2014年 02月 03日 ( 1 )

『(株)貧困大国アメリカ』

 『(株)貧困大国アメリカ』(堤未果 岩波新書1430)読了。『ルポ貧困大国アメリカ』『ルポ貧困大国アメリカ2』(岩波新書)と続くシリーズの完結編です。この二書は読みたいなと思いつつ結局いまだ手にしていないのですが、縁あって本書を先に読んでしまいました。アメリカの属国・日本の末来を考える上で、やはり本家本元のアメリカが今どうなっているのか知ることが必要でしょう。一読、腰が抜け肌に粟が生じました。ここまできているのか… 人々の食卓、街、政治、司法、メディア、人びとの暮らしが音もなくじわじわと巨大企業に蝕まれてゆく様子が手にとるようにわかりました。アメリカという国家が巨大な株式会社となり、国民を使い捨て貧困に追い込みながらひたすら利潤を追求していく。いくつかその実例を紹介しましょう。
 アメリカ政府が低所得者層や高齢者、障害者や失業者などに提供する食料支援プログラムを、SNAP(Supplemental Nutrition Assistance Program=補助的栄養支援プログラム)と言います。以前は「フードスタンプ」と呼ばれていたものですね。クレジットカードのような形のカードをSNAP提携店のレジで専用機械に通すと、その分が政府から支払われるしくみです。しかしこのシステムが助けているのは困窮している人びとではなく、SNAPの売り上げが入る食品業界と、SNAPによる偏った食事が生む病気が需要を押し上げる製薬業界、SNAPカード事業を請け負う金融業界の三者なのですね。(p.11)
 ブッシュ(子)政権が成立させた〈落ちこぼれゼロ法〉では、生徒たちの点数が上がらなければ国からの予算が出ないだけでなく、その責任が学校側と教師たちにかかります。貧困家庭の生徒を多く抱えるデトロイトの公立学校では平均点が上がらず、教師たちが次々に解雇され、学校は廃校になりました。公立学校がつぶれると、すぐにチャータースクール(Charter School=営利学校)が建てられます。銀行家や企業が経営するチャータースクールは、七年で元が取れることから、投資家にとって魅力的な商品なのですね。ただし公的なインフラではなくあくまでも教育ビジネスなので、高い授業料を払えるだけの経済力と一定以上の学力が要求され、デトロイトでは教育難民となった子どもたちが路上にあふれました。そして失業した教師たちは州を出るか、食べていかれずにSNAPを申請することになるわけです。(p.173)
 また刑務所も割りの良い産業となっています。刑務所を運営する企業、囚人を低賃金で働かせられる企業、コスト削減をしたい自治体議員の利害がぴったりと一致するわけですね。そのため、刑務所人口を増やすため、刑の重さに関係なく三回目で自動的に終身刑になる〈スリーストライク法〉や、刑期の85%を終えるまで仮釈放させない〈真の刑期法(Truth in Sentence Act)〉、学校側があらかじめ規律と懲戒規定を明示して、それに違反した生徒を例外なく処分する〈ゼロ・トレランス法〉などを成立させた州も増えています。(p.224)

 "巨大化して法の縛りが邪魔になった多国籍企業は、やがて効率化と拝金主義を公共に持ち込み、国民の税金である公的予算を民間企業に委譲する新しい形態へと進化した"というのが堤氏の分析です。(p.273) ロビイスト集団が、クライアントである食産複合体、医産複合体、軍産複合体、刑産複合体、教産複合体、石油、メディア、金融などの業界代理として政府関係者に働きかけ、献金や天下りと引きかえに、企業寄りの法改正で、"障害"を取り除いてゆきます。そして国民の主権が不適切な形で政治と癒着した企業群によって、合法的に奪われていきます。いま世界で起きている事態は、単なる新自由主義や社会主義を超えた、ポスト資本主義の新しい枠組み、「コーポラティズム」(政治と企業の癒着主義)の進行です。
 そしてこうした政策が大きな反対もなく進められたのは、「ショック・ドクトリン」という手法によるものだと、堤氏は述べられています。ショックを与え、あるいはショックに乗じ、人びとを思考停止状態にさせる、あるいは分断させるというやり方です。以下、引用します。
 それはまさにきめ細かく計算された、若者向けのショック・ドクトリンだった。アメリカ経済破綻という恐怖をあおり、世代間格差を強調して若者の被害者意識を高齢者に向ける。ただでさえ生活が苦しい若者たちの怒りの矛先は、アメリカの過度な二極化を作りだしている「1%」とそれを後押しする株主至上主義政策からそれてゆく。若者の未来を食いつぶしている犯人は、貴重な税金でのうのうと保護されている高齢者とメディケア(低所得者用公的医療)に摺り変わった。(p.251~2)
 世界は1%(富裕者)と99%(その他大勢)に二極化していると考えた方がいいのかもしれません。そして敵は中国でも韓国でも北朝鮮でもなく、世界中に点在する1%なのだと。その1%が最も恐れているのは世界中の99%が団結することでしょう。だから1%および彼らと癒着する政府は、ナショナリズムやイデオロギー、宗教の違いなどを煽って99%を分断させようとするのでしょう。「その手は桑名の焼き蛤」と言えるよう、知性を磨くことが大切ですね。植木枝盛の至言を唱えながら。"疑の一字を胸間に存し、全く政府を信じることなきのみ"
 さて安倍伍長、あなたは1%と99%のどちらに与するのですか。ま、所信表明演説(2013.2.28)のなかで「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指します」とのたまわったのですから、お里は知れてますが。それなのに、支持率はいまだ50%のようで、いやはや冷汗が背を湿します。
by sabasaba13 | 2014-02-03 06:18 | | Comments(0)