2019年 03月 05日 ( 1 )

どうぶつ会議

c0051620_1317107.jpg 先日、劇「銀杯」を見たときに、こまつ座による「どうぶつ会議」の上演があるというチラシがありました。そう、ドイツの作家エーリッヒ・ケストナーが書いた作品ですね。ドイツの文豪の中心人物として、第二次世界大戦のナチス政権下には自分の本が焚書の憂き目にあいながらも亡命せず、それどころか、自分の本が燃やされるのを見に行ったそうです。ケストナーは自身の日記のなかで、原爆が投下された「1945年を忘れるな」と記しているそうです。また「そして地球の住民たちがみずから選んだ没落は太陽系やうずまき星雲の年代記にしるされる余地はないだろう」とも言いました。戦争や全体主義と闘い続けた不屈の作家、しかしユーモアと笑いを忘れない魅力的な作品群は、子どもの頃にむさぼるように読みました。『エーミールと探偵たち』『点子ちゃんとアントン』『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』『五月三十五日』…
 その一つである『どうぶつ会議』という児童小説を、1971年に井上ひさしが劇団四季のために描き下ろした音楽劇で、今回、こまつ座によって約半世紀前ぶりに復活されるそうです。井上作品に演出助手として携わった田中麻衣子が井上作品の演出に初挑戦し、栗原類、池谷のぶえ、田中利花、木戸大聖、上山竜治、大空ゆうひらが出演します。これはぜひ見なくては、山ノ神を誘って、東京・新国立劇場の小劇場「THE PIT」に行ってきました。実はこまつ座の舞台を観るのははじめてなので楽しみにしております。

 まずはこまつ座のホームページから、あらすじを引用します。
 世界中のどうぶつたちが子どもたちのために立ち上がりました。人間の大人たちは世界中にいろんな問題があるのに戦争ばかり、これじゃあ人間の子どもたちがかわいそうだ、と抗議をしますが、頭の固い大人たちには届きません。困ったどうぶつたちは、人間の子どもたちに話を聞いてもらうことにしました。
 そんな中、日本のとあるサーカスでは、頭をひねらせたどうぶつたちが劇場にやってきた子どもたちを閉じ込めて、お話を始めます。一か月前のある暑い日の夜に始まったものがたりを…
 まず何と言っても楽しい舞台です。ライオン、ネコ、サル、カンガルー、ヒョウ、トラに扮した役者たちが舞台狭しと跳ね回り、歌い、踊る。しかしこのサーカスの動物たちは、団長によるひどい虐待を受けています。「団長の唄」です。
♪サーカスの動物に 大切なものは なによりも芸当だ 芸の練習だ 理屈をこねる暇に 玉乗りの稽古だ 不平を鳴らすよりも 馬乗りの復習だ♪
 "サーカスの動物"を"会社の社員"に置き換えると、身をつまされてしまいます。そして劇が進行していくうちに、動物たちによる人間の傲慢さへの真剣な問いかけがなされていきます。なぜ戦争をするのか、なぜ環境を破壊するのか、なぜ子供の遊び場を奪うのか。挿入歌「人間はすばらしい生き物」です。
♪人間はすばらしい生き物 空をとぶ タカのように 海を泳ぐ フカのように 丘を走る 豹より早く 深くもぐる ふぐより深く なのになぜ いがみあう? なのになぜ殺し合う? ふしぎだ- 人間は不思議な生き物♪
 しかし動物たちは泣き寝入りをしません。世界中の動物がアフリカに集まって、人間たちに思い知らせよう、自分たちも動物だと気づかせようと色々な作戦を決行します。蜂に将軍を襲わせるなどしますが、すべて失敗に終わります。
 しかし動物たちはあきらめません。人間の大人たちの過ちに気づかせ、その考えや行動を改めさせるための、突飛もなくかつ有効な作戦を決行します。それは…見てのお楽しみにして、それでも逡巡する大人たちに対して、「動物憲章の唄」をいっしょに歌って後押しをしてほしいと、私たち観客に呼びかけます。
動物憲章の唄

ちいさいちいさい ぼうふらも
おおきいおおきい マンモスも
かわいいかわいい ひなどりも
こわいこわい毒フグも
そして人間も-
せまい地球にしがみついている同じ仲間さ

せいたかのっぽの キリンも
でぶのでぶっちょ カバ君も
間抜けな間抜けな トンマも
そして人間も-
せまい地球にしがみついている同じ仲間さ

のろまののろまの カメ君も
すばやいすばやい 野ウサギも
細い細い ミミズも
太い太い 黒豚も
そして人間も-
せまい地球にしがみついている同じ仲間さ
 舞台上に歌詞を書いた大きな垂れ幕を下げ、ピエロと動物たちが歌唱指導までしてくれました。歌うことを強要されるのは嫌いですが、今回は歌詞に共感したので自発的に山ノ神と共に歌いました。孑孑と人間は、狭い地球にしがみついている仲間、いいですね。ただメロディが覚えづらい、国広和毅氏の精進を期待します。

 というわけで楽しく、かつ考えさせられた芝居でした。人間は動物だ、学者・将軍・資本家の側ではなく動物と子供の側に立とう、そして世界は変えられる、エーリッヒ・ケストナーと井上ひさしのさまざまなメッセージ今も心に響きます。
 あらためてHPに掲載されていた井上ひさしのメッセージを紹介します。
 この二十一世紀というのは、地球と人類史上始まって以来の大問題が起こってきている。これをみんなで考えて必死に解決していかないといけない時代になったのです。わたしたち旧い世代もがんばります。しかし、この二十一世紀の主人公は若い皆さんです。「この世の中は自分たちの意思で変えられる」ということをどうか肝に銘じていただきたい。自分たちの意見をはっきり表わしていくことです。

by sabasaba13 | 2019-03-05 06:25 | 演劇 | Comments(0)