2007年 11月 19日 ( 1 )

「ふるさと山古志に生きる」

 「ふるさと山古志に生きる ―村の財産を生かす宮本常一の提案―」(山古志村写真集制作委員会 農文協)読了。2004年10月23日午後6時50分、中越大震災による全村民避難。今、山古志村はどうなっているのでしょうか、そして村の人たちの暮らしは… 本書は、その山古志村のかつての姿と人々の暮らしをおさめた写真集です。奥深い山々にかこまれた景観、棚田、闘牛、錦鯉、そして年中行事の数々。人間の力のできる範囲で、身のまわりの自然を少しずつ変え、未来を信じて暮らしてきた村人たちの息吹が聴こえてきます。そしていつかこの地に戻ってきたいという望郷の想いも。
 そして1978年、人口減少・過疎化に悩む山古志村は民俗学者・宮本常一氏を招いて講演を依頼しました。本書の後半はこの講演の記録です。(実はこちらが目当てで本書を購入したのですが…) 地域の未来を明るくするために学問は資するべきだと考える宮本氏は、時には厳しく、時には優しく、しかし一貫してこの山里への愛情をもちながら獅子吼します。農協の合併、畜産の活性化、釣り客を惹きつける、錦鯉の無料配布、美味しい食材と料理で観光客を呼び込む、などなど地に足のついた具体的な提言が印象的でした。そしてより高い視点からの数々の提言、政府によって奈落の底へ落とされつつある地方にとって今こそ傾聴に値すべき点が多々あると思います。いくつか抜書きしましょう。
この土地の産業を盛んにして、雇用の機会を増やしていく以外に方法はない。
仲間づくりをすること。
「人間とは何だ、人間の幸せとは何だ」というような考える力をもつ。
素性のいい観光客がたくさん来るような村をつくる。
意見をお互いに出しあえる場をつくる、多くの人と交流する、そういう村をつくる。
横へ手をつないで、たえず情報と技術の交流をはかる。その輪を拡げることが大きな力となる。
地元の持っている資源と村の人達の持つ技術を効率よく生かす産業が大事。
頭の中で考えるのではなくして、現実に近い形でもって把握していく。
風景、味、文化、遊び、そして産業といった広い意味での生活の豊かさをもつ。
人に媚を売って、金をもうけようというのではなくて、山古志の人達の生活を豊かにし、その中へ都会の人間を引き入れる。決して自主性を失わず、都会の人間と対等につき合う。そうすることで、もてなしただけのサービス料はいただくことはできるし、多くの情報や知恵も得ることができる。
目的をもった仲間が集まり、お互いに研究しながら新しい方向を見い出していく。その「核づくり」が一番必要。これに対して工場へ勤めて賃金を得るという生活には、生産のための工夫がない。むしろ人の気持ちをバラバラにしてしまう。
 私なりにまとめると“仲間をつくって他者と交流し、土地に足をつけて未来を考える”ということでしょうか。中でも強く深く心に残ったのが、この一文です。「子や孫にどんな形で山古志を残しておいてやるのかを考える」 “山古志”を“地球”と言い換えてもいいですね。この言葉は銘肝しましょう。
by sabasaba13 | 2007-11-19 19:03 | | Comments(0)