2019年 03月 01日 ( 1 )

三・一独立運動百周年 1

 本日、2019年3月1日は、朝鮮「三・一独立運動」が起きた日からちょうど百年目にあたります。まずは大学入試用日本史でお馴染みの教科書、『改訂版 詳説日本史B』(山川出版社)から、運動の概要について引用します。
 これより先、民族自決の国際世論の高まりを背景に、東京在住の朝鮮人学生、日本支配下の朝鮮における学生・宗教団体を中心に、朝鮮独立を求める運動が盛りあがり、1919年3月1日に京城(ソウル)のパゴダ公園(タプッコル公園)で独立宣言書朗読会がおこなわれたのを機に、朝鮮全土で独立を求める大衆運動が展開された(三・一独立運動)。この運動はおおむね平和的・非暴力的なものであったが、朝鮮総督府は警察・憲兵・軍隊を動員してきびしく弾圧した。原敬内閣は、国際世論に配慮するとともに、朝鮮総督と台湾総督について文官の総督就任を認める官制改正をおこない、朝鮮における憲兵警察を廃止するなど、植民地統治方針について、若干の改善をおこなった。(p.327)
 日韓関係が険悪な状態にある理由の一つが、歴史認識の違いにあると考えます。過去において、日本は朝鮮に対してさまざまな搾取および非人道的行為・加虐行為を行ないました。日清戦争における東学党や農民への弾圧、閔妃殺害、韓国併合(1910)以降は、土地調査事業による土地の強奪、三・一独立運動への弾圧、堤岩里事件、関東大震災時の虐殺、皇民化政策、創氏改名、強制連行、従軍慰安婦、21万人の朝鮮人を戦場に送った徴兵令。この36年間の植民地支配の特徴を、『日・朝・中三国人民連帯の歴史と理論』(梶村秀樹・宮田節子他 日本朝鮮研究所)は、「1910年代は土地よこせ(土地調査事業)、20年代は米よこせ(朝鮮産米増殖計画)、30年代後半から45年までは人よこせ(強制連行)、命よこせ(徴兵令)」とわかりやすくまとめています。
 そして敗戦後、日本に残った約60万人の朝鮮人を管理するため、1947(昭和22)年5月に昭和天皇の最後の勅令として「外国人登録令」が制定されました。朝鮮人などを外国人とし、憲法上の国民の権利義務の枠組みから排除するための法令です。さらに1952(昭和27)年4月、サンフランシスコ講和条約の発効に伴い、日本在留の朝鮮人と台湾人は日本国籍を失う、と日本政府は一方的に宣言しました。これをもって、在日朝鮮人は、公営住宅入居の権利を含む主要な社会福祉を受ける権利を失います。戦後の数十年間に日本の福祉制度が発達していくなかで、こうした排除の規定はますます強化されていきました。たとえば、1959(昭和34)年に発足した国民健康保険と国民年金制度では、日本在住の外国人は除外すると明確に規定されています。さらに在日朝鮮人は外国籍のゆえに医療などの専門職から排除され、公務員の職からも閉め出され、凄まじい打撃を蒙ることになりました。
 やれやれ、言葉もありません。こうした過去の過ちにきちんと向き合うことを「自虐史観」と言うのであれば、はい、私は自虐史観を支持します。自慰史観よりは、真っ当な歴史との向き合い方だと確信します。何度でも紹介しますが、『普遍の再生』(井上達夫 岩波書店)に教示していただいた、大沼保昭氏の言葉に私も共鳴します。
 過ちを犯したからといって卑屈になる必要はない。過ちを犯さない国家などというものは世界中のどこにもないのだから。しかし、過ちを犯さなかったと強弁することは自らを辱めるものであり、私たちの矜持がそうした卑劣を許さない。私たちの優れた到達点を率直に評価し、同時に過ちを認めるごく自然な姿をもつ国家こそ、私たちが愛し誇ることのできる日本という国ではないか。私はそう思う。(「日本の戦争責任と戦後責任」 『国際問題』 501号 2001年12月号) (p.68~9)
 韓国の人びとが日本への不信感を拭えないのは、こうした過ちを「水に流そう」「みんなやってる」「悪いことなんかしていない」「証拠がない」「謝ったんだから忘れろ」「関心ないね」「何それ?」「そっちも悪い」と考える日本人が、特に国民が選出した国会議員の中でそう考え発言する方があまりにも多すぎるからではないでしょうか。

 今日の三・一独立運動百周年も、過去の歴史にきちんと向き合うきっかけとなって欲しいのですが、この運動のことを真摯に取り上げるメディアがほとんどないのが残念です。ただ『週刊金曜日』(№1221 19.2.22)が、「100年前のろうそくデモ 3・1朝鮮独立運動」という特集を組んでくれたのがせめてもの救いです。現在のソウルの表情、運動の直後に上海で樹立された大韓民国臨時政府の紹介、運動の歴史的・今日的意義、ろうそく市民革命との関連、日本で学んでいた朝鮮人留学生がつくり三・一独立運動の起爆剤となった2・8宣言の紹介など、たいへん勉強になりました。
「ソウルの表情」の中で成川彩氏は、韓国の人たちが怒っているのは「歴史問題に対して反省せず、日韓の葛藤をあおるような日本政府の態度」に対してである、と指摘されていますが、これは重要な視点だと思います。(p.18) 歴史問題に不誠実な態度をとって韓国の人びとを怒らせ、それをあたかも日本人全体に対する反発であるかのように見せかけて、さらに日韓の不和を煽るという自民党政権の策略が垣間見えてきます。やれやれ、国外に敵をつくって、国民の目を真の問題から逸らすという、これまで何度も何度も何度も何度も繰り返されてきた手法が、いまだに有効であることに絶望すら覚えます。どこまでなめられたら日本人は気づくのでしょうか。
 そして本号の白眉は、外村大氏による「3・1独立宣言」の現代語訳です。私も史実としては知っていましたが、全文を読むのは初めてです。ぜひ多くの方々に読んでほしいので、長文ですが引用します。
宣言書

 わたしたちは、わたしたちの国である朝鮮国が独立国であること、また朝鮮人が自由な民であることを宣言する。このことを世界の人びとに伝え、人類が平等であるということを大切さを明らかにし、後々までこのことを教え、民族が自分たちで自分たちのことを決めていくという当たり前の権利を持ち続けようとする。5000年の歴史を持つわたしたちは、このことを宣言し、2000万人の一人ひとりがこころを一つにして、これから永遠に続いていくであろう、わたしたち民族の自由な発展のために、そのことを訴える。そのことは、いま、世界の人びとが、正しいと考えていることに向けて世の中を変えようとしている動きのなかで、いっしょにそれを進めるための訴えでもある。
 このことは、天の命令であり、時代の動きにしたがうものである。また、すべての人類がともに生きていく権利のための活動でもある。たとえ神であっても、これをやめさせることはできない。わたしたち朝鮮人は、もう遅れた思想となっていたはずの侵略主義や強権主義の犠牲となって、初めて異民族の支配を受けることとなった。自由が認められない苦しみを味わい、10年が過ぎた。支配者たちはわたしたちの生きる権利をさまざまな形で奪った。そのことは、わたしたちのこころを苦しめ、文化や芸術の発展をたいへん妨げた。民族として誇りに思い大切にしていたこと、栄えある輝きを徹底して破壊し、痛めつけた。そのようななかで、わたしたちは世界の文化に貢献することもできないようになってしまった。
 これまで押さえつけられて表に出せなかったこの思いを世界の人びとに知らせ、現在の苦しみから脱して、これからの危険や恐れを取り除くためには、押しつぶされて消えてしまった、民族として大切にして来た心と、国家としての正しいあり方を再びふるい起こし、一人ひとりがそれぞれ人間として正しく成長していかなければならない。次世代を担う若者に、いまの状況をそのままとしていくことはできないのであり、わたしたちの子どもや孫たちが幸せに暮らせるようにするためには、まず、民族の独立をしっかりとしたものにしなければならない。2000万人が固い決意を相手と闘う道具とし、人類がみな正しいと考え大切にしていること、そして時代を進めようとするこころをもって正義の軍隊とし、人道を武器として、身を守り、進んでいけば、強大な権力に負けることはないし、どんな難しい目標であってもなしとげられないわけはない。
 日本は、朝鮮との開国の条約を丙子年・1876年に結び、その後も様々な条約を結んだが、〔朝鮮を自主独立の国にするという約束は守られず〕そこに書かれた約束を破ってきた。しかし、そのことをわたしたちは、いま非難しようとは思わない。日本の学者たちは学校の授業で、政治家は会議や交渉の際に、わたしたちが先祖代々受け継ぎ行なってきた仕事や生活を遅れたものとみなして、わたしたちのことを、文化を持たない民族のように扱おうとしている。彼ら日本人は征服者の位置にいることを楽しみ喜んでいる。わたしたちが作り上げてきた民族の大切な歴史や文化の財産とを、彼ら日本人が馬鹿にして見下しているからといって、そのことを責めようとはしない。わたしたちは自分たち自身をはげまし、立派にしていこうとしていて、そのことを急いでいるので、ほかの人のことをあれこれ恨む暇はない。いまこの時を大切にして急いでいるわたしたちは、かつての過ちをあれこれ問題にして批判する暇はない。いま、わたしたちが行なわなければならないのは、よりよい自分を作り上げていくことだけである。他人を怖がらせたり、攻撃したりするのではなしに、自ら信じるところにしたがって、わたしたちは自分たち自身の新しい運命を切り開こうとするのである。決して、昔の恨みや、一時的な感情で、他の人のことをねたんだり、追い出そうとしたりするわけではない。古い考え方を持つ古い人びとが力を握って、そのもとで手柄を立てようとした日本の政治家たちのために、犠牲となってしまった、現在の不自然で道理にかなっていないあり方をもとにもどして、自然で合理的な政治のあり方にしようとするということである。
 もともと、日本と韓国(注・大韓帝国)との併合は、民族が望むものとして行なわれたわけではない。その結果、威圧的で、差別・不平等な政治が行なわれている。支配者はいいかげんなごまかしの統計数字を持ち出して自分たちが行なう支配が立派であるかのようにいっている。しかしそれらのことは、二つの民族の間に深い溝を作ってしまい、互いに反発を強めて、仲良く付き合うことができないようにしている、というのが現在の状況である。きっぱりと、これまでの間違った政治をやめ、正しい理解と心の触れあいに基づいた、新しい友好の関係を作り出していくことが、わたしたちと彼らとの不幸な関係をなくし、幸せをつかむ近道であるということを、はっきりと認めなければならない。
 また、怒りと不満をもっている、2000万人の人びとを、力でおどして押さえつけることでは、東アジアの永遠の平和は保証されないし、それどころか、東アジアを安定させる際に中心になるはずの中国人の間で、日本人への恐れや疑いをますます強めるであろう。その結果、東アジアの国々は共倒れとなり、滅亡してしまうという悲しい運命をたどることになろう。いま、わが朝鮮を独立させることは、朝鮮人が当然、得られるはずの繁栄を得るというだけではなく、そうしてはならないはずの政治を行ない、道義を見失った日本を正しい道に戻して、東アジアを支えるための役割を果たさせようとするものであり、同時に、そのことで中国が感じている不安や恐怖をなくさせようとするためのものでもある。つまり、朝鮮の独立はつまらない感情の問題として求めているわけではないのである。
ああ、いま目の前には、新たな世界が開かれようとしている。武力をもって人びとを押さえつける時代はもう終わりである。過去のすべての歴史のなかで、磨かれ、大切に育てられてきた人間を大切にする精神は、まさに新しい文明の希望の光として、人類の歴史を照らすことになる。新しい春が世界にめぐってきたのであり、すべてのものがよみがえるのである。酷く寒いなかで、息もせずに土の中に閉じこもるという時期もあるが、再び暖かな春風が、お互いをつなげていく時期がくることもある。いま、世の中は再び、そうした時代を開きつつある。そのような世界の変化の動きに合わせて進んでいこうとしているわたしたちは、そうであるからこそ、ためらうことなく自由のための権利を守り、生きる楽しみを受け入れよう。そして、われわれがすでにもっている、知恵や工夫の力を発揮して、広い世界にわたしたちの優れた民族的な個性を花開かせよう。
 わたしたちはここに奮い立つ。良心はわれわれとともにあり、真理はわれわれとともに進んでいる。老人も若者も男も女も、暗い気持ちを捨てて、この世の中に生きているすべてのものとともに、喜びを再びよみがえらせよう。先祖たちの魂はわたしたちのことを密かに助けてくれているし、全世界の動きはわたしたちを外側で守っている。実行することはもうすでに成功なのである。わたしたちは、ただひたすら前に見える光に向かって、進むだけでよいのである。

公約三章

一、今日われわれのこの拳は、正義、人道、生存、身分が保障され、栄えていくための民族的要求、すなわち自由の精神を発揮するものであって、決して排他的感情にそれてはならない。
二、最後の一人まで、最後の一刻まで、民族の正当なる意志をこころよく主張せよ。
三、一切の行動はもっとも秩序を尊重し、われわれの主張と態度をしてあくまで光明正大にせよ。

朝鮮建国四千二百五十二年三月一日

朝鮮民族代表

孫秉熙 吉善宙 李弼柱
白龍城 金完圭 金秉祚
金昌俊 權東鎭 權秉悳
羅龍煥 羅仁協 梁旬伯
梁漢默 劉如大 李甲成
李明龍 李昇薰 李鍾勳
李鍾一 林禮煥 朴準承
朴熙道 朴東完 申洪植
申錫九 吳世昌 吳華英
鄭春洙 崔聖模 崔麟
韓龍雲 洪秉箕 洪其兆 (p.20~2)
 うーむ。一読、唸ってしまいました。何と志の高い宣言である事よ。日本に対する怒りや恨みは激甚であるだろうに、それを昇華させ人類的な視野にたって「人間を大切にする精神」「自由のための権利」「生きる楽しみ」を希求する精神。道義を見失った日本を正しい道に戻して、中国や韓国とともに東アジアを支えようと、連帯を求める精神。あらためて三・一独立運動を見直してしまいました。残念なことにこの呼びかけに耳を傾ける日本人は少なく、暴力的な弾圧でこの運動を叩き潰してしまいました。この道義ある宣言を暴力で潰したことに対する後ろめたさが、数年後に起きた関東大震災時の虐殺に結びついたような気がします。
そして気づかれましたか。“支配者はいいかげんなごまかしの統計数字を持ち出して自分たちが行なう支配が立派であるかのようにいっている”という一文を。●があったら入りたい、百年前から日本の官僚の皆々様は、己の政策を正当化するために、統計数字を誤魔化していたのですね。過ちを反省しなければ、同じ過ちを繰り返すという歴史法則の好例です。

 付記その一。日本で学んでいた朝鮮留学生の若者たちが署名し、三・一独立運動の起爆剤となった2・8宣言の記念碑が、東京神田の在日本韓国YMCAにあるそうです。またこちらには「2・8独立宣言資料室」も併設されているとのこと。今度、ぜひ訪れてみたいと思います。

 付記その二。外務省の「海外安全情報」に下記の注意喚起が掲載されていました。
韓国:「3.1独立運動100周年」に際するデモ等に関する注意喚起

●3月1日に国内各都市でデモ等が行われる可能性があります。最新の情報に注意するとともに,デモ等には近づかない等慎重に行動してください。

1 3月1日の「3.1独立運動100周年」に際し,ソウル,釜山,済州をはじめとする各都市において,市民団体等によるデモ等が行われる可能性があります。
2 つきましては,韓国への滞在・渡航を予定している方や滞在中の方は,最新の情報に注意し,デモ等が行われている場所には近づかない等慎重に行動し,無用のトラブルに巻き込まれることのないようご注意ください。
3 なお,デモ等に関する最新の情報については,大使館・総領事館から随時お知らせします。
4 万が一,被害に遭った場合や他の邦人が被害に遭ったとの情報に接した場合には,大使館又は総領事館にご一報ください。
5 海外渡航の際には,万一に備え,家族,友人在日本,職場等に,日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。
 いつか、韓国人と日本人が肩を組み、三・一独立運動を追憶するデモを仲良く行える日が来るといいのになあ。安倍首相、日本政府が諜報員を韓国に派遣してデモ隊を挑発して暴行を受けるように仕向け、日本人の反韓感情を炎上させる…なんてことはまさかしないですよね。

 本日の一枚、1996年に訪れて撮影したタプッコル公園です。
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by sabasaba13 | 2019-03-01 06:24 | 鶏肋 | Comments(0)