21:01 x
詠みました。ありがとうございました。 藤田洋三
Commented by sabasaba13 at 2009-10-10 07:53
 こんにちは。著者の藤田さんからコメントをいただけるなんて、感謝感激雨あられです。次作を楽しみにしております。
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