2017年 11月 30日 ( 1 )

関東大震災と虐殺 42

 そして周知のヘイトスピーチ。「ヘイトスピーチ 言葉の凶器」(朝日新聞 2014.12.14)という記事を紹介します。
 各地で繰り返されるヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)で、中傷の対象にされている在日コリアンはどう感じているのだろう。東京のNPO法人が関西在住の16人から聞き取り調査したところ、在日の人々が心の傷を受けている実態が浮かび上がった。「日本社会が変わってしまった」と戸惑う人も少なくない。
 調査したのは弁護士や研究者ら700人超でつくるNPO「ヒューマンライツ・ナウ」。メンバー7人が4~7月、個別に面談して体験を聞き、11月にまとめた。
 10代の女性は、ネットでヘイトスピーチの動画を見ても「別世界のこと」と感じていた。街頭で初めて目にした時、衝撃を受けた。話し合おうと参加者に声をかけると、「あなたはこの国に必要ない。帰ってください」と言われた。
 50代の男性は、大阪・鶴橋で昨年2月にあった街頭宣伝を動画サイトで見た。中学生くらいの少女が拡声機で「鶴橋大虐殺を実行しますよ」「いい加減帰れー」と叫んでいた。「吐き気がした」。この街宣を現場で見た別の50代男性は「存在が否定されたと思い、心臓がドキドキした」「(朝鮮人虐殺が起きた)関東大震災が頭をよぎった」と振り返った。社会の空気の変化を感じ取る人もいた。30代女性は、飲食店で隣のテーブルから「ヘイト的言動」が聞こえてきて、ビクッとすることがある、と語った。「目撃しているのに(市議会)議員は何も言わず、笑っていた」(別の30代女性)など、社会が黙認していると不信感を抱く人もいた。
 子どもへの影響を心配する声も目立った。50代女性は、帰宅した中学生の息子が「早く大人になって帰化する」と話した体験を明かした。コンビニ店に買い物に出かけた際、デモを目にして衝撃を受けた様子だったという。調査に協力したNPO「コリアNGOセンター」(大阪市生野区)にも「小学生の子どもから『朝鮮人ってあかんことなん』と聞かれた」という母親からの相談などが寄せられている。在日3世の金光敏事務局長(43)は「世情が変わったと感じている人は多い。特に子どもを持つ親は『社会は助けてくれず、自分たちで守るしかない』と悲壮な覚悟を迫られている」と話す。
 街宣によるヘイトスピーチは関西にとどまらない。横浜市在住の在日3世の徐史晃さん(34)は5年前、東京・銀座で永住外国人の地方参政権を求めるデモ行進をしていた時、200人ほどの集団からヘイトスピーチを浴びせられた。顔のすぐそばで「朝鮮人は帰れ」「死ね、殺せ」と繰り返された。「ここまで言われるものか。もうやめてくれ」と思ったが、目をそむけて反論できなかった。「日本社会でどうやって生きていけばいいか、深い絶望感にとらわれた」
 また朝日新聞デジタル(2016.9.9)に、下記のような記事がありました。
 横浜市教育委員会が、独自に発行する中学生向けの副読本から、関東大震災直後に起きた朝鮮人虐殺についての記述をなくす方向で検討していることがわかった。研究者らは「史実をないがしろにしている」などとして9日、市教委に内容の変更を申し入れた。
 市民団体「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」が、今年度中に発行予定の副読本の原稿案を情報公開請求したところ、関東大震災の説明のうち、朝鮮人虐殺に関する記述がなかったという。
 横浜市の副読本をめぐっては、2012年度版の「わかるヨコハマ」で、関東大震災時に自警団以外に軍隊や警察も「朝鮮人に対する迫害と虐殺を行い」と盛り込まれたことについて、一部の市議が反発。市教委は「表現などに誤解を招く部分があった」として12年度版を回収した。13年度版からは「虐殺」の表現が「殺害」に変更され、軍隊や警察の関与についての記述も削除された。
 朝鮮人虐殺を研究する山田昭次・立教大名誉教授ら約70人の研究者は9日、連名で要望書を市教委に提出した。山田名誉教授は「虐殺は学問的にも証明されている。子どもたちに歴史からの教訓をきちんと伝えるべきだ」と話した。
 市教委は朝日新聞の取材に対し、「副読本の内容については編集中であり、答えられない」としている。
 現在にいたるまで、歴史的事実を隠蔽しようという動きがあるのですね。とくに、"自警団以外に軍隊や警察も「朝鮮人に対する迫害と虐殺を行い」と盛り込まれたことについて、一部の市議が反発"という点が興味深いところです。国家権力の犯罪や卑劣さを隠蔽し、その権威を擁護しようということでしょうか。その市議たちにしてみれば、自分たちの権威の支えとなる「国家」のオーラに瑕疵がついてはまずいという意識があるのだと思います。

 これが日本だ、わたしの国だ… 絶望から始めるしかありませんね。

 追記。しかし幸いなことに、同年10月7日に、虐殺の史実を記載する方針が決定されました。『神奈川新聞』(2016.10.7)から引用します。
 横浜市教育委員会が作成中の中学生向け副読本の原案で関東大震災時の朝鮮人虐殺の記載がなかった問題で、同市教委は7日、虐殺の史実を記載する方針を明らかにした。同日の市教委定例会で報告した。
 新副読本作成を担当している指導企画課の三宅一彦課長は「横浜で起きた痛ましい出来事を学ぶことで歴史の理解を深め、防災教育の面からも多面的・多角的に考えることのできる記載になるよう検討している」とし、記載を前提に編集作業を行っていると説明した。
 教育委員からは「人間は過去を正当化したがるものだが、(虐殺という)悲惨な事件を起こす可能性があるということを教訓として刻まなければいけない」と積極的に理解を示す意見も出された。
 新副読本を巡っては市民団体「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」(北宏一朗代表)が原案を情報公開制度で入手したところ、従来の副読本にあった朝鮮人虐殺の記述がないことが判明。歴史研究者や市民団体から虐殺の史実と背景を記載するよう求める要望書が市教委に寄せられていた。

by sabasaba13 | 2017-11-30 06:23 | 関東大震災と虐殺 | Comments(0)