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都議会選挙での自民党の惨敗、「御慶」と叫びたいですね。これで憲法改悪の野望も潰えたかと思いきや、安倍上等兵は往生際も悪く諦めていないようです。それを頓挫させるためにも、多くの方々に(特に若い人に)憲法について考えてもらいたいものです。そもそも憲法とは何か? 無知な私の蒙を啓いてくれたのが、小室直樹氏です。『痛快! 憲法学』(集英社インターナショナル)から引用します。
一人の犯罪者ができる悪事より、国家が行なう悪事のほうがずっとスケールが大きいのです。…憲法とは国民に向けて書かれたものではない。誰のために書かれたものかといえば、国家権力すべてを縛るために書かれたものです。司法、行政、立法…これらの権力に対する命令が、憲法には書かれている。国家権力というのは、恐ろしい力を持っている。警察だって軍隊だって動かすことができる。そんな怪物のようなものを縛るための、最強の鎖が憲法というわけです。(中略)また最近、『転換期を生きる君たちへ』(晶文社)を読んでいて、岡田憲治氏の一文にも出会えました。 憲法は、学校の校則を偉くしたみたいなものだと、いい歳をした多数の大人がひどい勘違いをしているので言っておくが、憲法とはそんなものでは断じてない。はい、よくわかりました。国家という恐るべき怪物を縛る鎖、それが憲法です。よってその怪物が憲法を変えようとしたら要注意、どう考えても暴れるためにその鎖を緩めようとするのは目に見えていますから。自由民主党の改憲案を読めば一目瞭然です。この緊要な本質を理解せず、「押し付けられたから」とか「一度も改正されていないから」とか「時代遅れ」とかいう安直な理由で改正に賛成する方がいることに危惧を覚えます。繰り返しますが、重要なのは、怪物を縛る鎖を、緩めるのか締めるのかという点です。 ぜひ多くの方々に日本国憲法全文を読んでいただき、その重厚な鎖の質感を感じてほしいのですが、取っつきにくいと思われる方も多いでしょう。そうした方にお薦めしたいのが、『日本国憲法を口語訳してみたら』(幻冬舎)です。法学部学生だった塚田薫氏が、「憲法って何?」という友人の質問に「こんな感じ」と答えたのが好評となり、それを「2ちゃんねる」に書き込んで大きな反響を呼びました。その内容を一冊にまとめたのが本書です。いくつか紹介しましょう。なお括弧内の斜体が原文です。 第17条 俺たちは、もし国や公務員がちゃんとした理由がないのに、俺たちの権利を侵したら、国とか公的なとこに、その補償をしろって要求できるよ。うわお、これはお見事。ざっくばらんな親しみやすさ、スピード感と力強さが素晴らしい。何よりも国家に対する「上から目線」が、びしびしと伝わってきます。国家権力に対して「~するなよ」「~に逆らうなよ」「~を守れよ」という小気味のよい命令が、フリッカー・ジャブのように次々とくりだされる爽快さ。ぜひ多くの方々が読み、鎖の重要性を実感し、そして原文を読み、憲法改正の国民投票がもし行われた際には参考にしていただきたいと思います。 余談です。自民党の改憲案では、第97条はそっくり削除され、第36条からは「絶対に」という文言が削除され、第99条には「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」という文言が追加されています。語るに落ちるとはこのこと、彼等の考える憲法とは「国民を縛る鎖」なのですね。また第21条には次の条項が追加されています。 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。この改憲案全体の主語が、国民ではなく、国家権力を行使する官僚・政治家であるという印象を強く受けますが、これもそうですね。口語訳してみましょうか。 表現の自由は認めるけど、俺ら官僚・政治家に損をさせ、俺らの顔にドロをぬるようなことはさせないし、そんなことをするグループはつぶすぜ。誰か自民党の改憲案全文を口語訳してくれないかなあ。そして本書と読み比べれば、その違いがいっそう鮮明になると思います。 ▲
by sabasaba13
| 2017-07-15 06:19
| 本
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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