2017年 11月 23日 ( 1 )

関東大震災と虐殺 39

 10月10日、亀戸事件が初めて公表されましたが、軍隊の行為は戒厳令下の行動として当然のこととされました。自由法曹団の布施辰治、山崎今朝弥両弁護士らは事件の真相を追及して司法権の発動を要求し、南葛労働会や総同盟は糾弾運動を行い、小牧近江、金子洋文らの種蒔き社は、自由法曹団が作成した資料に基づいて殉難記『種蒔き雑記』を発行したが、いずれも黙殺されました。(スーパーニッポニカ[小学館])

 10月初旬から11月下旬にかけて、「在日本関東地方罹災同胞慰問班」が虐殺された朝鮮人犠牲者の調査を行ないました。調査目的を表に出すと警視庁が許可しないので、罹災同胞慰問を名目にしたのですね。しかし日本治安当局の朝鮮人死体隠蔽政策のために調査は困難を極めました。調査に携わった韓目見相氏は、戦後にこう証言されています。
 いかに調査団が綿密に調査したことだったが、震災から既に二箇月を経過していたし、「鮮人騒ぎ」が全く事実無根のデマ(官製の)ために起きた日本の失態であることが明白となり出したので、不幸失脚の同胞の死体を隠ぺいして証拠いん滅を(官の指令で)してしまったことがあるので、なかなかその実数は正確を期することが、できるものではなかった。(④p.86)
 その調査結果によると、朝鮮人犠牲者の数は6,661人でした。(①p.288~9) 参考までに、司法省調査書では233人、内務省警保局の調査では231人となっています。(①p.230)

 10月20日、司法省が朝鮮人の犯罪を発表しました。それに先立ち、『国民新聞』(1923.10.1)でその趣旨をこう説明しています。
 一般鮮人は概して純良であると認められるが、一部不逞の輩があって幾多の犯罪を敢行し、その事実が喧伝せらるゝに至った結果、(中略)往々にして無辜の鮮人、内地人を不逞鮮人と誤って自衛の意味を以て危害を加える事犯が生じた。
 ブラーボ。ここまで卑劣で人を愚弄する作文にはなかなかお目にかかれません。眼福眼福。朝鮮人による暴動・放火は事実あった、よって官憲の流布した情報は流言ではなく責任を問う必要はない。自衛のための殺人だったのだから、軍隊・警察・自警団による虐殺の責任を問う必要もない。内地人(日本人)も殺されたのだから、朝鮮人への差別意識によるものではない。そういうわけですね。
 つまり朝鮮人による凶悪な犯罪があったと証明すれば、国家権力・民衆の責任は免れることができます。それでは司法省の発表を見てみましょう。まず強盗・放火・強姦・殺人・毒殺予備などの罪を犯した朝鮮人は約120名で、ほとんどの氏名は不明。氏名がわかっている者4名は、所在不明あるいは逃亡あるいは死亡。強盗、爆発物取締罰則違反などによる容疑者は3名で、取調べ・予審・公判の最中。もちろん判決は確定していないので犯罪者ではありません。窃盗・横領などの容疑者は16名ですべて氏名はわかっていますが、これは軽犯罪です。
 よってここに発表された朝鮮人の「犯罪」は架空のもので、国家や民衆の責任を隠蔽するために捏造したものと言わざるを得ません。(④p.82~4)

 11月7日。中国政府による、王希天および中国人虐殺を調査する特別委員派遣の決定を受けて、山本権兵衛内閣はこの事件を徹底的に隠蔽する方針を決めました。(⑩p.169~73)

 12月26日、帝国議会衆議院本会議で議員永井柳太郎は、内務省警保局長や埼玉県内務部長などの官憲が朝鮮人が暴動を起こしたという流言を発した証拠を挙げて朝鮮人虐殺の国家責任を追及し、政府は遺憾の意を表する意思はないのかと詰問しました。すると山本権兵衛首相は、「政府は起こりました事柄に就いて目下取調べ進行中でござります」と発言して、謝罪を回避しました。
by sabasaba13 | 2017-11-23 09:38 | 関東大震災と虐殺 | Comments(0)