2019年 04月 08日 ( 1 )

『グリーンブック』

c0051620_21451371.jpg 山ノ神に誘われて、アカデミー賞の作品賞・助演男優賞・脚本賞を獲得した『グリーンブック』を「ユナイテッドシネマとしまえん」で見てきました。まずは映画のタイトルとなった"グリーンブック"とは何か。プログラムの解説によると、1936年から1966年まで、ニューヨーク出身のアフリカ系アメリカ人、ヴィクター・H・グリーンにより毎年作成・出版されていた、黒人旅行者を対象としたガイドブックです。黒人が利用できる宿や店、黒人の日没後の外出を禁止する、いわゆる「サンダウン・タウン」などの情報がまとめてあり、彼らが差別、暴力や逮捕を避け、車で移動ための欠かせないツールとなっていました。ジム・クロウ法(主に黒人の、一般公共施設の利用を制限した法律の総称)の適用が郡や州によって異なるアメリカ南部で特に重宝されたとのことです。
 プログラムより、あらすじを引用します。
 1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップ(ビゴ・モーテンセン)は、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)に運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。
 人種差別主義者である白人が、黒人と行動を共にすることで友情が育まれていくという、よくある設定です。しかし捻りがきいています。まず主人公のトニー・リップがイタリア系であり、二級の白人として扱われていること。ある街でそのことをからかった白人警官を、彼は殴り倒してしまいます。ドクター・シャーリーも逮捕され留置場にぶちこまれた二人、その夜のコンサートに間に合わなくなるというピンチに追い込まれます。ドクターは意外な人物に電話で助けを求めてすぐに釈放されるのですが、それは誰か? 映画を見てのお楽しみです。
 ドクターも、エリート・ピアニストにして性的マイノリティということから、白人から差別され黒人からも距離をとられます。その言いしれぬ孤独感を埋め合わせるかのように、高尚な文化や紳士的な立ち居振る舞いを身につけたドクター。一方リップは、酒をガバガバ飲み、煙草をスパスパ吸い、フライドチキンをガツガツ食べ、ソウルやR&Bをガンガンかける庶民派です。
 水と油の二人が、互いを理解するにつれて、それぞれの文化に惹かれていく場面も素敵です。ドクターの流麗なピアノ演奏に感動し、彼が洗練された文章へと手直ししてくれた妻への手紙に感心するリップ。(なにせリップは"dear"を"deer"と綴ってしまうのです) 一方ドクターは、リップに勧められてはじめてフライドチキンを食べ、その美味しさに驚愕します。また酒場でピアノを弾くようせがまれると、眉間に皺を寄せながら超絶技巧でショパンの「木枯らしのエチュード」を演奏するドクター。しかしバンドのメンバーがステージにあがりジャム・セッションを促すと、歓喜が爆発したようにR&Bを弾きまくるドクター。その表情の、何と生気に溢れていることよ。いい場面でした。

 そしてこの映画のテーマは、ドクター・シャーリーが、リップという凄腕の用心棒を必要とするような、ディープ・サウスでの危険な演奏旅行をなぜ敢行したのかという点だと思います。答えは映画を見ていただくとして、その志の高さに感銘を覚えます。

 黒人差別を描いた映画には、『夜の大捜査線』、『招かれざる客』、『手錠のままの脱獄』、『ミシシッピ―・バーニング』、『マルコムX』、『デトロイト』、『42 ~世界を変えた男~』、『私はあなたのニグロではない』など数多の名作がありますが、その一翼に連なる作品です。お薦め。
 いま公開中の『ブラック・クランズマン』も面白そうですね、今度見にいきます。
by sabasaba13 | 2019-04-08 06:25 | 映画 | Comments(0)