2019年 08月 09日 ( 1 )

8月9日に寄せて

 以前に読んだ『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』(オリバー・ストーン&ピーター・カズニック ハヤカワノンフィクション文庫)の第一巻に、下記のような記述がありました。
 しかしアメリカ国民の大半が知らされていなかったのは、アメリカ軍の最高指導者の多くが原爆使用を軍事的には不必要であるか、道徳的に非難されるべき行為ととらえていたという事実だった。トルーマン大統領付参謀長であり、統合参謀本部の議長でもあったウィリアム・リーヒ提督は、「キリスト教的倫理にもとづくあらゆる道徳律や戦争をめぐるあらゆる規律」に反する兵器として、原子爆弾を化学兵器や生物兵器と同類と見なすことにきわめて前向きだった。「日本はすでに敗北しており降伏する用意ができていた…広島と長崎に野蛮な兵器を使用したことは日本に対するわが国の戦争になんら貢献していない。はじめてこの兵器を使用した国家となったことで、われわれの道徳水準は暗黒時代の野蛮人レベルに堕した。私は戦争とはこのようなものではないと教えられてきたし、戦争は女子どもを殺して勝利するものではない」。怒りに燃えたリーヒは、ジャーナリストのジョナサン・ダニエルズに1949年に語っている。「トルーマンは、われわれは原爆の使用を決定したが…目標を軍事施設に絞ったと私には言った。むろん、彼らはかまわず婦女子を殺しにかかったのであり、はじめからそのつもりだったのだ」。
 ダグラス・マッカーサー元帥は、アメリカが降伏条件を変更したなら戦争は数ヵ月早く終結しただろうと一貫して主張している。彼は1960年にフーバー元大統領に次のように語った。フーバーが1945年5月30日にトルーマンに送った、降伏条件の変更を提案する意見書は、「賢明でまことに政治家らしい」ものであり、もしこの意見書が聞き入れられたのであれば、「広島と長崎の虐殺も…アメリカの空爆による大規模な破壊もなかっただろう。日本が躊躇することなく降伏を受け容れたであろうことを私はいささかも疑っていない」というのである。
 ヘンリー・「ハップ」・アーノルド元帥は「原爆投下の如何にかかわらず、日本が壊滅寸前であることはわれわれには以前から明白に思われた」と述べた。戦後ほどなくして、カーティス・ルメイ大将は「原爆もソ連参戦もなくとも、日本は二週間もあれば降伏していただろう」とも、「原爆は戦争終結とはまったくかかわりがない」とも述べている。太平洋戦略航空軍の指揮官カール・「トゥーイー」・スパーツ大将は、長崎の二日後に日記に綴った。「ワシントンではじめて原爆使用を検討したとき、私は投下に賛成しなかった。私はある町の住人を殲滅するような破壊を好んだことは一度たりともない」。
 海軍将官の多くはこれらの空軍参謀長たちと意見を同じくしていた。合衆国艦隊司令長官のアーネスト・キング提督は「私は今回の投下はすべきではないと思う。それは無益だ」と補佐に話した。彼はインタビューで「私はとにもかくにも原爆を好まなかった」と答えている。太平洋艦隊司令長官のチェスター・ニミッツ提督は、戦後しばらくしてワシントン記念塔で行なわれた会議で発言した。「実際、広島と長崎の破壊によって核の時代到来が世界に宣言される前に、そしてソ連が参戦する前に、日本はすでに講和を求めていた」。南太平洋方面軍司令官のウィリアム・「ブル」・ハルゼー提督は翌年に語った。「最初の原子爆弾は不必要な実験だった…いや、どちらの原爆であれ投下は誤りである…多くの日本人が死んだが、日本はずっと以前からソ連を通じて和平の道を探っていたのだ」。
 傍受された外交電報の概要を作成する任務についていたカーター・クラーク准将は語った。「われわれは商用船の撃沈や空腹のみによって彼らを惨めな降伏に追い込み、もう誰が見ても原爆は無用であり、われわれ自身がそのことを承知しており、われわれがそう承知していると相手にもわかっているにもかかわらず、そのような人々相手に原子爆弾二個の実験をしたのだ」。
 アメリカの五つ星階級章将官七名のうち、第二次世界大戦で最後の星を獲得した六名-マッカーサー元帥、アイゼンハワー元帥、アーノルド元帥、リーヒ提督、キング提督、ニミッツ提督-は、戦争終結に原子爆弾が不可欠であるという考えを拒絶していた。残念ながら、これらの軍人が投下に先立ってトルーマンに自身の意見を強硬に訴えた形跡はほとんどない。
 しかしグローヴスは彼らの考えを承知していた。広島に先立ち、彼は原爆にかんして国防省と交わしたあらゆる文書を廃棄するよう戦場の司令官に命じていた。なぜなら彼自身も認めていたように、「マッカーサーらに原爆を使用しなくても戦争に勝てたと主張させるわけにはいかなかった」からである。
 8月末、ジェームズ・バーンズまでもが戦争終結に原爆は必要なかったと認めた。《ニューヨーク・タイムズ》紙によると、「バーンズは、広島に最初の原爆が投下される前に日本は敗北を覚悟していたことをソ連はつかんでいたと述べている」。(p.390~3)

 ローマ教皇庁は速やかに原爆投下を糾弾していた。《カトリック・ワールド》誌は原爆使用を「残虐非道で…キリスト教文明と道徳律に対する前例を見ぬ打撃である」と述べた。全米教会協議会のジョン・フォスター・ダレス会長は、のちにアイゼンハワー政権のタカ派国務長官を務めた人物であるが、その彼が次のような懸念を表明している。「仮に敬虔なキリスト教国家であるわが国が、このような核エネルギー使用が人倫にもとっていないと考えるのであれば、他の国の人々も同じような考えに走るだろう。核兵器は通常兵器の一種と見なされるようになり、人類が突如として永久に破滅する道がひらかれるに違いない」。
 ほかにも原爆投下を非難する声が上がった。シカゴ大学のロバート・ハッチンス学長は、長崎に原爆が落とされたわずか三日後の8月12日、NBC放送で放映された「原子力-それが人類に対してもつ意味」を論じるシカゴ大学円卓会議に出席した。この席でハッチンスは明確に述べている。「万に一つ、この兵器を使用することがあるとしても、それは最終的な自己防衛手段に限定すべきである。しかるに原爆が投下されたとき、アメリカ当局はソ連参戦の予定を承知していた。日本は陸路も海路も封鎖され、諸都市は焼け野原になっていた。すべての証拠が原爆使用は無用であったことを指し示していた。したがってアメリカ合衆国はその道徳的威信を失ったのである」。(p.393~4)

 また広島と長崎への原爆投下はソ連に対するイニシアチブにつながったわけでもなかった。それは、"アメリカはその意思を貫くためならどんな手段をとることも厭わないのだから、血に飢えたアメリカに対する抑止力としてソ連独自の原爆開発を急がねばならない"という確信をスターリンに植えつけただけだった。(p.395~6)
 安倍首相のスピーチに注目しましょう。ま、だいたい想像できますが。
by sabasaba13 | 2019-08-09 07:28 | 鶏肋 | Comments(0)