2019年 08月 24日 ( 1 )

日本の素朴絵

c0051620_1835325.jpg 「速水御舟展」を見たときに、「日本の素朴絵」という展覧会のチラシがありました。その紹介文を転記します。
 日本では昔から、様々な形式の作品に緩やかなタッチでおおらかに描かれた絵が残っています。それらは「うまい・へた」の物差しでははかることのできない、なんとも不思議な味わいを持っており、見る人を虜にします。
 本展覧会では、ゆるくとぼけた味わいのある表現で描かれたこのような絵画を「素朴絵」と表現します。しかし、西洋絵画の「素朴派」とは異なり、「リアリズムを目指す表現の人為的・技巧主義的なものを超越した」という意味を含んでいます。素朴絵は生活の中で様々なものに登場します。絵巻、絵本、掛軸や屏風、時には嗜好品として親しまれ、時には庶民が手の届かない「うまい」作品の代替として、季節行事に使う道具に用いられ、仏画として信仰の対象にもなってきました。また、禅僧などの高名な人物によって描かれた素朴絵も注目されます。
 このように過程をたどると、素朴絵は知識人や富裕層だけでなく、どの時代でも「庶民」が主体となって描き継がれ、残されてきた芸術といえます。
 本展覧会では、これまで本格的に取り上げられることになかった、様々な時代・形式の素朴絵を紹介することで、名人の技巧や由緒ある伝来に唸るだけではない、新しい美術の楽しみ方をご提供します。また、仏像や神像などの彫刻にも素朴なものがあり、これらも交えて素朴な美の広がりもうかがうことができます。
 以前に、府中市美術館で「へそまがり日本美術」という、とてつもない展覧会を見て腹の皮がよじれるほど大笑いしたのですが、同じ趣旨のようですね。これも面白そうです。山ノ神といっしょに三井記念美術館に行くことにしました。
 場所は日本橋、インターネットで調べると、すぐ近くに辰野金吾設計の日本銀行本店があります。もしや事前に申し込めば見学ができるのではと思ったのですが、調べたところ当日の見学は外観のみ、内部の見学はできないとのことでした。無念、再訪を期しましょう。昼食はもちろん「たいめいけん」、ゆるい絵を見て緩頬したあと、肉汁あふれるメンチカツに舌鼓を打つ、至福のひと時を過ごせそうです。
 地下鉄銀座線の日本橋駅で降りて美術館に向かいテクテクあるいていると…「さばしゃぶ」という看板が目に飛び込んできました。もしかしたら、をしゃぶしゃぶで食べるということかな。ビンゴ。島根県産の海鮮料理店「主水」というお店でした。うーむ、メンチカツを取るかを取るか、苦渋の決断を迫られることになりました。山ノ神は「どうでもいいわよ」と風馬牛の佇まいですので、私の一存にかかっています。ハックルベリー・フィンよろしく、"私は、息をこらすやうにして、一分間じつと考へた。それからかう心の中で言ふ。「ぢやあ、よろしい」"…鯖にしましょう。

 まずは展覧会を鑑賞。ゆるい埴輪・人面土器・仏像を展示する「立体に見る素朴1」、イノシシを抱えてドヤ顔の埴輪が気に入りました。「素朴な異界1」で展示されていたのは「地獄十王六道図」、ゆるキャラ風の獄卒が愛らしいですね。「絵巻と絵本」で展示されていた「かるかや」はまるで子供が描いた絵、腰がへなへなとくだけ落ちるような脱力感にあふれています。「庶民の素朴絵1」では、勧進に使われた曼荼羅などが展示されていましたがいま一つ。素朴絵の王道とも言うべき大津絵を展示しているのが「庶民の素朴絵2」。「素朴な異界2」では「十王図屏風」に脱力させられました。いいかげんに描かれた亡者と、やる気なさげに仕事をする獄卒の対比が面白いですね。「知識人の素朴絵1」は、江戸時代中期に茶人・俳人が自覚的に描いた素朴絵が展示してありましたが、こちらもいま一つ。「知識人の素朴絵2」は僧侶・プロ・アマチュアが描いた素朴絵を展示、このコーナーが一番楽しかったですね。白隠仙厓、尾形光琳、尾形乾山伊藤若冲、池大雅、与謝蕪村富岡鉄斎といった大物のゆるい絵を堪能いたしました。そうした巨人たちの間で、ピカリと光る二枚の素朴絵がありました。まずは禅僧・南天棒による「雲水托鉢図」、目は点、口は横棒、おおらかにデフォルメされたかわいい托鉢僧たちが、縦一列になって来たり去っていきます。もう一枚が浮世絵師・耳鳥斎(にちょうさい)が描いた「大黒と福禄寿の相撲図」。福禄寿の長い頭を抱えた大黒を、福禄寿が吊り出すところをユーモラスに描いています。目は点、口は横棒で書かれた大黒の、なんともやるせない表情がいいですね。締めは、円空木喰の彫った仏像を展示する「立体に見る素朴2」。この二人が彫った仏像に対峙すると、つい芸術作品と見て身構えてしまいますが、本来は庶民のための素朴な仏であったのですね。こちらも少し脱力して拝んだほうがいいのかもしれません。
 「へそまがり日本美術」の常軌を逸した脱力感には及びませんでしたが、なかなか面白く楽しい展覧会でした。

 そして「主水」へ寄って、さばしゃぶをいただきました。ミディアム・レアの鯖を食べるのは初めてですが、たいへん美味しうございました。ただお代が1800円と少々高いわりには量が少なく残念。鯖が高級魚になってしまったようですね。でも我が家でもこれはできそう、出汁を工夫すれば新しい世界が開けてきそうです。
by sabasaba13 | 2019-08-24 13:26 | 美術 | Comments(0)