2018年 07月 11日 ( 1 )

『マルクス・エンゲルス』

c0051620_2126538.jpg 岩波ホールで映画『マルクス・エンゲルス』が上映されるという耳よりな知らせをキャッチしました。カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスを描いた映画かあ、ありそうでなかった映画ですね(たぶん)。資本主義の定義は山ほどありますが、中核による周辺の搾取、平たくいえば弱者を犠牲にして強者が肥え太る仕組みと定義しておきましょう。そういう意味でのえげつない資本主義が猖獗を極める今、かつて資本主義のからくりを暴き、戦いを挑んだ二人の先哲は、今だからこそ知るべき人物です。監督は『ルムンバの叫び』(00)、『私はあなたのニグロではない』(16)で知られる社会派の名匠ラウル・ペック監督、後者は近々見に行くつもりです。
 上映館は神保町にある岩波ホール、山ノ神とともに少し早めに行って近くにある「揚子江菜館」でひさしぶりに上海肉絲炒麺(上海式肉焼そば)を堪能しました。
 そして岩波ホールへ、まずは公式サイトから、あらすじを引用しましょう。
 若きマルクスとエンゲルスの友情は世界の未来を大きく変えた。
 永遠の名著『共産党宣言』(1848)が誕生するまでの激烈な日々を描く歴史的感動作。
 1840年代のヨーロッパでは、産業革命が生んだ社会のひずみが格差をもたらし、貧困の嵐が吹き荒れ、人々は人間の尊厳を奪われて、不当な労働が強いられていた。20代半ばのカール・マルクスは、搾取と不平等な世界に対抗すべく独自に政治批判を展開するが、それによってドイツを追われ、フランスへと辿りつく。パリで彼はフリードリヒ・エンゲルスと運命の再会を果たし、エンゲルスの経済論に着目したマルクスは彼と深い友情をはぐくんでゆく。激しく揺れ動く時代、資本家と労働者の対立が拡大し、人々に革新的理論が待望されるなか、二人はかけがえのない同志である妻たちとともに、時代を超えて読み継がれてゆく『共産党宣言』の執筆に打ち込んでゆく―。

 労働者を低賃金で酷使することによってひたすら利潤の増殖を繰り返す資本主義経済、そのあからさまな原初の姿を、監督は克明に再現してくれます。共有地を富者に奪われて追い立てられる貧者たち。紡績工場で過酷な労働を強制される労働者たち。その格差・不平等・不公正に怒り、敢然と立ち向かう若い二人の姿が印象的でした。マルクスの野卑で力強い怒り、エンゲルスの静かで底知れぬ怒り、その違いもていねいに描き分けられています。そして忘れてはいけないのが、彼らを支える妻たちの献身ぶりです。『共産党宣言』も、この素晴らしき四人五脚による結実なのかもしれません。

 この映画を見て、あらためて現実の不平等・不公正を知ること、それに対して心底から怒ること、そして考え行動することの重要さに思い至りました。逆に言えば、富者・強者が現状を維持するためには、これらを私たちにさせなければいいのですね。メディアを統制して不平等・不公正を知らせない。感性を摩滅させて、怒りや虐げられた人びとへの共感を雲散霧消させる。スマートフォン、東京オリンピック、ワールドカップなど、その手練手管には事欠きません。そして考えさせないためには… さすがはマルクス、『資本論』の中で、看破しています。
 ある大きな鉄道事故によって数百人の乗客が死んだ。鉄道労働者の怠慢が原因である。彼は陪審員の前でこう弁解する。十年から十二年前までの労働日は八時間にすぎなかったと。最近五、六年の間に、十四、十八、二十時間と引き上げられ、またバカンス客の多い時などのように、旅好きが押し寄せるときには、休みもなく四十~五十時間働くことも珍しくはない、と。
 彼らは普通の人間であり、アルゴスのような超人ではない。あるとき彼らは労働に耐えられなくなる。脳は思考をやめ、眼は見ることをやめる。

 そう、長時間労働をさせて、脳に思考をやめさせ、眼に見ることをやめさせる。「働き方改革法案」の真の狙いはここにあるのでは。違いますか、安倍上等兵。

 最後に、冬籠り前の栗鼠のように、せっせと貯め込んだマルクスの言葉を紹介します。
 恥は、革命的な感情である。

 近代的国家権力は、単に、全ブルジョワ階級の共通の事務をつかさどる委員会にすぎない。

 守銭奴は気の狂った資本家であり、資本家は合理的な守銭奴である。

 哲学者はこの世界をあれこれ解釈してきたが、大事なのはそれを変革することだ。

 地獄への道は、善意で敷き詰められている。

 大いなる歴史的事件は二度繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は道化芝居として。

 人間はつねに、自分が解決しうる課題だけを自分に提起する。

 支配階級よ、共産主義革命のまえにおののくがいい。プロレタリアは、革命においてくさりのほか失うべきものをもたない。かれらが獲得するものは世界である。

 資本は、頭から爪先まで、あらゆる毛穴から、血と汚物をしたたらせながらこの世に生まれてくる。

by sabasaba13 | 2018-07-11 06:18 | 映画 | Comments(0)