2019年 08月 13日 ( 1 )

世界報道写真展2019

c0051620_14414625.jpg 山種美術館で「速水御舟展」を見た後、東京都写真美術館へ行き、知人に招待券をもらった「世界報道写真展2019」を見てきました。まずは公式ホームページから、展覧会の概要についての紹介文を引用します。
 世界報道写真コンテストの受賞作を紹介する「世界報道写真展2019」。62回目を迎える今回のコンテストには、129の国と地域から4,738人のフォトグラファーが参加し、78,801点の応募がありました。
 今年は、「現代社会の問題」、「一般ニュース」、「長期取材」、「自然」、「環境」、「スポーツ」、「スポットニュース」、そして昨年の「人々」にかわり「ポートレート」の部の8部門において、25カ国43人が受賞しました。また新たに、複数の写真で様々な事象を表現した作品を評価する「世界報道写真ストーリー大賞」が設けられ、報道写真の表現が広がりを見せています。
 「スポットニュース」の部では、ジョン・ムーアがメキシコとアメリカの国境で、母親の取り調べ中に泣き叫ぶホンジュラスの少女を捉えました。また「一般ニュース」の部では、サウジアラビアのカショギ記者が行方不明になった事件で、サウジの総領事館に押し寄せる報道陣の姿を写しています。ほかにも、シリアで続く内戦やコロンビア革命軍の元女性兵士の暮らし、オランダ領キュラソーのベニイロフラミンゴを捉えた作品など、地球上で「いま」起きていることを伝える写真の数々を紹介します。
 今、世界で何が起きているのか、そしてそれと日本がどのように関わっているのか。常に関心を持ち、調べ、考えていきたいと思っております。そのきっかけとなるのが、やはり写真です。いろいろな経緯があったとはいえ優れた報道写真誌であった『DAYS JAPAN』が廃刊となったため、世界のさまざまな事件や出来事を伝えてくれる報道写真を見る機会が減ってしまいました。こうした写真展はできうる限り見にいくように心掛けてします。
 どの写真も、今の世界を鮮明に伝えてくれる力作で、一つ一つキャプションを読みながらじっくりと鑑賞しました。その中でも、人権を奪われ虐げられる子どもたちの写真には胸がひきさかれます。ゴミの上で眠る少年、母にすがって泣き咽ぶ少女(ポスターの写真)、恐怖に怯える子どもたち。それぞれに下記のキャプションが添えられていました。
環境の部 マリオ・クルス(ポルトガル)
 フィリピンの首都マニラに流れるパッシブ川に浮かぶゴミに囲まれたマットレスに横たわる子ども。パッシブ川は2017年の『ネイチャー・コミュニケーションズ』の報告で、世界で最も汚染されている20本の河川の一つに挙げられた。現在は浄化に努力がなされているが、河川の一部は依然として廃棄物が密集しているため、ゴミの上を歩くことができるほどの状況にある。

スポットニュースの部 ジョン・ムーア(アメリカ)
 2018年6月12日、米国テキサス州マッカレンで、母親サンドラ・サンチェスが国境監視員の取り調べを受けている間泣き叫ぶホンジュラスの子どもヤネラ。メキシコからリオ・グランデ川を渡ってきた移民家族らは、当局に拘束された。母親のサンドラ・サンチェスは、亡命のためアメリカに到着するまで、1か月にわたり娘とともに中央アメリカおよびメキシコを旅してきたと話した。トランプ政権は、「ゼロ・トレランス(不寛容)」移民政策を発表し、不法に米国に入国し拘束された者を刑事訴追すると述べた。その結果、逮捕された親の多くは子どもから切り離され、多くの場合異なる収容施設に送られた。この写真が世界に公開された後、米国の税関と国境保護は、ヤネラと彼女の母親が米国によって分離された何千人もの人の中にいなかったことを確認した。それにもかかわらず、物議をかもしている政策に対する一般の人々からの抗議により、ドナルド・トランプ大統領は2018年6月20日に政策を覆すことになった。

スポットニュースの部 モハメド・バドラ(シリア)
 内戦下シリアで、最後の反体制派支配地域となっているシリアの首都ダマスカス近郊東グータ地区の住民は、2018年2月までの5年にわたり政府軍の包囲下にある。東グータの最終攻撃では、2018年2月25日のシフォニエ村に対する毒ガスと思われる攻撃少なくとも1回を含め、ロケット攻撃と空爆が行われた。
 人類にとって唯一の、そして最後の希望である子どもたち。いま、その子どもたちの命と人権が、全世界規模で脅かされているように思えます。日本も例外ではありません。厚生労働省の調査によれば、日本の子どもの貧困率(2015年)は13.9%。さらにひとり親家庭の貧困率は50.8%と、先進国の中でも最悪な水準だと言われています。自然に加えて子どもたちをも壊している人類、それはもはや緩慢なる自殺です。カ-ト・ヴォネガットの言葉が耳朶に響きます。
われわれは自分たちを救えたかもしれないが、
呪わしいほどなまけものであったため、その努力をしなかった。
それにわれわれは呪わしいほど下劣だった。
 そうした現状を知り、調べ、考え、変えるためにも、こうした報道写真を見ることは良い契機となります。世界を股にかけて撮影を続けるフォト・ジャーナリストの方々に敬意を表するとともに、応援をしていきたいと思います。微力だが無力ではないと信じつつ。

 写真展を見終えて外へ出ると、何やら長い行列ができています。しかもほとんどの方がスマートフォンの画面を眺め弄りながらの、静かで不気味な行列です。山ノ神と見合わす顔と顔、よろしい、行列の先頭に行ってその正体をつきとめましょう。はい、アニメのグッズを買い求めるための長い長い行列でした。非難や嘲笑をする気は毛頭ありませんが、ただ今見てきた世界との落差には愕然とします。ゴミの中で暮らし、難民となり、空爆に怯える子どもたち。炎天下、アニメのグッズを買うために長い行列をつくる若者たち。
 ちなみにこの日は参議院選挙の投票日、私たちは期日前投票をすませていますが、ここに並ぶ方々は投票したのでしょうか。
by sabasaba13 | 2019-08-13 08:01 | 美術 | Comments(0)