2011年 09月 07日 ( 1 )

「スウィングガールズ」

「スウィングガールズ」_c0051620_6144516.jpg 今年の夏休みは山形旅行をしてきたのですが、映画『スウィングガールズ』に関する物件といくつか出会いました。山形鉄道の車体には映画のロゴマークが描かれ、車内には登場人物の写真が掲示され、米沢ではロケ地の紹介がありました。以前から見たいと思っていた映画なので、これを機にDVDを購入して鑑賞しました。監督は『ウォーターボーイズ』を手掛けた矢口史靖、2004年公開の映画です。
 舞台は山形県のある高校、落ちこぼれの友子ら13人の女子生徒は、夏休みの補習授業をサボるために、食中毒で入院した吹奏楽部のピンチヒッターに応募します。実はその食中毒の原因は彼女たちがつくったのですけれどね。唯一、食中毒を免れた気の弱い吹奏楽部員・拓雄の指導で、ビッグバンドジャズをはじめた友子らは、次第に演奏の楽しさに目覚め、ジャズにのめりこんでいきます。しかし、吹奏楽部員が退院して復帰したため、あえなくお払い箱にされてしまいました。一時は演奏をあきらめたものの、苦心惨憺・七転八倒・抱腹絶倒の経過を経て、バンドとしてまとまり、東北学生音楽祭に出場しようとしますが… たいへん後味の良い爽やかな映画でした。「こんなに急に上手くなるわけはないでしょ」と茶々を入れたくなる御都合主義なところもありますが、それは小さな瑕疵としておきましょう。ジャズに出会い、その魅力にとりつかれ、みんなで手を取り合って素敵な音楽を奏で、それをたくさんの人に聴いてもらおうという、真向からの速球勝負のストーリー展開には心躍ります。主役を演じる上野樹里のコミカルな演技もさることながら、寡黙で真面目ながらも重要な狂言回しを担う関口香織を演じた本仮屋ユイカがいい味を出していました。登場人物たちの間で飛び交う置賜弁(?)も聞きもの。もともとこの列島には地域だけがあり悠久の歴史を刻んできたのに対して、より強大な経済力と軍事力を効率的に発揮させるために、百数十年ほど前に「日本」という国家がつくられたと考えますが、その地域の歴史と文化が結実したものが方言。国家の力をより過剰にしようとする動きが破綻しかけている今、地域というものを見直す一助として方言は大事だと思います。そして何よりも山形の自然の美しさ! 慈母・厳父のように人々を見守る山なみ、緑の絨毯となす豊饒な田んぼ、雪に覆われた白銀の世界。もちろんさまざまな御苦労があることは承知しておりますが、それでも眼を奪われ心惹かれてしまいました。
 あえて難を言えば、政治や社会に対する批判的視点の欠落です。同様のテーマを扱った映画として『ブラス!』という名作がありますが、そこには"音楽大事だが、人間はもっと大切"というメッセージがありました。手を取り合い助け合いながら音楽を楽しめる人間的な生活を破壊した、新自由主義的政策への痛烈な批判ですね。そういう意味で、彼女たちの後日談に興味があります。高校を卒業し、すぐにあるいは数年を経て社会人となった彼女たちが、このバンドを維持し、音楽を楽しめる暮らしが出来るのかどうか。ぜひ続編をつくっていただきたいものです。
by sabasaba13 | 2011-09-07 06:15 | 映画 | Comments(0)