2018年 04月 25日 ( 1 )

「メモリアル・アルバム 1955-2014」

c0051620_10271012.jpg 入江宏というピアニストをご存知ですか。先日『週刊金曜日』のCD評で教示していただき、はじめて知りました。内科医として病院勤務の多忙な日々を送りつつ、東京や横浜などのジャズ・スポットで週末に数セットのライブ演奏をしたジャズ・ピアニスト。しかし円熟期に病となり、長い闘病生活を経て、2014年3月に逝去されました。享年58歳。彼の素敵なピアノ演奏をおさめたアルバム「メモリアル・アルバム 1955-2014」が発売されているとのこと、さっそく購入しました。
 まずジャケットが良いですね。地味な色合いの無地に、眼鏡と髭のみのイラストで描かれたシンプルで愛らしい似顔絵が中央に小さく置かれています。彼の人となりや演奏が彷彿としてくるようです。CD二枚組で、一枚目はソロ・ピアノ。家人にも知らせずに自宅でひそかに録音していたものが、死後偶然に見つかったもの。二枚目は彼がピアニスト、キーボード奏者としてジョージ大塚・山口真文・ミロスラフ・ヴィトゥス・神崎ひさあきらと共演したレコーディング・セッション。
 一曲目の「ラストナイト・ホエン・ウィー・ワー・ヤング」から、彼の世界に惹きこまれました。シャイな男性が、はにかみながら、思いのたけを言葉を選びながら愛する女性に告げるような演奏です。ほんとうに一音一音を大切にした暖かいピアノです。心や体の隙間や溝にたまった俗塵がきれいに洗い流されるようです。最近は、仕事に疲れて帰宅すると、まずこのCDを聴くようになりました。二枚目のセッションもわるくはないのですが、やはり一枚目のソロ・ピアノが出色の出来ですね。

 ご子息のブログで、入江宏氏の友人が書かれたライナーノーツが紹介されていました。引用します。
 自分より若い世代の医師たちが、検査データの数値が表示されたPC画面ばかりを見ていて患者の顔も見ず、聴診も触診も行わなくなっていることを、入江が嘆息まじりに口にするのを聞いたことがある。人間に対する、生に対する敬意と配慮は、医師・入江宏と音楽家・入江宏に共通する姿勢だった。そして、硬直した制度や組織、強ばった精神は入江宏が最も嫌うところだった。
 "生に対する敬意と配慮"、彼の素晴らしい音楽を理解するポイントはここにありそうですね。
by sabasaba13 | 2018-04-25 06:27 | 音楽 | Comments(0)