2013年 01月 19日 ( 1 )

山形編(44):酒田(11.8)

 それでは北前船にご対面をしにまいりましょう、わくわく。酒田海鮮市場のすこし先にある埠頭に、国内最大級の復元和船「みちのく丸」が停泊していました。東日本大震災復興支援事業として、鯵ケ沢・深浦→小樽→美保関・境港・安来→小浜・三国→金沢→伏木→新潟→酒田→秋田と回航しているそうで、たまたま偶然、酒田に寄港している機会にめぐりあえたわけです。神の愛せし者よ! めったにお目にかかれないものだけに、かなり多くの方々がつめかけていました。それでも行列に並ぶこと数分で乗船することができました。なおお代は無料です、深謝。まずはいただいたパンフレットで北前船について紹介しておきましょう。江戸時代の中期から明治時代にかけて海運の主役となった船が、帆走性能に優れ、頑丈でたくさんの荷物を積むことができ、価格も安く造りやすい「弁才(べざい)船」です。その特徴は、「水押(みよし)」と呼ばれる船首の大きな水切り、中央の長い帆柱と一枚帆、船尾の大きな可動式の舵です。米を千石(約150t)積めるということで、一般の人は「千石船」と呼んでいました。弁才船は、船形から「上方型」と「北前型」に分けられます。上方型は、おもに江戸と大坂との短距離を行き来し、スピードを重視したためスリムな船形になっており、「菱垣廻船」「樽廻船」とも呼ばれます。北前型は、おもに蝦夷地(北海道)や東北と江戸、大坂の長距離を行き来し、荷物をたくさん積めるよう、船首と船尾を大きくした肥満形の船形をしています。みちのく丸は、この北前型弁才船、いわゆる「北前船」ですね。
 まずは外観をしげしげと拝見。いいですねえ、剛毅木訥、質実剛健、武骨な表情の中に、そこはかとない暖かさと優しさを感じます。女優で言えば根岸季衣。ぼってりとした肥満体型は他とても人様とは思えません。弟よ(たぶん)!と抱きしめようとしましたが、腕がまわりきらずに断念。そして船内へ、一切の無駄な部分をはぶき、最大限の積載量を確保しようとしているのがよくわかります。
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 しかしいくら頑丈に作っているとはいっても、荷物を満載して航行中に嵐にでくわしたら…と想像するだけでも身震いします。"板子一枚下は地獄"という物言いをひしと実感しました。なおこの商売は、蝦夷地や東北で大量の米や品物を積み込み、各寄港地で売り買いするというもので、その商法は「北前稼ぎ」といわれ、一回の航海で千両(一億円)も儲かったそうです。でも船が難破して船荷を失えば一巻の終わり。ちなみに上荷は、縄・蓆・俵・古着・雑貨、中荷は綿・煙草・紙類・反物・塩・砂糖・穀類・米、バラスト代わりの底荷は酒・醤油・味噌・油・屋根瓦・石材。ふと思ったのですが、人間が生きていく上で必要な物ばかりですね。必要以上の物を大量に作って無理やり売り捌き莫大な利潤を手に入れようとした時から、世界はおかしくなったのではないでしょうか。ここで自分の頭と言葉で物事をきっちり考える、わが敬愛する橋本治氏の「日本の行く道」(集英社新書0423C)という本を思い出しました。氏曰く、「金をあちこちに動かして儲ける」「需要がなかったら、そこに需要を作り出してでも商品を売る」「必要か不要かを無視して"ほしい"と思ったものはどんどん買う」という原理原則が世界を経済戦争に巻き込み、それを危険でおかしなものにしている。これに対して江戸時代は、工場制手工業によって最低限の需要を満たす「自分のところでいるものは自分のところで作る」経済であり、また「さらによい物を作ろうとする職人・職工のレベルの高さ」とあいまって、社会を安全で穏やかなものにしていたと述べられています。そろそろ私たちは、世界的な規模で加害者と被害者を再生産する経済戦争や、地球を壊し続ける大量生産から手を引き、堅気で真っ当な江戸時代的な経済から多くのことを学ぶ時が来ているのでは、というのが著者の提言です。"「世界中がオタク化する」よりも、「世界中が江戸時代化」する方がましのような気がします"(p.131) あらためて、みんなの暮らしを支えた大事な品々をせっせせっせと運んだ北前船とその船乗りのみなさんに敬意を表します。舳先に立ち山ノ神を前に抱いてタイタニック号ごっこをしながら、♪うなれ潮風さかまけ怒濤行こうのりだせ七つの海へ♪と唄おうとしましたが、係員に制止されそうなのでやめました。なお意識したわけではないのですが、気がつくと北前船の寄港地をけっこう訪れてきました。下津井尾道竹原室積、小浜、三国、輪島、伏木、秋田十三湊三厩青森田名部箱館などですが、いずれも風情のあるいい港町でした。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2013-01-19 08:27 | 東北 | Comments(0)