2019年 02月 26日 ( 1 )

沖縄の「NO」 1

 辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う沖縄県民投票で、反対の民意が明確に示されました。まずは、安倍首相の城狐社鼠、作家の百田尚樹氏によって「絶対つぶさなあかん」と罵倒された沖縄の二つの新聞社、「琉球新報」と「沖縄タイムス」の社説を熟読して、これまでの経緯を理解し、沖縄の人びとの思いに真摯に耳を傾けましょう。
県民投票で反対多数 埋め立て直ちに中止せよ  (琉球新報社説 2019.2.25)

 名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票で、反対の民意が明確に示された。特定の基地建設を巡り、民主主義で定められた制度によって県民が自ら意思表示をしたのは初めてだ。2月24日は沖縄の歴史の中で特筆すべき日になった。
 法的拘束力がないにもかかわらず、有権者の過半数が投票し、43万人を超える人々が新基地建設にノーを突き付けた。この事実を政府が無視することは断じて許されない。
 政府はこの結果を尊重し、新基地建設工事を直ちに中止すべきだ。市街地の真ん中にある米軍普天間飛行場は、県内移設を伴わない全面返還に方針を転換し、米側と交渉してもらいたい。まずは県民投票の結果をありのままに米国に伝え、理解を求めることだ。
 地元が反対する場所に基地を置くのは米国にとっても得策ではない。沖縄側の意向をくみ取る方が賢明だ。
 県民投票をせざるを得ないところまで沖縄を追い込んだのは、米国追従の姿勢を崩さず、知事選の結果さえ顧みない安倍政権だ。その背後には、沖縄に基地を置くのは当たり前だと思い込んでいたり、あるいは無関心であったりする、多くの国民の存在がある。
 県民投票を機に、基地問題を自分の事として考える人が全国で増えたのなら、投票の意義はさらに高まる。
 普天間飛行場の返還が具体化したのは1995年の少女乱暴事件がきっかけだ。米軍基地の整理縮小を求める世論の高まりを受け、5~7年で全面返還することを日米両政府が96年に合意した。
 当初示された条件は、普天間のヘリコプター部隊を、嘉手納飛行場など県内の既存の米軍基地内にヘリポートを建設し移転することだった。それが曲折を経て大規模な基地建設へと変容していった。
 23年前の県民投票で基地の整理縮小を求める強い意思が示された。だが今日、多くの県民の意向に反し、新たな米軍基地の建設が進められているのは由々しき事態だ。
 政府は辺野古移設が「唯一の解決策」と繰り返し述べているが、それは安倍政権にとっての解決策という意味しか持たない。新基地を建設したとしても普天間が返還される確証はない。「5年以内の運用停止」の約束をほごにしたように、さまざまな理由を付けて返還が先送りされる可能性が大きいからだ。
 さらに、建設工事の実現性も大きく揺らいでいる。予定地の軟弱地盤に対応し7万7千本のくいを打つ必要があるが、水深90メートルに達する大規模な地盤改良工事は世界的にも例がない。建設費は県が試算した2兆5500億円よりも、さらに膨らむ。
 沖縄の民意に反するばかりか、膨大な血税を浪費する荒唐無稽な工事と言わざるを得ない。玉城デニー知事は今回示された民意を足掛かりにして、断固たる決意で政府との交渉に臨んでほしい。


[辺野古「反対」7割超] 計画断念し代替策探れ (沖縄タイムス社説 2019.2.25)

 信念や確信、悩みや戸惑い。3択のどちらに投じられた票にも、それぞれの思いが込められているはずだ。県民投票の結果を厳粛に受け止めたい。今こそ「辺野古」を巡る対立と分断に終止符を打つ第一歩を踏み出す時である。普天間飛行場の代替施設として国が名護市辺野古に計画している米軍基地建設のための埋め立ての賛否を問う県民投票が24日、すべての市町村で実施された。 投票率は52・48%。反対票は、賛成票と「どちらでもない」票を合わせた数を大幅に上回り、投票資格者の4分の1を超えた。新基地建設に反対する玉城デニー知事は、県民投票によって今後の政策推進の原動力を手に入れたことになる。反対票は、昨年の知事選で玉城知事が獲得した過去最多の得票を上回り、40万の大台に乗った。
 辺野古埋め立てについて、県民投票で沖縄の民意が明確に示されたのは、今度が初めてである。このことは安倍政権の強引な埋め立て政策が民意によって否定されたことを意味する。軟弱地盤の改良工事に伴う「工事の長期化」という点からも、県民投票で示された「明確な民意」という点からも、新基地建設計画は、もはや完全に破たんした。政府は直ちに工事を中止し、県と見直し協議に入るべきだ。

 戦後、基地優先政策の下で自己決定権をないがしろにされてきた県民にとって、投票結果の持つ意味は大きい。米軍基地の整理縮小や日米地位協定見直しの賛否を問う1996年9月の県民投票は、労組が発案し主役を担う労組主導の運動だった。今回、署名活動を中心になって担ったのは、さまざまな立場の市民である。とりわけ対話を求める若い人たちの取り組みは、幅広い層の共感を呼んだ。昨年9月の県知事選で玉城知事を誕生させた「新しい政治」を求めるうねりは県民投票に引き継がれていたのである。
 政府の強引な土砂投入に対し、国内外から工事停止を求める声が相次いだ。ハワイ在住県系4世のロブ・カジワラさんが始めた米ホワイトハウスの請願サイトへの電子署名は、21万筆を超えた。県民投票に法的な拘束力はないが、だからといって、政府がこの結果を無視することは許されない。稲嶺恵一元知事も仲井真弘多元知事も、「軍民共用」「15年使用期限」、普天間飛行場の「5年以内の運用停止」などの条件を付して辺野古移設を認めた。だが、政府はいずれの条件も一方的にほごにし、説明責任すら果たしていない。地盤改良工事に伴って事業費が大幅に膨らむのは確実だ。工期の長期化も避けられなくなった。にもかかわらず、政府は工期も事業費もまだ明らかにしていない。県民投票に対して「静観」の姿勢を示した自民、公明支持層からも埋め立て「反対」の声が数多く示された。政府はこの事実を真剣に受け止めなければならない。

 衆参で3分の2を超える議席にあぐらをかいて、上から目線で工事を強行することは許されない。政府は、埋め立て工事を強行することで「もう後戻りはできない」というあきらめの空気を広げようとしたが、県民感情を逆なでしただけで、期待していたほどの効果は生まなかった。沖縄戦後史への深い理解なくして辺野古問題の解決策を見いだすことはできない。安倍内閣の政権運営は安定している。トランプ米大統領との相性の良さは抜群だ。安倍内閣が持つこの政治的資産は、辺野古問題を終わらせることにも、沖縄を犠牲にして米国への従属を深めることにも、いずれにも活用可能である。安倍首相の賢明な判断を求めたい。辺野古新基地建設計画を断念し、普天間の早期返還に向け、日米協議を開始すべきだ。
 "トランプ米大統領との相性の良さは抜群"という痛烈な皮肉には、思わず緩頬してしまいました。同じ穴の狢ということでしょうか。それはさておき、"沖縄戦後史への深い理解なくして辺野古問題の解決策を見いだすことはできない"という一文には、強く共感します。二言目には「普天間飛行場の危険性除去」を繰り返し、辺野古新基地の建設を強行する安倍首相ですが、それでは訊きたい。これまでずっとその危険性を放置し黙認してきたのは誰なのか、と。それは自民党政権と外務官僚ではないのか。それを口実にして沖縄に新基地を建設するとは、「盗人猛々しい」という俚諺そのものです。
 その危険性は、日本の外務省は現在、世界でただ一ヵ国だけ、「駐留外国軍(米軍)には原則として、受け入れ国(日本)の国内法は適用されない」という理解不能な立場をとっていること、つまり現実としての「占領体制」がいまだに継続していることに起因しています。(『知ってはいけない 2』 矢部浩治 講談社現代新書 p.68~70) なぜそうなってしまったのか、その歴史的経緯を知らないと安倍首相の無恥な言説にころりと騙されてしまいます。
 歴史を知らないとどうなるのか。今読んでいる『歴史という教養』(河出新書003)の中で、片山杜秀氏はこう述べられています。
 そのとき、あなたの言葉は、時間と空間の厚みを失って安っぽくなり、あなたの行動は独りよがりになって説得力を失い、あなたの事実認識は前例を知らないのでやること起きることを何でも新しいと錯覚し、あなたの思考は歴史と経験の厚みを持たないので何事も場当たり的になり、あなたが成功や失敗に学ぼうとしても、それが起きるスパンをとらえ損ね、成功と失敗の決定的瞬間のイメージしか持たないので何も学べず、かえって大きく間違え、あなたの態度は物事の生成のスパンを間違えるので忍耐も我慢も欠き、刹那の変化に溺れて、あなたのアンテナは短絡という"悪認識"から逃れられず、危機も危機と思わず、好機も好機と思わず、あなたは因果関係の見えないアンバランス・ゾーンの中に堕ちて行くのです。(p.35~6)
 安っぽい言葉、独りよがり、場当たり的言動、不勉強、忍耐と我慢の欠如、短絡的思考… あれ? 誰かさんを思い出しますね。よっぽど歴史を知らないのですね。マイケル・ムーア監督の言を借りれば、その御仁は空から降ってきたわけではありません。彼は、私たちそのものです。もし彼を排除しようとするのなら、私たち自身の振る舞いを変えなければなりません。

付記一。安倍首相は、反対7割超の結果を「真摯に受け止める」姿勢を示したそうです。真摯に受け止めて、新基地建設を強行したら、その姿勢は"真摯"とは言えません、断じて。この御仁は、言葉や論理の重要さにまったく頓着していないようです。ただその場を誤魔化し、言い逃れをし、自己を保身するための言葉の濫用。

付記二。百田尚樹氏の「絶対つぶさなあかん」発言は、2015年6月25日、東京の自民党本部で行われた勉強会「文化芸術懇話会」においてなされたそうです。佐藤優氏のブログによると、そこで彼は、「沖縄の米兵が犯したレイプ犯罪よりも、沖縄県全体で沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方が、はるかに率が高い」とも発言したそうです。悪徳不孤、必有隣。

 本日の一枚、2003年8月に山ノ神と訪れた辺野古です。
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by sabasaba13 | 2019-02-26 06:27 | 鶏肋 | Comments(0)