2006年 04月 08日 ( 1 )

「NANA」

 「NANA(1)」(矢沢あい りぼんマスコットコミックス クッキー 集英社)読了。マンガは好きです。最近の作品では「のだめカンタービレ」や「夕凪の街 桜の国」がいいですね。想像力を働かせる余地が少ないという致命的な欠点はありますが、良質のマンガを読むことはけっこう楽しみです。「NANA」というマンガが、今大変な人気であるという話を山ノ神から聞き、後学のためにさっそく読んでみました。「ナナという、同じ名をもつ2人の少女が繰り広げる、それぞれの、感動の恋のストーリー!!」というPR文が後ろ表紙に載っています。主人公の一人である地方都市出身の小松奈々が、好きな人を追いかけて東京に行く決意をした時の科白です。
 うそすごーい/東京ってこんなにたくさん美大あるんだ/べつに大学がダメでもまた専門学校とかでもいーしあたし

 東京へ行けば/きっとステキな人なんてゴロゴロいるし/おしゃれな店とかいっぱいあるし/スーパー美容師に髪切ってもらえるし/恋も遊びも大充実だ!
 視野や世界や興味関心の対象が、猫の額のように異様に狭いなどと野暮なことは言いません。私の大好きな「スラムダンク」(井上雄彦 集英社)だって、登場人物の脳中にはバスケットボールしかなかったし。ただこの作品は物語の語り口、登場人物の個性の描き分け、そして絵の表現力が抜群に上手く面白いですね。私がマンガを評価する際には、以上三点を重視します。
 さて「NANA」ですが、凡百、凡庸としか言えません。平板な語り口、陳腐な科白、似たような登場人物、そして何より絵がいけない。ぐちゃぐちゃした見にくくリズムのないコマわり、ありふれた人物表現、デッサンの狂い… 実は50ページほど読んだところで、70cmほど投げ飛ばしてしまいました。しかし一マンガファンとして、なぜこのマンガが人気をよぶのか知りたく思い、我慢して、本当に我慢して読了したのですが、結局理由はわかりません。
 傲慢な仮説であることは重々承知の上で言うと、物語や絵を鑑賞する力が欠落している人が激増しているのではないのか。嗚呼、悲劇的な結論ですね、外れていることを心から願います。でも私は自分の鑑賞眼を信じたい、よって第二巻以降は読みません。
 作家の村上春樹が言っていた、オウム真理教の背後には「物語の喪失」という事態があるという言葉を思い出します。今/ここにある現実とは違う、より良く楽しい有様を思い描き想像し多くの人々と共有しようとする営みが「物語」だと思います。もしかしたら「東京で恋と遊びとおしゃれを満喫するのが夢」という現実を直截に代弁しているから、このマンガが人気を集めているのかな。また、小泉政権によって一番酷い目にあわされている/これからあわされる若者たちが、けっこう彼を支持しているという信じられない現実と何か関係があるかもしれません。
by sabasaba13 | 2006-04-08 07:57 | | Comments(0)