「日本人の住まい」

 「日本人の住まい 生きる場のかたちとその変遷」(宮本常一 農文協)読了。碩学・宮本常一氏の日本人の住まいに関する考察をまとめたのが本書です。土間と床、門と垣、納戸と寝室、カマドとイロリ、便所と風呂などについて、縦横無尽に楽しそうに語りかけてくれます。一貫しているのは、単なる民家の分析ではなく、いかに民家が変遷してきたか、言い換えると快適な暮らしをするために過去の人々がどのような工夫をしてきたかという視点を失わないことです。これは未来へとつながる視点ですね。私が好きなのはこの一文です。
 私などが旅していて、多くのよい知人をもつことのできたのは、縁側があったからではないかと思います。村を歩いていると、どこかの縁側で二、三人集まって話をしています。そういうところでメソメソしているのを見たことはありません。大抵は朗らかに笑いこけて話しているものです。そういうところへ声をかけるとすぐ話の仲間に入れてくれるものです。そしてそのままその村で話し相手を見つけたうえに泊めてもらうようなこともすくなくありません。もし縁側がなかったらどうであろうと思います。「ごめんください」といって入っていって話を聞くというようなことは、だれかの紹介状でももらって行かなければ、実にむずかしいことです。ところが縁側にはそのような閉鎖的なものはないのです。しかも縁側をもつ民家というのは日本だけではないでしょうか。
 うーん、宮本民俗学を育てたのは縁側だったのですね。そして縁側のない家に平気で住んでいる私たちを見て、氏は何と言うのでしょうか。「コミュニティ」という言葉が跋扈していますが、本気でその再生を望むのであれば、そう、縁側をつくりましょう。
by sabasaba13 | 2008-04-03 09:01 | | Comments(0)
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