2012年 02月 12日 ( 1 )

「さよならの言葉」

 先日、朝日新聞を読んでいたら、八神純子が被災地でコンサートを開いたというニュースが載っていました。懐かしいなあ、彼女の名を聞くとすぐに思い出す曲があります。ゆるやかなワルツで、甘くせつなく美しいメロディの曲なのですが、残念ながらタイトルがわかりません。高校生か大学生の頃に耳にして以来、うん十年も心の片隅で微かに鳴り響きつづいている佳曲です。これも何かの縁、調べてみることにしました。たぶん初期の頃であろう、デビュー・アルバム「思い出は美しすぎて」にあたりをつけて、インターネットで順に試聴してみました。…あった。掉尾を飾る「さよならの言葉」という曲でした。作詞・作曲は小野香代子です。
♪それはまるで夢のよう あなたとめぐり逢うたびに だから私はいつだって 何も信じられない♪
 まあ歌詞は何ということもないのですが、そのメロディ・ラインが素晴らしい。ミディアムテンポのワルツに乗って優美なメロディが流れ、ところどころで微かな憂愁が陰りをあたえます。陳腐な表現ですが、"心の琴線に触れる"とはまさにこういうことなのでしょう。そしてその魅力を十全に引き出した、八神純子の見事な歌唱。時として、ねちっこい歌い方が気になる彼女ですが、この曲ではそれが良い方に作用しています。ブレスにさえも聞き惚れてしまうよう。この曲は彼女のためにつくられ、彼女はこの曲を歌うために生まれてきた、そう思ってしまうような奇跡的な邂逅といったら大袈裟かな。「音楽は生活のちりを流す」、アート・ブレイキーの名言ですが、まさのその通り。人を人とも思わぬこの国で暮らしているうちに、心と体にうず高く積もった塵が洗い落とされていくようです。こんな魅惑的な小品に出会うと生きているのも悪くないなあ、という気になってきます。私が感銘を受けた名曲、他にもいくつか紹介しますので機会があったら是非聴いてみてください。「唇は黙っていても」(レハール『メリー・ウィドウ』)、「小さな空」(武満徹)、「エディット・ピアフ賛[即興曲第15番]」(プーランク)、「水玉模様と月の光」(ジミー・ヴァン・ヒューゼン)、「胸の振り子」(服部良一)、「弦楽四重奏曲第2番第1楽章」(ボロディン)。
by sabasaba13 | 2012-02-12 06:17 | 音楽 | Comments(0)