2013年 01月 31日 ( 1 )

九州編(8):明正井路・円形分水(11.9)

 十数分走ると、道路の上を横切る連続アーチの大きな石橋が見えてきました。車を停めてもらい近くに寄ってしげしげと見上げましたが、これは凄い。まるでローマ帝国がつくった水道橋の如き偉容です。これが噂の明正井路ですね。
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 後日に購入した『日本の土木遺産 近代化を支えた技術を見に行く』(土木学会 講談社ブルーバックス)によると、緒方川上流に取水口を設けた灌漑用水路で、明治~大正年間にかけて計画・建設されました。水路幹線の総延長は約48km、約498ヘクタールの広大な農地を潤しています。なお水路の延長上には多くの川や谷があるため、大小合わせて17基の水路橋が建設され、その一つがこの明正井路です。全長は78m、橋幅は2.8m、高さは13mの六連石造アーチ橋で、日本国内では最大のもの。かなりの難工事だったようで、設計に従事していた矢嶋義一技師が心労のあまり健康を害し自ら命を絶つという事件も発生したそうです。より多くの田んぼに水を潤し、地域の末来のため、子々孫々のより良い暮らしのために心血を注いだ先人たちの努力に心から頭を垂れましょう。技術や科学は、このように人間の為に使われるべきだとつくづく思います。そういえば、ベルトルト・ブレヒトもそんなことを言っていたような記憶があります。個人的に蒐集した名言集に検索をかけると…あったあった。「私は科学の唯一の目的は、人間の生存条件の辛さを軽くすることにあると思うんだ」 『ガリレイの生涯』の中に出てくる台詞ですね。もう一つひっかかったのが、「ひとりの男が節を屈することをしなかったら、全世界を震撼させることもできたはずだった。私が抵抗していたら、自然科学者は、医者たちの間のヒポクラテスの誓いのようなものを行なうことになったかもしれない。自分たちの知識を人類の福祉のため以外は用いないというあの誓いだ! …私は自分の職業を裏切ったのだ。私のしたような事をしでかす人間は、科学者の席を汚すことはできないのだ」というもの。多くの人々を犠牲にしながら、権益や栄達のために原発開発に邁進してきた学者の方々に叩きつけたい言葉です。
 そして十数分走ると、円形分水に到着です。緑なして風に揺れる穂波の真ん中に、滾々と湧き出る水を四方へと円形の枠、そこには二十個の四角い穴が穿たれています。いま着陸したばかりのUFOにも見える何とも摩訶不思議な造形です。
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 解説によると、正式な名称は十二号分水で、取水口から約2000mの暗渠を通ってきた水がはじめて地表に出てくるところです。ここから三つの幹線水路に分配されますが、その分配をめぐって農家の方々が反目し合い、連日のように水争いが繰り返されたそうです。そこで1934(昭和9)年にこの円形分水をつくり、公正な水の配分を行った結果、争いもなくなったとのこと。ちなみに農地面積に応じて、二十個の穴を、5:8:7に分けて配水しています。1934年といえば、直前に昭和恐慌というどん底の不景気があった時代、生死を賭けた争いがあったことと想像されます。それを、誰もが一目瞭然に納得できる方法で解決した先人の智慧には感服。いつの日にか、世界に溢れる富もこのように公正に分配されれば、いいのになと思います。♪You may say I'm a dreamer. But I'm not the only one♪

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2013-01-31 06:16 | 九州 | Comments(0)