2015年 08月 25日 ( 1 )

『京都 秘蔵の庭』

 『京都 秘蔵の庭』(写真:水野克比古 文:小埜雅章 光村推古書院)読了。昔からお庭を見るのは大好きで、旅行先では有名無名の庭園をできる限り訪れるようにしてきました。不惑を過ぎた頃からは、多少の知識と経験も身につき、庭師の意図にも気を付けるようになりました。また小川治兵衛(植治)重森三玲といった、卓越した庭師を知ることができたのも喜びです。次回の京都旅行を計画している時に、ある本で紹介されていたのが本書です。「秘蔵」というからには、あまり知られていないお庭も紹介されているのかなと期待してインターネットで購入。期待どおりの素敵な写真集でした。まずは写真が素晴らしい。紅葉や桜にこだわらず、そのお庭が一番良い表情を見せてくれる時を的確に撮影しています。新緑の頃が多いかな。選んだ庭も、宮廷の庭、茶家の庭、神社の庭、寺院の庭、別荘庭園、料理旅館の小庭とバラエティに富んでいます。桂離宮や孤篷庵といった超弩級の大物から、大聖寺本堂庭園や岡崎つる家庭園といった名もなく貧しく(?)美しい脇役まで、さまざまな佇まいのお庭が紹介されていて、ページをめくるたびに「眼福」と囁きたくなります。寝る前に一献傾けながら本書を紐解き、やがて睡魔の懐に抱かれれば良い夢を見られること必定。
 また短いけれども、専門家の眼から見た的確な解説もたいへん参考になりました。一見さんの素人にはまずわからない庭園の構成を、よく理解することができます。例えば…
表千家/不審菴露地 [上京区]
茶庭の鑑賞上、飛石の据え様は大きな景色の一つである。不審菴露地の飛石で気付く点は、飛石本来の導線とは別にやや逸れて小ぶりの飛石を遊びに置くことである。踏石手前の二番石の左側がそうであるし、さらに四石ほど手前の刀掛に至る飛石にも同手法が見られる。飛石が小さいゆえに歩行に余裕をもたせるためとも考えられるが、むしろ実用よりも景を重視した結果ではないか。目的地に向かうだけの単刀直入な線構成を、余分の一石を置くことによって面的に広げて曖昧とし、苔地平面とのなじみをよくしているのである。不審菴躙口の二番石の遊び石は、表流の露地にはよく見受けられる。(p.19)
 「据え様」「景色」「導線」「遊び」「景」「なじみ」といった庭に関するジャーゴンもたくさん知ることができました。これで、今までよりも深く庭を語ることができるようになれそうです。
 お値段は3800円と少々張りますが、元が取れること請け合い。お薦めです。次の京都旅行では、正伝永源院と紫織庵中庭を訪れてみようと思います。
by sabasaba13 | 2015-08-25 06:32 | | Comments(0)