2014年 01月 29日 ( 1 )

イタリア編(62):コルティナ(12.8)

 そして石橋を叩いて渡る、転ばぬ先の杖、バス会社の窓口で帰りのヴェネツィア行きのバスの切符を購入しておきました。ちなみに一日に一本のみ、15:15に出発です。それでは今夜の塒、Splendid Hotel Veneziaへと参りましょう。JTBがくれた地図と案内標識を頼りに歩いて数分で着くことができました。チェックインをして部屋に行きすぐさま窓を開けると、残念、マウンテン・ビューではありませんでした。通りに面しているので向かいのホテルや建物が視界を遮ります。
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 それでは町の中心にくりだしてインフォメーションで情報を収集し、ロープウェイでファローリア山にのぼることにしましょう。町を貫く目抜き通り、コルソ・イタリア(Corso Italia)までは歩いて数分、なるほど"ドロミテの真珠""黄金の盆地"と呼ばれるわけがよくわかりました。谷底に位置しているため、周囲を囲むドロミテの雄渾にして魁偉な山々を手に取るように眺めることができます。通りは歩行者天国となっている石畳の道で、左右には華やかなブティックが建ち並んでいました。
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 そしてiへ、これからの三日間をどう使うか相談してみようと思います。腹案として抱いていた訪問先は、トレ・チーメ(三本の爪のような巨岩)+ミズリーナ湖(♪森とんかつ…♪のような湖)、およびアルペ・ディ・シウジ(広大な丘陵)です。前者についてはツァーの有無、後者についてはタクシーの利用について伺いましたが、iの優しい女性担当者は、トレ・チーメとミズリーナ湖についてはバスで簡単に行ける、また高額のタクシー料金と時間を要するアルペ・ディ・シウジよりは、チンクエ・トッリ(五つの巨岩)の方が良いと教えてくれました。そしてコルティナからロープウェイでのぼれるトファーナ山からの素晴らしい眺望を楽しみ、午後は町の周辺をハイキングしてはいかが、という助言。"少しのことにも、先達はあらまほしき事なり"(徒然草第52段)、そのプランに乗りましょう。そして行き方を懇切丁寧に教えてくれ、バスの時刻表もくれました。ディスプレイを借りてお礼を申し上げます、ほんとうにありがとうございました。なおiでロハでいただける「Cortina HIKING MAP」と「コルティーナ・ダンペッツォ ガイドブック(日本語版)」は絶対に入手しておくべきです。前者は、コルティナ周辺の正確無比な地図にさまざまなハイキング・コースが記されているもので、言葉では言い尽くせないほど重宝しました。おまけにコースの難易度も、"Easy paths""Medium difficulty paths""Difficulty paths""Fixed rope and laid routes"(伊語・英語・独語)と四種のわかりやすい線で記されており、さらにコースの特徴も"Waterfalls & Alpine lakes""History & legends""Trail Running"と、三種類に色分けされた登山家のピクトグラムで示されています。
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 これはもう感動すら覚えました。「英国人にとっての地獄は、ドイツ人が警官をし、スェーデン人が喜劇役者で、イタリア人が国防軍を組織、フランス人が道路工事をして、スペイン人が列車を走らせる」というジョークがあるそうですが(日本人が政治家・官僚・CEOを務める、と付け加えたいところですね)、ついついイタリア人はずぼらでいいかげんだという先入観が国際的にも、そして私にもあります。ま、たしかにそういう面もあるのでしょうが、この地図を見ると、仕事は適当でも人生を楽しむことにかけては妥協しないぜ、という心意気を感じます。ジョットやマザッチョやミケランジェロを生んだ土壌はこんなところにあるのかもしれません。そういえば、『あしたはアルプスを歩こう』(講談社文庫)に書いてあったのですが、角田光代さんの山岳ガイドを務めたルイージ・マリオさんは、エスプレッソの道具やワインのボトルをかついで山に登り、休憩の時に美味しいエスプレッソやワインをふるまってくれたそうです。彼女曰く…
 イタリア人ってなんかすごい。このとき私は密かに思った。あの雪山では本格的なエスプレッソだったし、この渓谷ではワインである。エスプレッソもワインも、道具もボトルもかさばるし重い。それでも持ってくる根性がすごい。インスタントですまそうとか、ワインは我慢しようとか、近道的な発想がないのだ。おいしいものを味わうためには、ひとときの安らぎを得るには、まるで労を惜しまない。
 私は三月に旅したイタリアのことを思い出した。あのとき感じた、ぴくりとも揺らがない文化や芸術の重さを思い出した。エスプレッソ道具を持ちワインのボトルを何本もナップザックに忍ばせてなんでもなく山を登るマリオさんを見ていたら、あの揺るがなさ、重さは当然だろうと思えた。
 他国と比較して我が国の欠点をあげつらうことを私は好まないが、けれど、なんでも便利にしようとし、楽をしようとし、近道を好む私たちの国民性を少しだけもったいなく思った。私たちも茶道具を持って山を登るべきなのだ。一升瓶をかついで乾杯をするべきなのだ。さすれば文化は揺るがない。目に見えないものが重さを持つ。(p.61~2)
 文化とは守るものではなく、そうせずにはいられないもの、それなしでは人生が味気なくなるものなのかもしれません。やたらと愛国心を怒号し強要する方々にかみしめてほしい一文です。

 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2014-01-29 06:21 | 海外 | Comments(0)