「村上ソングズ」

 「村上ソングズ」(村上春樹 和田誠 中央公論新社)読了。作家の村上春樹氏がお気に入りの曲を手ずから訳し、その曲に関する思いのたけを書き綴り、それに画家の和田誠氏が絵をつけた、何とも言えないほのぼの・ほんわかとした雰囲気の(一種の)絵本です。基本的な構成は「ポートレイト・イン・ジャズ」と同じですが、いろいろなミュージシャンへの賛辞である同作に対し、こちらはある一曲についてピンポイントで語られています。よって歌詞=メッセージの読みと、その曲を作った(あるいは歌った)音楽家の紹介と、その曲を生んだ時代背景の解説が、著者と画家の暖かい思いに包まれて渾然一体となっております。氏の音楽に対する造詣の深さと、思いの強さには舌を巻いてしまいます。そして流行に流されずに自分の耳を信じるという軸の確かさと、守備範囲の広さ! 29曲中、私が聴いたことがある曲はわずか「ニューヨークの秋」「ムーンライト・ドライブ」「ブルーに生まれついて」「酒とバラの日々」だけでした。ま、逆に言うと、まだまだ素晴らしい曲にである機会があるということで幸せなのかもしれません。さっそくクラレンス・カーターの「パッチズ」と、「フォン・オッター・ミーツ・コステロ」を購入。しばらくは夜のひと時を楽しめそうです。音楽の素晴らしさは言葉にできないが、そこまで誘うことはできるのですね。あらためて村上氏に感謝です。
 蛇足ながら「散変ソングズ」をあげておきます。氏のような含蓄のある洒落た解説をすることは到底無理ですが、みんなけっこう良い曲ですよ。
胸の振子 (霧島昇)
王将 (村田英雄)
シーズ・リービング・ホーム (ビートルズ)
朧月夜 (作曲:岡野貞一)
唇は黙っていても (作曲:レハール キャスリーン・バトル&プラシド・ドミンゴ)
トランジスタ・ラジオ (RCサクセション)
悪魔を憐れむ歌 (ローリング・ストーンズ)
グッドナイト・サイゴン (ビリー・ジョエル)
詩人の恋 (シャルル・トレネ)
まぼろしの翼とともに (五つの赤い風船)
水玉模様と月の光 (サラ・ヴォーン)
エブリシング・ハプンズ・トゥ・ミー (フランク・シナトラ)
小さな空 (作曲:武満徹 保多由子)

by sabasaba13 | 2008-04-18 06:08 | | Comments(0)
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