2019年 06月 24日 ( 1 )

惑星

c0051620_2243361.jpg G.ホルストの組曲「惑星」を生演奏で聴いてみたいものだと常々思っていました。すると「ドン・ジョヴァンニ」の公演でもらったチラシに、西本智実の指揮による「惑星」の演奏会があることを知り、すぐにチケットぴあで照会したところ、幸い席を取ることができました。やった。以前にブラームスの交響曲第1番を聞いてその腕の確かさは十分に分かっているので、これは楽しみです。
 水無月某日、山ノ神といっしょに池袋にある東京芸術劇場に参上。池袋と言えば、松尾貴史氏が絶対にうける結婚式のスピーチを紹介してくれました。「結婚生活に必要な袋が三つあります。一つ目は池袋、二つ目は沼袋、三つ目は…東池袋」 お後がよろしいようで。
 閑話休題。管弦楽はイルミナートフィルハーモニーオーケストラ、合唱はイルミナート合唱団です。イルミナートフィル? はじめてその名を聞きました。いま、インターネットで調べたところ、西本智実プロデュースのもと新たに誕生したオーケストラで、そのコンセプトは「エンターテインメント性に富んだオーケストラ」。国際交流事業への参加、チャリティコンサートなどの社会貢献、途上国への演奏家の派遣、寺、神社、能楽堂を舞台にした和と洋の融合など、多彩な活動を視野に入れているとのことです。お手並み拝見ですね。
 開演とともに、西本氏がひとり舞台に現われました。なんだなんだ… するとマイクを手にして、「惑星」では各曲の前にその曲をイメージしたナレーション(西本氏がつくった詩)を流し、またその曲に合わせた効果的な照明を使う、との解説をされました。なるほど、今にして思えば、これもエンターテインメントの試みなのですね。
 そしてオーケストラが舞台に登場したのですが…女性がとても多い。気になったので、いま同楽団の公式サイトで数えてみると、団員82人中49人が女性でした。テクニックは別として音量や迫力に欠けるのでは、と思いましたがまったくの杞憂でした。
 冒頭を飾るのはJ.オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲。おっいいですね。西本氏のきれっきれの歯切れのいい指揮、それに応えて見事に気持ちの入った充実した演奏。
 二曲目はE.エルガーの行進曲「威風堂々」第1番です。ああ嬉しい、私の大好きな曲です。名作『ブラス!』の最後の場面でも印象的に使われていました。強者に抗う弱者、猫を?む窮鼠、壁にぶつかる卵を勇気づけ鼓舞してくれるような曲です。序奏と再現部の躍動感と中間部の堂々とした誇り高さを、見事な演奏で表現してくれました。西本氏はダイナミクスを変化させるのがほんとうに上手いですね、曲の盛り上がりにアドレナリンがびしびしと分泌しました。
 そして休憩の後、いよいよお待ちかねの「惑星」です。全部で7つの楽章から成り、それぞれローマ神話に登場する神々にも相当する惑星の名と、副題が付けられています。ちなみに「火星、戦争をもたらす者」「金星、平和をもたらす者」「水星、翼のある使者」「木星、快楽をもたらす者」「土星、老いをもたらす者」「天王星、魔術師」「海王星、神秘主義者」となっています。オーケストラが登場すると、山ノ神がつんつんと脇をつつきます。何? 「ホルン6人が全部女性…」 うわお。 そして颯爽と西本氏が舞台に現われ、ナレーションが場内放送で流れます。全体的に印象に残るものはなかったのですが、曲のイメージをつかむうえで多少は役に立ったかな。そして「火星、戦争をもたらす者」が始まりました。「ダダダ・ダン・ダン・ダダ・ダン」という執拗に繰り返される禍々しいリズムに乗って、咆哮する管楽器の大迫力に我を忘れました。凄い… 三階席だったのですが、風圧で体が5cmほど持ち上がったような気がしました、いやほんと。紅蓮の照明が不気味に明滅し雰囲気を盛り上げます。戦争を現前させたような凄絶な演奏に感動、「戦争をもたらす者」安倍首相のテーマソングにしてはいかが。なお6人の女性ホルン奏者も大活躍、張りのある充実した音、完璧なアインザッツ、お見事でした。
 後の6楽章も素晴らしい演奏でした。時に荒々しく、時に情感深く、時に諧謔的に、さまざまな顔をもつこの名曲を、時が経つのを忘れて楽しむことができました。オケをその気にさせる指揮者、指揮者に全幅の信頼をおくオケ、両者の息がぴったりと合った演奏に大満足です。中でも心に残ったのは終曲の「海王星、神秘主義者」です。世界の、いや宇宙の終わりのような静謐な曲調のなか、気がつけば女声合唱の妙なるハミングがどこからともなく聴こえてきます。そしていつの間にか静寂とともに曲は終わります。
 アンコールは「ホフマンの舟歌」、歌心にあふれた素敵な演奏でした。

 西本智実氏の指揮ぶりはもちろん、イルミナートフィル、ほんとうに素晴らしいオーケストラでした。これからも贔屓にさせていただきます。よくぞこれだけ実力のある女性演奏家を集められたものです。女性がもつ無限の可能性をあらためて教えられました。これは憶測ですが、もしかするといわゆる有名オーケストラは、実力が拮抗していたら男性を優先して採用しているのではないかしらん。
by sabasaba13 | 2019-06-24 08:57 | 音楽 | Comments(0)