京都錦秋編(5):妙喜庵待庵(07.12)

 山崎駅前に戻ると附近に人影が見当たりません。どうやら見学者はわれわれ二人のみ、よかったこれで落ち着いてじっくり拝見することができそうです。格子戸を開けて中へ入ると、老齢の女性があらわれ「ご自由にご覧下さい」と言ってくださいました。小さな庭に下り、建物にそって左に折れると、まるで肩透かしのようにそこに何気なくあるのが待庵です。山崎の戦いの陣中に千利休を招いた秀吉は、二畳隅炉の茶室をつくらせ、その後慶長年間にここ妙喜庵に移されたといわれています。現存する茶室としては最古、そして千利休構想による茶室としては唯一のもの。残念ながら内部へは入れないので、連子窓から覗きこむしかありません。中は漆黒の闇、しかししだいに眼が慣れてくると、造作がおぼろげに浮かび上がってきます。藁すさをだしたシックな塗り壁、掛け込み天井と棹縁天井の変化に富んだ組み合わせ、採光の具合を計算した窓の配置、濃密にして軽やか、二畳という狭い空間の中に千利休の美意識が隅々まで息づいているようです。ル・コルビュジエは「建築家にとっても最も大事な資質は、比例に対する感覚だ」と言っていましたが、そのまごうことなき実例ですね。ここでお茶をいただくとどんな気持ちになるのだろう、という見果てぬ夢にとらわれてしまいました。書院に上がり、ここから待庵への入口を見ると、「壁は茶室の命 さわらないでください」という貼紙がありました。なお写真撮影は禁止です。フラッシュの光で壁を傷つけることはないでしょうが、強烈な光でこの静謐にして奥深い雰囲気を壊して欲しくないというお寺さんの意思だと思います。露出を補正して三脚でカメラを固定して撮影するのも無粋、この措置については理解しましょう。

 茶の湯とはただ湯をわかし茶を点てて飲むばかりなる事と知るべし

 なお下記のサイトで、待庵の写真を見ることができます。

●京都大山崎町HP
 http://www.town.oyamazaki.kyoto.jp/contents_detail.php?co=kak&frmId=1241

●2001インターネット博覧会岐阜県パビリオンHP
 http://www.sengoku-expo.net/tea/J/09-734.html
by sabasaba13 | 2008-05-27 06:06 | 京都 | Comments(0)
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