2008年 12月 18日 ( 1 )

「偽善エコロジー」

 「偽善エコロジー」(武田邦彦 幻冬舎新書081)読了。いわゆる「地球に優しい生活」は、じつは無駄であり、逆に環境を悪化させ、企業を太らせ、しかも国や自治体の利権の温床となっている、というショッキングな要約が裏表紙にありました。なるほど、この手の歌い文句には常々胡散臭さを感じていましたが、その内実を解明してくれるのかな、と思い購入。著者の武田氏は資源材料工学がご専門ですので、頷かされる部分が多々ありました。例えば、レジ袋は石油の不必要な成分を活用しており、割り箸は端材を使っているので、それらを節約しても意味はないどころかかえってこれまで利用してきた原料が新たな「ゴミ」となってしまう。またペットボトルや食品トレイなどプラスチック製品のリサイクルは技術的に難しく、ほとんどを捨てているのが現状である。リサイクル費用を受け取ってテレビを引き取った家電量販店は、密かにそれを製造した国に輸出し稼ぐとともに、最終的な廃棄物の処理を押し付けている、などなど。
 しかし有害物質や地球温暖化に関する主張には違和感を覚えます。ダイオキシンは人間にとってほぼ無害とされたうえで、イタリアのセベソで起きた工場の事故に言及されています。大量のダイオキシンがこの町に降り注ぎ、そのために中絶をした女性も多かったのですが、その胎児の解剖所見では異常は認められなかったとのこと。しかしデヴラ・デイヴィス氏は「煙が水のように流れるとき」(ソニー・マガジンズ 絶版)の中で、中絶した女性から取り出された胎盤の半数に異常が認められ、柔組織肉腫、非ホジキン型リンパ腫とホジキン病、白血病の疾病率が増加し、また事故後は男子新生児数が減少していると述べられています。地球温暖化については、その防止に真剣に取り組んでいるのは日本だけ、よって全く効果はなくこれを防ぐことは不可能である。おいしいジャガイモが寒い地方でもとれるようになるなど悪いことばかりではないし、そのうち石炭や石油はなくなり温暖化はおさまるだろうから生活スタイルを変えながらじっと待っていればいい、というのが氏の主張です。ここまで楽観視されると、二の句も継げません。
 全体としての結論は、個人の努力では環境の悪化をくいとめることはできないし、それほど事態は深刻なものでもない、だったら心を豊かにして物を大切にしよう、という何とも暢気なものでした。われわれの健康を脅かしている有害化学物質や放射能に関する言及もないし、ところどころに「日本人の誠」という意味不明の言葉がちりばめられているのも不気味です。何のために本書を執筆したのだろう、その意図もわからなくなってきます。うーむ、事態を放置することによって莫大な権益を維持しようとしている側に立つ方なのかなと思い、肩書きを見ると「内閣府原子力安全委員会専門委員」「文部科学省科学技術審議会専門委員」というものがありました。なるほどね。
by sabasaba13 | 2008-12-18 06:21 | | Comments(0)