2012年 02月 27日 ( 1 )

青森錦秋編(15):赤沼(10.10)

 バスに乗り込むと、次の停留所が「仙人橋」、下車したのは私一人でした。目の前にあった橋を渡り、欄干に手を当てて佇むと…ほんとだ急峻な上り道が山の斜面を走っていました。案内板もあるし間違いなし。
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 それでは上りますか、途中からタイガーロープが設置してあるので助かりました。ロープにつかまりながら一気にのぼると、後は平坦な道となり、ところどころに案内板もあるので安心して…歩けません! 付近に人の気配はまったくなし、車道からすこしのぼっただけなのに雰囲気は深山幽谷、そう、熊さんと出くわすには格好のシチュエーションです。
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 毛髪辣然肌に粟を生ず、正直、尻尾をまいて逃げ出そうと思いました、いやほんと。うーんどうしよう。いいや、行ってしまえ。基本的に熊は臆病なので、人の気配があると隠れるそうです。人馴れしている熊に出会わないことを祈り、知っているすべての呪文を唱えつつブナ林の中を歩いていきました。「Supercalifragilisticexpialidocious」「臨兵闘者皆陣列在前」「ミカンキンカンサケノカンヨメヲモタセニャハタラカン」「Salaga-doola,menchick-doola,Bibbidi-bobbidi-boo」「ニンドスハッカッカ・マ・ヒジリキホッキョッキョ」「桑原桑原」「寿限無寿限無五劫の擦り切れ(中略)長久命の長助」「Abracadabra」「鶴亀鶴亀」… おっ向こうから犬がやってくる、すわ野犬か、拳を握りしめると誰か歩いてくる。野犬か? するとハイカーらしき人影があらわれました。どうやら彼の飼い犬のようです。「赤沼はこの先ですか」と訊ねると、「そうです」、そして時計を見つめ、「三時を過ぎると急に暗くなりますよ」 現在の時刻は午後二時すこし前、なんとか戻ってこられるでしょう。最近雨は降っていないはずですが、そこかしこに泥濘があります。ブナの保水力をあらためて思い知らされました。ところどころにある倒木を乗り越え、呪文を唱えながら歩くこと二十数分、ようやく赤沼に到着。
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 …一瞬、息を呑んでしまいました。その凄絶なまでの透明度、そして無風のため鏡のような湖面は、色づいた木々や山を完璧に映しています。この世のものとは思えない幻想的な光景にしばし酔い痴れました。付近には高価そうな三脚に高価そうなカメラを設置した方が、三人おられました。きっと雲の動きを待って、格好のシャッターチャンスを狙っているのでしょう。私はもう満足(熊も怖いし)、撤退することにしました。
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 効果があったようなので先ほどの呪文をぶつぶつ唱えながらすたこらすたこら歩いていくと…あれ、最初にのぼった急な上り坂が見当たらない。やばい、道に迷ったか。いやいやこういう時こそ冷静に冷静に…あたりをよく見回すと、歩くところをU字状にくりぬいた倒木がありました。うん、さっきあそこを歩いた覚えがある、倒木をまたぎすこし進むと、助かった、車道へとおりる急な下り道に辿り着けました。タイガーロープをつかみながら慎重におりて仙人橋に到着。やれやれ、これで熊さんとご対面しなくてすみました。バス停留所の近くには、「※注意 早めの下山をしましょう 熊も出るぞ」という立て看板。わかってまわかってま。
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 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2012-02-27 06:21 | 東北 | Comments(0)